【監修あり】頭の傷跡から髪の毛が生えてこない!瘢痕性脱毛症の原因と対策

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「なぜか頭の一部からいつも髪が生えてこない」その症状、もしかしたら「瘢痕性脱毛症」かもしれません。 瘢痕性脱毛症とは、何らかのダメージが髪を生やす組織「毛包」にダメージを与え、髪が生えなくなっている状態のことです。
この記事では、瘢痕性脱毛症の原因から治療を解説し、自分でカバーする方法までを徹底網羅。 頭髪の一部にある髪の生えない部分が気になり悩んでいる方、ぜひご一読下さい。

瘢痕性脱毛症とは?そのメカニズムと症状

瘢痕性脱毛症とは、お肌に瘢痕ができることで起こります。
瘢痕のある場所も、本来正常な皮膚の状態なら「毛包」が存在し、毛を生やす組織である毛母細胞から細胞分裂が起こり「毛」となって生えてきます。 皮膚が瘢痕化することで毛包が壊れ、本来の働きを発揮できなくなり毛の育毛障害が起こるのです。

瘢痕とは?どのような状態?

瘢痕(はんこん)とは、一言でいうと「傷跡」のことです。
ケガなどにより肌に傷がついた場合、通常であればその受傷部も回復し元のような肌の状態に戻ります。 しかし、ケガの仕方や深さ、個人差による回復能力の違いにより、修復しきれずに傷になって残ってしまう状態のことを指します。
一般的には真皮網状層以上の損傷が起きた場合に瘢痕化しやすくなる傾向があるようです。

瘢痕性脱毛症の原因は?

前述した通り、瘢痕性脱毛症の要因は組織の瘢痕化により毛を生やす細胞が機能しなくなること。 つまり、組織が損傷を受ける原因があれば瘢痕性脱毛症になり得ます。
・ケガ
・やけど
・ニキビ跡
などに続いて瘢痕化するのは一般でも起こりうること。
また、疾患に併発するものとすれば
・強皮症
・皮膚エリテマトーデス
・悪性腫瘍
などがあります。
また、「原発性瘢痕性脱毛症」と呼ばれる疾患もあり、毛包内の髪の毛を生やす部分に炎症が及び、毛包がダメージを受ける疾患です。

瘢痕性脱毛症の治療は?皮膚科に行くべき?

疾患に続発するものや、疾患そのものが要因で起こる瘢痕性脱毛症の場合、原因となっている疾患の治療やコントロールが必要です。
しかし、ケガややけど、ニキビ跡が続発して起こる場合には、瘢痕化している組織そのものにアプローチして治療を施します。 保険診療を試みるのであれば、まずは最初に皮膚科受診を検討するのがベスト。
皮膚科での対応が難しい場合には外科処置を必要とする形成外科や、場合により自由診療をしている病院への受診へとステップアップするようなイメージです。
自由診療の治療になると、場合によっては費用が高額化してしまうことも。 自分の中で「どこまでの治療を希望するか」をしっかりと検討し、費用の目処を立てられるようにしましょう。

保険診療での治療

瘢痕性脱毛症の治療では、完全に毛包の働きが失われれば毛が生えてくることはありません。
ですので、症状の兆しが見えた時点で受診し、治療を開始しましょう。 やけどや感染症などによって毛が生えなくなってきている場合には、原因に応じた治療薬(ステロイドや抗真菌剤など)を使用して、毛包が損傷する前に組織の回復を試みます。
完全に組織が瘢痕化し、毛包の機能が失われた場合には、形成外科などで瘢痕化した組織を取り除き正常な皮膚を縫い合わせる「縫縮手術」を行います。 手術よって毛の生えない部位を限りなく目立たなくさせる方法です。
ただし、この手術の場合には縫縮できる範囲に大きさの制限があるので、範囲が広い場合には適応が難しい場合もあります。

自由診療での治療

範囲が広い瘢痕のケースや、縫縮手術による新たな傷跡の形成が困難な場合には「自毛移植」が行われます。 基本的に植毛術は自由診療です。
古くから行われていた植毛術では、髪の毛のある組織を移植するのに、新たに傷が残るばかりではなく、移植部の痛みや違和感も強く、苦痛をともなうものでした。
しかし、近年では植毛技術も進化し、より自然に組織をリカバリーできるようになりました。 回復の手立てがなかったダメージを受けた細胞部分も治療でき、毛髪が新たに再生される画期的な方法で治療が進められています。

画期的な自毛移植は、髪の毛1本1本を移植するイメージ

自毛移植は、「毛包」と呼ばれる髪の成長を促す組織を含んだ細胞ごと移植します。 従来の方法では、頭の後頭部より短冊状に大きく組織をカットして、気になる部分に移植していました。
この方法だと、患者さんへの負担が大きく、新たに髪の毛が生えなくなる部分も生じます。
しかし、最近の方法では、この移植組織を1mm以下で採取し、気になる部分に移植。 採取する部分を調整すれば、組織を持ってきた箇所の髪の毛も目立たず、瘢痕化した場所も自然に髪の毛が生えてくるので、近年では主流の方法です。(2022年10月現在)
しかし、医師の技術力がいる方法で比較的高額になりやすいデメリットもあります。

自分でできる対処法は?

瘢痕性脱毛症の気になる部分。 自由診療で治療するほどでもないけれども、あると何となく気になる。 そんな箇所を今すぐ自分でどうにかする方法はないのでしょうか?
気になる部分をカバーするためには次のような方法があります。
・帽子を使う
・ウィッグを使う
・ヘアアレンジをする
・エクステをつける
ここでは、瘢痕性脱毛症で気になる部分を自分でカバーする方法をご紹介していきます。
今すぐできる簡単なことも解説していきますので、順番にみていきましょう。

帽子を使う

こんなときにおすすめ
・風が吹くとめくれて傷や脱毛部分がめくれて見えてしまう
【ポイント】
・風で飛ばないようにピンで留める
帽子はかぶるだけで気になる部分を隠せるので便利です。 風で乱れてしまいがちなヘアスタイルも、帽子でおさえることができます。
つばの大きな帽子は、風により飛びやすくなるので、ピンで髪と一緒に留めて固定すると安心です。 ピンで留めにくい場合は、帽子の内側の留めやすいピンやコームを縫いつけると、ずれにくくなります。

ウィッグを使う

こんなときにおすすめ
・見える場所が気になる場合
【フルウィッグ】
フルウィッグは、見える部分をすべて覆うことができるので、安心感があります。 ショートやボブ、ロングなどその日の気分によってガラッと雰囲気も変えられるので、おしゃれを思いっきり楽しみたい方におすすめです。
長さだけではなく、カラーリングやカール具合などもさまざま。長さによってヘアアレンジも楽しめます。
【部分ウィッグ】
髪が短くて気になる部分が見えやすい方は、その部分だけ隠すようなウィッグもあります。 トップだけ、サイドだけ、襟足だけとピンで留めるだけで簡単に装着できるものもあるので便利です。
また、前髪ウィッグもバリエーションが豊富です。
気になる部分に合わせた形を選ぶのはもちろんですが、顔の形や好みによっても選ぶのが楽しくなります。 ウィッグは、帽子から見える髪の毛の部分を調節したりアレンジしたりと、組み合わせるのも楽しいアイテムです。
お洋服やシーン、気分に合わせて選んでみるのもよいでしょう。

ヘアアレンジをする

ヘアアレンジをするメリット
・風が吹いても気になる部分が見えにくい
襟足の脱毛が見えてしまう方は、ハーフアップや後れ毛の多めなアップスタイルなどがおすすめです。 顔まわりや見える部分が気になる方は、ターバンやウィッグなどアイテムをプラスすると気になる部分をカバーできます、
隠したいあまり、きつく結んでしまうと一部分の頭皮や毛穴に負担がかかり、脱毛の原因となってしまうことも。 痛みやつっぱり感を感じるときには、無理せず、少し優しめに留めたり束ねるようにした方がよいでしょう。

貼るタイプの増毛方法

男性やショートヘアの方は、貼るタイプの増毛シートが人気です。
つけたあとに外せないものではなく、専用のリムーバーなどで外せます。 また、シートが網目状になっているタイプもあります。 通気性や粘着性に優れているので、激しいスポーツやシャンプーの際も安心。
ただし、頭皮に密着させるので、これまでのように頭皮を洗うのが難しいケースも。 つけている期間が長いとかゆみや炎症につながる可能性もあるので、定期的にメンテナンスしたり、つけない期間を設けるなど注意も必要です。

エクステをつける

毛量や長さが足りないときに、エクステをつけるという方法もあります。ただし、頭皮の弱い方や傷や痛みのある方には向いていません。
エクステは乾きにくいので、シャンプー後はしっかりドライヤーで乾かすことが大切です。 半乾きのままだと、頭皮や髪の健康状態を悪化させてしまう可能性もあり、エクステの接続部分はカビの原因にもなりかねません。
また、エクステはこまめなお手入れが必要です。 絡まらないようにブラッシングをしたり、1ヶ月程度で定期的な付け替えをすればきれいにキープできます。
エクステは同じ箇所につけ続けると頭皮や毛穴に負担がかかり、脱毛の原因になってしまうことも少なくありません。 継続してつける場合は、担当の美容師さんに相談することも大切です。

まとめ

瘢痕性脱毛症。組織のダメージが深刻になれば、新たな髪の毛が生えてくることもなくなります。 できれば早い段階でその予兆をキャッチし、早期対処しておきたいところ。
万が一手立てがなくなってしまっても、形成外科の医師が優秀であれば保険診療でも限りなくきれいに治療することも可能です。
また、新しい技術を使用すれば、瘢痕がわからないくらいきれいに治すことだって可能です。 もしお悩みであれば、一度病院の受診を検討しましょう。


監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。 同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。