曖昧なことを解決しようシリーズ! オカッパって何ですか?(主観系)

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A.典型的なオカッパとは、前髪をおでこの長さで切り揃えたうえ、横から後ろの髪を首元の長さで横一文字に切り揃えた髪型のことです。
日本では主に少女の髪型に対してこれまで「オカッパ」が使われてきました。
でも今では「ボブ」などのオシャレな呼称が定着したこともあり、「オカッパ」という言葉そのもの自体があまり使われなくなってきています。
つまり、オカッパとは、今風にいえば「ボブ」とイコールなのです。
またもっと前時代的な髪型も含めれば「マッシュルームカット」もオカッパの類似系として捉えることができます。
こう考えると定義は非常に曖昧ですね。
冒頭では「オカッパって何ですか?」という問いに対して典型的なオカッパ像を定義できたはずなのに、 それが「ボブ」でありながらさらに「マッシュルームカット」まで含んでいいことになっています。
しかも日本では主に少女に対してよく使われる言葉だったと言います。
では、なぜそんな曖昧なまま「オカッパ」がまかり通ってきたのでしょうか。
この問題をスッキリさせるためにオカッパの歴史を覗いてみることにしましょう。

オカッパの語源は「河童」

オカッパの語源は「河童」にあります。
頭の上に皿を乗せている、あの妖怪。そうです。あのカッパです。
髪型がカッパに似ているというシンプルな理由こそ、例の髪型が「オカッパ」と呼ばれる最大の由来なのです。
「ちょんまげ」を思い浮かべてもらえればお分かりのように、昔の日本人男性には頭頂部を剃る風習がありました。
これを「露頂(ろちょう)」と言います。
細かなことをいえば、ちょんまげスタイルは前頭部から頭頂部にかけての広範囲を剃ったうえに残りの頭髪を結ったヘアスタイルなので、 単なる「露頂」には留まりませんが、いずれにしても江戸時代に男性の間で「ちょんまげ」は一般的な髪型の一つになりました。
「露頂」の風習自体はもっと前、室町末期以降から広がったといわれています。
また、この露頂した部分以外の長髪をそのまま垂れ流した髪型を(河童に似ていることから)「御河童頭(おかっぱあたま)」と呼んでいました。
しかし江戸時代に入ると、この「御河童頭」は世俗を離れて出家した人の髪型として、あるいは刑罰を負った人の髪型として認識されるようになっていきます。
一般の成人男性が好き好んでできる髪型ではなくなってしまったのです。
そしてやがて「露頂」の風習も廃れるなかで、「オカッパ」といえば少女のする特定の髪型を指すようになっていきます。
その髪型こそ冒頭で答えたように、前髪をおでこの長さで切り揃えたうえ、横から後ろの髪を首元の長さで横一文字に切り揃えた髪型のことです。
こうして日本での「オカッパ」は主に少女に対して使う髪型の呼称として定着していきました。
と、ここまでは通説ですが、「オカッパ=少女」が世間一般のイメージとして定着したのには「こけし」や「日本人形」の存在も大きかっただろうと考えられます。
こけしや日本人形では少女がモチーフとされることが多く、その少女たちの髪型は御多分に洩れず「オカッパ」だったからです。
そしてそのような人形が各家庭の居間に飾られて、日常に馴染むことで、ごく自然と「オカッパ=少女」というイメージが強化されていったのではないでしょうか。

近代アメリカでのショートヘアブーム

話を近代のアメリカに移しましょう。
アメリカでは戦前までロングヘアが主流でしたが、第一次世界大戦以後の1920年代あたりからショートヘアが一般的になっていきます。
そんな中、日本でいうところの「オカッパ」が流行するのです。
当時のアメリカは「狂騒の20年代」とも形容されるほど政治も社会も混迷していました。
そこで登場したのが「フラッパー」。
「フラッパー」は新しい若い女性を意味する当時のスラングです。
彼女たちの特徴は新しいライフスタイルや新しい価値観を強く求めるという点で、それはファッションや髪型を通じても体現されることになりました。
フラッパーが好んだ髪型の一つが「オカッパ」でした。
アール・デコ様式のアクセサリーと濃いめのメイクも相まって、「オカッパ」はオシャレで先端的なヘアスタイルとして広まっていくことになります。
このような社会現象を逆輸入する形で、昭和初期の日本でも「オカッパ」が流行します。
その先頭に立っていたのは「モガ(モダンガールの略語)」と呼ばれる西洋文化に強く影響を受けたイマドキの若い女の子たちです。
昭和初期にモガたちのやっていたヘアスタイルが、平成、令和という長い歴史を経た今もなお若い女の子たちから支持されているのですから、 「オカッパ」には普遍的な魅力があるということでしょう。
少しずつマイナーチェンジを繰り返しながら曖昧に進化しているとはいえ、 その髪型が今では「オカッパ」とさえ呼ばれなくなったとはいえ、「オカッパ」はきっと永久に不滅でしょう。