Q&A

【ヒゲの話】ほとんどの職種でヒゲがNGなのはなぜ?

A.お客様や世間からの評判を落とさないために忖度した結果、企業として簡単にできる対策の一つがヒゲを禁止することになっています。
まずは僭越ながら、私の身の上話から。
私はライターと並行して、普段は老人ホームで働いています。
半分は医療的な側面もある職種なので、私をはじめ介護職員や看護師のほとんどが普段からマスクを着用して仕事をしています。
特に今は新型コロナウイルスの感染者を出さないことが喫緊の課題なので、ほぼ100%の職員が常にマスクを着用している状態です。
無論、新型コロナウイルスが一刻も早く収束して、マスクやフェイスガードなど使わなくてもいい社会にもどることが最善なのは言うまでもありません。
しかしながら同時に、なるべくならマスクを外したくない私のような人間にとっては、マスクを外さなくていい正当な理由ができたとも思っています。
介護現場においては、職員の表情や口元の動きを見ていただくことは利用者様の理解や安心につながることが多いです。
だからマスクを外して素顔をさらけ出すことは利用者様のために大切なことの一つです。
それは過去の実体験において、重々承知しています。
とはいえ私のようにマスクの下に豊かなヒゲをたくわえている身、たくわえていたい身としましては、上司からある日突然通告されるかもしれない「明日からヒゲを剃ってこい」という一言を極度に恐れています。
事実、今の職場では私の素顔を知らない人ばかりです。
マスクを外さないという個人的なこだわりを貫いているので、その代わりに仕事上のあらゆる面で落ち度がないように努めているつもりです。
些細な例では、こちらの思惑がしっかりと高齢者の方々に伝わるよう、ハキハキと大きな声で、ゆっくりと話しますし、ボディランゲージもほかの職員の数倍オーバーにおこなっています。 目元の筋肉もだいぶ強くなったはずです。
このような私情の上に起こったコロナ禍です。
だから木は森の中に隠せ的な考えのもと、私のようなヒゲ男としては、全職員がマスクを義務付けられている今のほうが正々堂々とマスクを着け続けられるので少しばかり働きやすくなっています。

フェイスガードで接客

ところが最近では、透明のフェイスガードなる物が接客業を中心に流行しています。
今の私の最大の恐怖は、「明日から全職員にフェイスガードを支給する」の一言です。
ヒゲを隠すことができないと個人的には意味がありませんので……。
以上、まずは私の身の上話からスタートさせていただきました。
大事なのでくり返しますが、新型コロナウイルスが一刻も早く収束して、マスクやフェイスガードなど使わなくてもいい社会にもどることが最善なのは言うまでもありません。
他方、私のようにヒゲを愛する一部の人間以外の方々にとっては、ヒゲなんかどうでもいい話かと思います。
「おしゃれと身だしなみは違うんだよ!とっとと剃れ!」とお叱りを受けそうです。
しかし、どうでしょう。
今話題にしているのがたまたま「ヒゲ」なだけであって、それがいつ「喫煙者」や「ツーブロック」に取って代わるかはわかりません。
そう、今はたまたま「ヒゲ=不潔」「ヒゲ=怖い人」という類のマイナスイメージが優勢のように感じますが、昔は違いました。
日本史の教科書で見た、初代内閣総理大臣の顔写真を思い出してください。
伊藤博文氏はまさに豊かなヒゲをたくわえているではありませんか。
今でこそ、内閣はおろか国会議員全体を見渡してもヒゲは皆無に近いですが、昔の価値観は全然違ったのです。

ヒゲは武力の象徴だった?

もっと時代をさかのぼれば、戦国時代には「ヒゲ=権力・武力」の象徴だったため、身分の高い人ほどヒゲを生やすのが当然とされる時代もありました。
やがて江戸時代も中期に入り、戦乱が落ち着き平和な時代を迎えると、「権力」や「武力」は必要なくなります。
そこで、一部の異端者を取り締まるために「大髭禁止令」なるものが1670年に発令されたこともありました。
つまり、ヒゲの良し悪しは時代によって大きく異なるということは歴史が証明しています。
そういえば、たまたま私のヒゲを見た高齢者の中にも「ヒゲかっこいいね」と褒めてくれた人もいました。
それが京都流のお世辞なのか本心なのかはさておき、今の時代であっても、全員が全員「ヒゲ=悪」だとは思っていないということです。
だから私は、ほとんどの職種でヒゲを一律に禁止するようなやり方は過剰な忖度だと思っています。
とはいえ現代において、ヒゲを生やすからにはそれなりに叩かれる覚悟が必要でしょうね。