髪の毛からつくる「オイルフェンス」とは?環境を守る身近なSDGsを探そう!

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「オイルフェンス」をご存知でしょうか?
石油類などが事故等によって河川、湖沼、海などの水面上に漏洩・流出した場合にその拡散を防止するものです。
2020年8月6日にインド洋のモーリシャスで起きた油流出事故は記憶に新しいと思いますが、重油の流出を止めるのに対処法のひとつとして「髪の毛」が使用されています。
この記事では、髪の毛を使用したオイルフェンスの紹介と、綺麗な地球をこれからも守っていくための身近なSDGsを探していきたいと思います。

髪の毛の「オイルフェンス」?

「オイルフェンス」に髪の毛が使用される理由についてまずはご紹介します。

髪の毛での「オイルフェンス」きっかけ

2006年「ギマラス島重油流出事故」というフィリピン史上最悪といわれるタンカー沈没による重油流出事故が起こりました。 その際、流出した大量の油の処理に、「髪の毛」が採用されました。
流出してしまった重油を髪の毛で吸うアイデアは、1989年「エクソンバルディーズ号原油流出事故」の際、美容師のフィル・マクロイ氏が思いついたものです。
動物の毛皮や羽に原油がべっとりと付着し、あまりにも悲しい映像を見たマクロイ氏は「毛皮や羽を使えば、海に流出した油を取り除けるのでは?」と思いつきました。
しかし、大量の毛皮や羽を集めることは困難だと思っていた矢先、美容師であったマクロイ氏は「普段、カットした髪の毛は捨ててしまうが、利用できれば良いのでは」と考えたマクロイ氏は実験を試みます。
水に浮かべた機械油に、ストッキングに詰めた髪の毛を入れてみると、人間の髪の毛も油を吸収することが判明しました。 1990年代後半、NASAの研究ではなんと11,000kgの髪の毛をナイロンの袋に入れることで、64万リットルの原油を吸収できると推定されたのです。

髪の毛での「オイルフェンス」の誕生

1999年、マター・オブ・トラストの共同創業者であるリサ・ゴーチェ氏と海を清掃する「クリーンウェーブプロジェクト」が立ち上げられました。
髪オイルフェンスの作り方はストッキングに髪の毛を入れるだけ、とっても簡単です。 港や海岸などで使用すればビーチを守ることもできます。
「クリーンウェーブプロジェクト」では、寄付された髪の毛・毛皮・羽毛などを集めオイルフェンスにリサイクルしています。

2010年メキシコ湾原油流出事故

その後、2010年メキシコ湾で起きた原油流出事故では約1億3400ガロンの原油が流出してしまいました。
その際の処理には髪の毛ではなく大量の分散剤・回収装置、合成素材のオイルフェンスが使用されました。 分散剤などは生態系への影響は甚大で、多くの海洋生物が死んでしまうため環境破壊にも繋がってしまいます。

髪の毛のオイルフェンスの有効性

髪の毛には水を弾き汚染物を吸着する優れた特性があります。
ヘアオイルやトリートメントなどを使用するとわかるように髪の毛はたくさんの油を吸着してくれます。 この髪の毛の特性は水と油の分離に役立ち、髪の毛1キロで、8リットルの油を吸うことができると言われています。
持続可能性があり、手に入りやすい「人の髪の毛」を使用することで、環境に悪影響を与えないサスティナブルな解決法として用いられています。

髪の毛のオイルフェンスと環境保全

2020年7月25日、インド洋の島国モーリシャス沖で貨物船「WAKASHIO(わかしお)」がブラジルに向かう途中で座礁しました。
貨物船の重油タンクが破損、積載していた約4,000トンの重油のうち、約1,000トンが海に流出してしまいました。 モーリシャスのジャグナット首相は「環境非常事態」を宣言したのです。
約1,000トンの燃料が海へ流出した上、船体の後ろ部分がサンゴ礁に乗り上げたままの状態でした。
モーリシャス政府が重油の流出を抑制するため、世界中に助けを求める一方で、何千人もの地元民が島の各地から集まり、昼夜を問わず重油の回収作業を続けています。 その中で注目されている除去方法のひとつが髪の毛のオイルフェンスなのです。
地元の人々は率先して切った髪を提供し、美容師もカットに対して最大50%割引まで提供しているところもあるといいます。
美容院から回収した髪の毛と、子どもたちが畑から集めた藁、サトウキビを詰めた布やストッキングの袋で作られたオイルフェンスで重油の除去を続けています。(2021年12月時点)

持続可能な発展

海に広がる重油除去作業も生態系を脅かす方法では意味がありません。
髪の毛のオイルフェンスも「髪の毛」を利用するので手に入りやすく、持続的に続けられることからサスティナブルな方法で地球を守る活動に繋がります。
私たちにより身近になってきた「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」は国連で採択され、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す世界目標となりました。
最近はメディアでも多く取り上げられ、耳にすることが増えましたね。

SDGs、私たちができることは?

地球を守る、環境保護って一見難しそうに聞こえますがひとりひとりが行動を少し変えるだけで実現できるのです。 私たちが今すぐ取り組むことができる身近なSDGsをご紹介します。

マイバック、マイボトルの活用

日本でもスーパーの袋が有料化となり、身近に感じてきたマイバック。 マイバックやマイボトルを活用することでプラスチックゴミの削減に繋がります。
プラスチックゴミによる海洋汚染は深刻であり、海や川にプラスチックゴミが流れるとそこに住む生き物がプラスチックゴミを食べてしまい命を脅かします。
最近はマイバックの種類もお洒落でコンパクトなものが多く販売されていますし、カフェでもマイボトルを持参すると割引されるお店も増えています。 マイバックやマイボトルを使うことで私たちのお財布にも、エコにも優しいですね。

フードロスの削減

日本のフードロス量は世界3位と言われています。 その量はなんと年間600万トン。世界中で飢餓に苦しむ人たちへの食糧援助量の1.4倍です。
お腹いっぱい…と残したその食べ物が世界の誰かを救うことができます。
普段の料理でも食べられる量を作ることもフードロスの削減に繋がります。 食材を無駄にしない、野菜の皮などを使用した料理にも最近は注目が集まっています。
またコンビニやスーパーでは棚の手前から商品を取るようにしましょう。 賞味期限の長い商品を選ぶことが多いですが、廃棄を減らすためにも手前から取ることを意識したいですね。

ファッションもエコに

「環境に優しく」と聞くとゴミの削減などが思い浮かぶと思いますが、実はファッションもSDGsに繋がっています。
流行や季節、年齢に合わせて購入することが多い洋服は着なくなった、などで簡単に処分されることが多いです。
しかし、処分するのではなく寄付や古着屋に出すなど誰かにまた着てもらえる方法を選んでみましょう。 最近は店舗でも古着回収のボックスを置くお店が増えてきています。
また環境に優しく、作り手の労働環境が整った「エシカルファッション」も注目されています。 人気ブランドからも出ているのでぜひチェックしてみてください。

まとめ

私たちの「髪の毛」は実は環境保全活動に役立っていることがわかりました。 事故で海に流れ出てしまった重油を除去するために役立ち、綺麗な地球を守ろうと世界中の人が奮起しています。
世界中が取り組んでいるSDGs。
私たちが少し行動を変えるだけで地球を守ることへ繋がるのです。
環境保全のために生態系を脅かすのは本末転倒、地球にも動物にも、人間にも優しい選択をしたいですね。