なぜ美容室や床屋は月曜休みが多いの?

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A.最大の理由は戦争の影響下で定められた「休電日」にあります。
もともと土日休みの人が多かったため、サービス業である美容業界は、稼ぎ時である土日に営業して、翌日の月曜日を休みにするという店舗が多くありました。しかし決定的な理由は、第二次世界大戦前後の社会情勢にあるのです。
当時の人たちも今の私たちと同じように、美容室や理容室でパーマをかけることはおしゃれな楽しみの一つでした。しかし今と違うのは、当時のパーマは相当な電力を必要としていたことです。
「電髪(でんぱつ)」や「電気パーマ」という言葉を聞いたことがある人もいるかと思いますが、当時のパーマは電極のついたロッドを巻いて加熱する仕様だったため、大量の電力を消費しました。
そんな中での、戦時下における電力不足です。
「ぜいたくは敵だ!」という有名なスローガンが当時の時代背景を鮮明に表しているように、電力不足への対策として、週に一度の「休電日」が定められたのです。ちなみに当時は「パーマネントは止めませう」という官製標語もあったそうです。
いずれにしても全国的には「月曜日」を休電日と定められた地域が多かったことから、引き続き今も月曜休みの美容室や床屋が多いと考えられています。あるいは東京をはじめとする関東圏では「火曜日」が休電日のことも多かったようです。そのためでしょう、美容室や床屋は火曜休みが多いと感じている人は関東の人が多いようです。
以上のように、戦時下に定められた「休電日」のなごりが今の「定休日」として残っているわけです。
とはいえ、もし美容室や床屋にとって月曜定休日が都合悪ければ、戦時下でなかば強制的に定められた休電日のなごりが今も残っているわけありません。
戦後も定着しているわけですから、月曜を休みとすることで都合の良い理由がほかにもあるはずです。
まず戦後、専門職であり安定的な収入が得られると考えられた美容室や床屋は、徐々に店舗数を増やしていきました。ところが、競合が増えれば値下げ合戦が始まるので、それはやがて品質の低下にもつながり、業界にとっても顧客にとってもマイナスでしかありません。
この流れを受けて、組合は営業日時や料金などを「適正化規定」として設け、競合同士の過当競争を避ける道を選んだのです。
地域によって所属する組合は異なるので、組合の設ける営業日時などの規定も異なりました。そのため、全国的には月曜休みが多くても、地域によっては火曜休みという差異が生まれたのです。
つまり、なぜ美容室や床屋に月曜休みが多いのかというと、戦時下での休電日のなごりという理由のほかに、組合による「適正化規定」の存在も大きいのです。
しかしながら、やがて規制緩和の波が押し寄せ、組合による規定も1998年には完全に廃止となります。営業日時や料金を各美容室や床屋が自由に設定できるようになったのです。もう月曜休みにする必要はなくなりました。
にも関わらず、今も月曜休みの美容室や床屋が多いのはなぜでしょう。
理由はまだまだ考えられますので、最後に二つほどピックアップしてご紹介します。
一つは、業界のおこなうセミナーや講習会が月曜(地域によっては火曜)に集中しているためです。
美容師・理容師がさらなるスキルアップを図るためには現場以外での学びも重要ですが、これまでの歴史のなごりもあって月曜に設定されるイベントが実に多いのです。参加するには従来どおり月曜休みが望ましいということです。
そしてもう一つは、わざわざ定休日を変える理由がないという理由です。長いあいだ月曜休みでうまくやってきたうえ、業界のイベントも月曜、さらに週明けで客足もあまり期待できない。
となると、従来どおり月曜休みでいったほうが無難ですし、顧客も混乱せずに済みます。
美容室や床屋の月曜休みには、歴史的ななごりと深い関係があるとともに、とても理にかなっているのです。