頭皮の多汗症「原因・対策・治療」までを解説。治療に使う薬は何?

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頭皮の多汗症。 ときに顔の方まで汗が流れてきて、自分で不快感を感じるばかりではなく、まわりの視線も気になり困っている方もいるでしょう。
一般的に頭部の多汗症症状は男性に多く、長期化することでも知られています。
この記事では頭皮多汗症の原因から対策、治療までを解説しています。 頭部の多汗症状にお悩みの方はご一読ください。

頭皮多汗症の原因

健康な人でも、運動などにより生理的な機能として体内の温度調節のために頭皮から汗が分泌されます。
通常、発汗は体温を調整したり体の調子を整えるため毒素を排出したり、皮脂を分解するための役割があり、自然な生理反応です。
「頭皮多汗症」は、通常の生理機能以上に過剰な発汗が起こることを指しています。 ここでは頭皮の多汗につながる要因を紹介します。

1.高温と湿度

環境の高温と湿度は、頭皮からの汗の分泌を増加させます。
環境の温度や湿度が高くなると、体温も上がりやすくなるので発汗が促進されます。 熱帯地域や夏季であれば、一般的に多くの人が頭部も含め汗の量は増大します。

2.ストレスと不安

ストレス過多な状態や不安感がある状態も、多汗につながる要因です。
精神的なストレスや不安は、自律神経系の交感神経が活発化します。 交感神経は汗の分泌を促すので、結果として頭皮の発汗量も増えます。

3.食生活や食べもの

頭部の多汗には、食生活や好んで食べる食べものの影響を受けていることもあります。 香辛料やカフェイン、アルコールなどの刺激物を多く摂取すると、汗をかきやすくさせる傾向にあります。
アルコールや香辛料などは血液循環を活発にするため、体温調節機能も刺激され、発汗がよく見られるようになります。

4.遺伝

遺伝的な要因も頭皮多汗症の原因として考えられています。 東京女子医科大学の研究 によると、遺伝的に汗をかきやすい人とそうでない人がいることがわかりました。
遺伝的に汗腺の数が多いかそうでないかの傾向もあり、結果として頭部の発汗症状にもつながっていると考えられます。

5.病態学的要因

ときに頭部の多汗には、何らかの疾患やホルモンバランスの影響を受けている場合もあります。 以下に考えられる要因についてまとめています。
(自律神経失調症などによる自律神経の乱れ)
自律神経系は発汗の促進と抑制にも関与しています。 自律神経系は主に交感神経系と副交感神経系に分かれており、さまざまな要因によって変動します。
ストレス、体温、運動、感情などが自律神経の状態に影響を与えます。
たとえば、緊張や恐怖のような感情的な状況では、交感神経系が活発になり、発汗が増加します。 一方、リラックスした状態や睡眠時には、副交感神経系が優勢となり、発汗は減少します。
すなわち、自律神経失調症などの自律神経の乱れが起こるようであれば、発汗しやすくなることもあるのです。
(更年期障害などをはじめとするホルモン分泌能による影響)
女性の生涯の中で更年期障害も発汗につながる要素。男性でもホルモンの分泌状態により発汗しやすくなることもあります。 これが頭皮の多汗症につながっています。
ホルモンの変化は体温を調整する仕組みに影響を与え、暑さや寒さに対する感受性を変えます。 時として暑さを感じやすくなり、それが多汗症状へとつながります。

頭皮多汗症の診断基準

頭皮多汗症と診断されるにはいくつかの症状がみられるかがポイントです。
(診断基準)
・発症が25歳以下である
・左右対称性に発汗がみられる
・睡眠中は発汗が止まっている
・1回/週以上の多汗のエピソードがある
・家族歴がみられる
・それらにより日常生活に支障をきたす
原発性局所多汗症診療ガイドラインを参照するとこれらの症状が2つ以上あり、且つ発汗の原因が明らかではない場合で6カ月以上症状が見られる場合に診断されるとあります。
診断の際には、自己判断せず専門家への受診を検討しましょう。

頭皮多汗症の治療

頭皮多汗症の治療方法は、症状の重症度や原因に応じて異なります。 個別性に応じたアプローチが必要なので、医師に現状ある症状をしっかりと伝えましょう。
そのうえでできる治療方法は異なります。 なかには自費診療でしか受けられない治療もあるので、どの程度の症状で困っているのかを見極めて治療の選択をするとよいでしょう。

薬物療法

保険診療での調整を試みるなら、まずは薬物療法から始めるのが一般的です。 以下に頭皮多汗症の薬物療法について紹介します。
・外用薬
近年では外用薬で汗腺の出口に蓋をして発汗を抑える外用薬があります。 塩化アルミニウムを含む塗布剤を塗布することで汗の分泌を抑制します。
頭皮の状態なども含めて検討をする必要があるので、医師とよく相談のうえで使用を検討しましょう。基本的には第一選択となる治療方法です。
・抗コリン薬
保険診療で行われる一般的な多汗症治療薬として、抗コリン薬が処方されることがあります。
抗コリン薬は、交感神経の神経伝達物質「アセチルコリン」の作用をブロックします。 結果として汗腺の働きを抑制して発汗を減少させる効果があります。
・ボトックス注射
ボトックス注射は、交感神経の働きを弱める作用を持ちます。交感神経の働きが弱まると汗の分泌機能も弱まり、結果として汗をかきにくくなります。 汗の分泌を抑制したい場所へ直接皮下注射することで効果が期待できます。

交感神経遮断術

多汗による症状が著しく生活に支障を及ぼしたり、本人の苦痛となっている場合に検討されます。 明らかな原因が不明で6か月以上にわたる場合など、適応となる条件は限られます。
交感神経遮断術はその名の通り、気になる部位の交感神経を遮断し汗の分泌を抑制します。 ときに代償性発汗という別の部位の発汗が促されてしまうこともあります。
頭皮多汗症の症状が重度で日常生活に支障をきたす場合、皮膚科医や医療専門家に相談し、適切な治療法であるかどうか慎重に判断することが重要です。

頭皮多汗症の対策。セルフケアは?

頭皮の多汗症。もし症状が軽度であれば、生活スタイルや生活環境を見直したり、ヘアケアなどのセルフケアで気にならないレベルにまで症状を改善できることもあります。
ここでは頭皮の多汗症に対して自分でできる対策を紹介します。

1.暑さを感じさせない工夫をする

頭皮に汗をかく一番の要因は「温度と湿度」。
体の中の熱を放散するために発汗は促されるので、日常生活で汗を感じさせない工夫をするのが大切です。
夏の暑い日で高温多湿の環境では、頭皮の発汗は増加しやすいです。
頭皮や体の暑さ対策のために、帽子や日傘を使い直射日光を避けましょう。 また、帽子をかぶる際には、通気性のある素材の帽子を選び、頭皮の通気を確保しましょう。
首元や脇をクーリングするのも有効な方法のひとつです。 大きな血管が冷やされて体を冷却するのに役立ちます。

2.適切なヘアケア

頭皮を清潔に保ち、新陳代謝がスムーズにいくサポートをしましょう。
頭皮多汗症のある人は、髪を毎日洗うことも大切。
余分な皮脂や汗を洗い流し、頭皮を清潔に保てていないと頭皮からの体熱の放散がうまくいかず、汗の分泌が促されてしまいます。 頭皮の状態が健やかであるならば、メンソール成分が入っているシャンプー剤などは、洗いあがりを清涼にさせ汗の分泌抑制につなげられる一助になることもあります。

3.ストレス管理

ストレスは多汗症の悪化につながります。 ストレスが溜まらないよう意識的にリラクゼーションテクニックやストレス管理方法を実践して、ストレスを軽減しましょう。

4.適切な食事

頭皮多汗症の自覚があるならば、意識的に食事内容に気を配るのも大切です。
辛い食べものや刺激物を避け、水分補給を十分に行い刺激物による汗の分泌をおさえます。アルコールも控えた方が望ましいです。 摂取したい場合には、自宅で嗜むなど症状が出てしまっても気にならないところで食べるなど工夫をしましょう。

まとめ

頭皮の多汗症は個人の生活環境、遺伝的要因、食事、ストレスなど、多くの要因の影響を受けることがあり、原因はひとつではないかもしれません。
症状が軽度であればセルフケアでの対策が可能な事例もあるでしょう。 一般的な治療法は薬物療法です。
最近では外用薬が頭皮多汗症の治療に有効で発汗を抑える効果が期待できます。
頭皮の多汗症に悩む方々にとって、生活スタイルの見直しや専門的な治療方法の導入によって症状の緩和や管理が可能になることも多くあります。 一人で悩まずに、まずは専門医への相談を検討してみてはいかがでしょうか?
頭皮多汗症に悩む場合の参考情報としてお役立てください。