Q&A

抜け落ちた髪の毛をそのままにしておくとどうなるの?

A.ほとんど変化はありません。とはいえ長い年月でみれば少しずつ分解されていくようです。
意外でしょうか?
この疑問に対するみなさんの回答はおそらく二極化するのではないかと想像します。
一方は、「すぐに腐敗する」という回答。
なぜなら髪の毛は私たち人間のからだの一部だからです。いうまでもなく人間は生き物であって、すべての生き物は必ず腐敗するという考えがあっての理屈でしょう。
たしかに私たちの身の回りは、程度の差こそあれ「すぐに腐敗する」食べ物(生き物)であふれています。
たとえば肉が典型的で、冷蔵(冷凍)保存をしないと数日で腐敗し悪臭が漂いはじめます。ほかにも冷蔵庫内を見渡せばおわかりのように、腐敗しない食べ物(生き物)などありません。
私たちは常に賞味期限(消費期限)と格闘しなければならないのです。このような生活環境のためか、髪の毛も同様に「すぐに腐敗する」と思ったのではないでしょうか。
反対に、もう一方の回答として多数を占めると想像されるのが、「まったく変わらない」という回答です。どちらかといえばこちらの回答のほうが真実に近いように感じますが、理屈のプロセスは大きく異なるようです。
抜け落ちた髪の毛をそのままにしておくと、「ほとんど変化がない」とはいえ、ゆっくりと少しずつ腐敗するのが基本です。
やはり髪の毛が私たち人間のからだの一部であるということには間違いがないので、必ず腐敗へと向かっていくのです。
しかし、「まったく変わらない」という回答は、まるで髪の毛が無機物であるかのように考えています。抜け落ちても抜け落ちてなくても、髪の毛が有機物であることは間違いないのです。
というわけで、髪の毛は有機物なのでバクテリアなどの微生物によって分解される運命にあります。
通常、微生物が多い環境であればあるほど分解が進むのは早いものです。ところが髪の毛の場合、一般的な室内でさえ、完全に分解されるまでにおおよそ数十年もかかるといわれています。もし同じ室内で食用肉を放置した場合に数日しか持たないことを考えると、髪の毛の腐敗がいかに遅いのかがわかるのではないでしょうか。
これは髪の毛を構成する細胞と関係があります。髪の毛は爪や歯と同じように、自己修復機能を持ちません。
つまり、一度割れたり欠けたり切れたりして損傷すると、皮膚や筋肉のように自然と修復することができないのです。なぜなら髪の毛は死んだ細胞(死滅細胞)で構成されているからです。
死んだ細胞だからでしょう。ほかの有機物とくらべて、髪の毛はバクテリアなどの微生物からあまり人気がないのかもしれません。
そう考えると、抜け落ちた髪の毛が腐敗するまでに長い時間がかかることにも納得がいきます。
だとしても髪の毛が分解されるまでに数十年というのは長すぎるのでは、とお思いかもしれません。数十年というのはあくまでも一般的な室内環境の話ですので、環境が変わればもちろん分解にかかるおおよその年月も変わります。
たとえば、水の中だと少なくとも半年程度、土の中だと少なくとも一年程度が分解に最低限かかる年月だと考えられています。
まだ長いとはいえ数十年とくらべると大きな違いです。なぜこのような違いが生まれるのかというと、水の中や土の中にはバクテリアなどの微生物が豊富に存在しているからです。微生物の生息環境によって分解のスピードは大きく変わるのです。
その証拠に、砂漠などの乾燥地帯で掘り起こされたミイラを例に取ることができます。このような地域では、髪の毛が腐敗することなく昔のままの状態で出土することがあるそうです。おおよそ何百年ものあいだ、髪の毛にほとんど変化がなかったわけです。
よほどの人でないかぎり、抜け落ちた髪の毛を保管したり観察したりし続けることはないでしょう。また仮に観察し続けたとしても、抜け落ちた髪の毛は時間が経ってもほとんど変化しませんので面白くないかもしれません。
とはいえ、少しずつ着実に微生物によって分解されるものである、ということは覚えておくといつかどこかで役に立つ日が来るかもしれませんよ。