壮年性脱毛症?AGAやびまん性脱毛症、女性の場合の特徴とセルフチェック

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年齢を重ねると徐々に薄くなる頭髪。
「今の自分は年齢から見て一般的だろうか…」と悩むこともあるのではないでしょうか。
この記事では壮年性脱毛症のメカニズムや特徴を解説し、AGAやびまん性との違いについても要約しています。 症状が気になる際のセルフチェックにもお役立てください。

壮年性脱毛症とは

壮年性脱毛症とは、その名の通り30〜40代にかけて始まり、頭髪が徐々に薄くなっていく状態のことを指します。 一般的に何もしなければ年齢とともに症状は進行します。

壮年性脱毛症のメカニズム

壮年性脱毛症は、男性ホルモンであるテストステロンがジヒドロテストステロン(以下:DHT)に変換されることによって引き起こされます。
DHTは、毛母細胞に作用して髪の成長を促進する遺伝子の活性を抑制します。 髪の毛の成長因子の活性が抑制されると、毛周期の中でも特に成長期が短くなり、髪が細く・短くなってしまう原因となるのです。
また、一方で50代〜60代の女性に生じる壮年性脱毛症ははっきりとした原因が分かっていません。 男性ホルモンの関与は現在のところ不明とされていて、男性の更年期脱毛症とは別の対処を検討することがほとんどです。

壮年性脱毛症の原因

壮年性脱毛症のメカニズムは男性ホルモンが主要因と考えられていますが、原因はそれだけではなく、以下も原因として考えられます。
①遺伝
壮年性脱毛症を引き起こす原因に、遺伝的要因の有無も関与しています。 壮年性脱毛症はDHTが毛母細胞に影響を及ぼし起こることがわかっています。
DHTが毛母細胞に影響を及ぼす働きとして、髪の毛を作り出す毛母細胞の受容体とDHTが結びついてしまうため、髪の毛の成長を阻害してしまうのです。
遺伝的な影響として、この毛母細胞の受容体の数が影響を受けるとされています。 この受容体の数は、母方の遺伝子の影響を受けやすいと言われています。
また、テストステロンをDHTに変換する「5αリダクターゼ」という酵素があり、この酵素の働きが活発かどうかも、遺伝的な影響を受ける要因のひとつです。 5αリダクターゼの活性については父方母方双方の影響を受けるとされています。
②生活習慣
生活習慣の乱れも、薄毛につながる要因のひとつです。 特に脂っこい食事や糖質過多の食生活は血中コレステロール値が高まり、髪の成長に必要な栄養素の運搬が滞ります。
また、飲酒や喫煙習慣も髪の成長に影響を及ぼします。
摂取したアルコールやニコチンの分解には、髪の成長に必要なアミノ酸や各種ビタミンを大量消費します。 結果、髪の成長に必要な栄養素が不足し、脱毛症の症状を促す要因となるのです。
③ストレス
ストレスは、壮年性脱毛症にも影響を及ぼす要因です。
ストレスは自律神経系の交感神経を優位にすることがわかっています。 交感神経が優位な状態が続くと、末梢血管が収縮し頭髪への血流が悪くなります。 すると髪に必要な栄養素の運搬や酸素の共有、老廃物の排泄が悪くなります。
また、交感神経が優位な状態が続くと寝つきも悪くなり睡眠の質が下がります。 睡眠の質が下がると、髪の成長に関与する成長ホルモンの分泌が悪くなり、健やかな髪の成長にも影響を及ぼします。

通常のヘアサイクルと壮年性脱毛症のヘアサイクルの違い

壮年性脱毛症が起こる原因には、さまざまな要因があることがわかりました。 壮年性脱毛症は通常のヘアサイクルに比べ、成長期が短くなるのが特徴です。
通常のヘアサイクルでは毛母細胞が成長期、退行期、休止期のサイクルを経て新しい髪の毛が成長します。 しかし、壮年性脱毛症ではこのサイクルが変化します。
①成長期の短縮
壮年性脱毛症では、成長期が短くなります。 髪の成長期が短くなると、新しい髪が成長する時間が短縮され、髪が十分に成長しないうちに退行期に入ってしまいます。
通常の成長期の期間は平均4〜6年。1か月で約1cmほど伸びるのが一般的です。
壮年性脱毛症は成長期の期間が短くなり、髪が十分成長しない状態で退行期に移行してしまうので、毛髪自体も細く短いものが増えてきます。
②退行期・休止期の変化
成長期の短縮に伴い、退行期・休止期も延長されます。 髪の毛の成長が早く止まり、退行期と休止期を早く迎えることで脱毛が進行する可能性が高まります。
退行期に入る髪の毛の量が増えることで、髪全体のハリやコシが出にくくなり、頭髪全体の印象がさみしく感じるのです。

壮年性脱毛症の症状の特徴や薄毛のタイプ

壮年性脱毛症は、薄毛が始まる部位や進行状況によりタイプ別に分けられています。 薄毛の進行度の参照としてアメリカで作られた「ハミルトン・ノーウッド分類(N-H分類)」が有名です。
日本人は一般的に頭頂部から薄毛が始まりやすい傾向にあると言われています。 これらの特徴と薄毛のタイプは個人差があります。

AGAとの違い

壮年性脱毛症とAGAの違い。 実は原因やメカニズムはほぼ同様とされており、対処法などに大きな違いはありません。
明確な違いとしては「発症時期」での分別がなされているくらいです。
AGAとは男性型脱毛症のことを指しており「androgeneticalopecia」の略称です。 早ければAGAは男性ホルモンの分泌が始まる10代後半から発症し、症状の進行が急速に進めば20代でも著名な薄毛症状が現れます。
一方で壮年性脱毛症は、40歳以降に始まることを特に指しています。 どちらも進行の早さや薄毛の進む部位などは個人差があり、偏りがないことも大いにあります。

びまん性脱毛症との違い

びまん性脱毛症とは、壮年性脱毛症と違い頭髪の特定の部位から薄くなるのではなく、頭髪全体の髪の毛が徐々に薄くなりボリュームが少なくなる症状が特徴です。 特に女性型の脱毛症状で見られます。以下で女性の脱毛症について解説します。

女性の壮年性脱毛症とは

女性の壮年性脱毛症は、女性型脱毛症とも呼ばれ、女性に起こる薄毛や抜け毛の症状を指します。 はっきりとした原因は分かっていませんが、女性の脱毛症で起こるびまん性の脱毛症状はダイエットやストレスなどの影響を受けると考えられています。
女性の壮年性脱毛症の場合、頭髪全体が薄くなる症状が特徴的です。 髪が徐々に薄くなり、頭皮が透けて見えるようになるのです。
加齢やホルモンの分泌バランスの変化などが関与していると考えられています。 女性の脱毛症状は急速に薄毛が進行するわけではありません。
気がついたらなんとなく頭髪全体が薄くなっている印象を受け、よくよく見てみると残った髪の毛が細くなっているという症状が発覚します。
女性の壮年性脱毛症では分け目の拡大が特徴的な症状のひとつです。 分け目から始まる薄毛の範囲により、進行度合いがおよそ3段階に分かれています。
女性においても脱毛症状は深刻な悩みであり、見た目印象の変化から心理的な負担を引き起こすこともあります。

壮年性脱毛症のセルフチェック方法

抜け毛が気になる方は日頃からセルフチェックするのがおすすめです。 早めに気が付くことができれば早期対処も可能です。
以下に、自宅で手軽にできるセルフチェック方法をご紹介いたします。
①鏡での観察
手持ち鏡などを使って、頭頂部や分け目の周りの髪の密度を注意深く観察してみましょう。 髪の毛が抜けている箇所や薄くなっている部分があるかを確認します。
照明等はできるだけ同じ条件でチェックするように心がけましょう。 白熱灯、蛍光灯等、条件が変われば頭皮のすけ具合の印象も異なるためです。
②写真を撮る
スマートフォンなどを使用して頭皮の写真を複数の角度から撮影します。
過去の撮影データがあることで現在の髪の状態と比較することができます。 また、定期的に撮影することで経過を把握しやすくなるでしょう。
③抜け毛チェック
シャワーやブラッシング時に抜け毛が増えていないかを確認します。 また、毛髪が枕や衣類に異常に残っていないかをチェックするのも参考のひとつとなるでしょう。
セルフチェックの注意点は複数の方法を組み合わせてチェックすることです。 鏡やスマートフォンを使用し、第三者目線で頭髪全体をまんべんなくチェックするのも重要です。
疑わしい症状が見られる場合は、早めに専門医への相談を検討しましょう。 早期発見・早期対処で薄毛に対して早めにアプローチするのも、お悩み解消につながる大きな一歩になるはずです。

壮年性脱毛症の対策

壮年性脱毛症には、遺伝以外にも生活習慣も関与していると考えられています。 食事や睡眠、ストレス管理などは脱毛症状の改善につながる重要な生活習慣のひとつです。
以下に脱毛症対策につながる生活習慣について解説します。

食事

髪の成長のためには食生活を意識しましょう。タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく取ることが重要です。 そのためには肉、魚、卵、大豆などのタンパク質源を摂取し、鉄分、亜鉛、ビタミンA、ビタミンCなどの栄養素を意識して摂るようにしましょう。
反対に糖質型や脂肪型の食生活は、髪に必要な栄養素が不足し頭皮環境を悪化させます。 食習慣が乱れているとより一層薄毛につながる要因となるのです。

睡眠

睡眠時間は十分に確保しましょう。時間が確保できない日は、睡眠の質を維持するようにしましょう。 睡眠不足や睡眠の質が低下するとストレスやホルモンバランスの乱れを引き起こし、脱毛のリスクを高める可能性があります。
髪の成長につながる成長ホルモンをはじめとしたさまざまなホルモンは、入眠中に分泌されます。 髪の成長をサポートすることを考えると、睡眠習慣も意識して整えたいところです。

ストレス管理

ストレスの蓄積を避け、頭皮環境を整えるためにもリフレッシュする習慣を持ち、リラックスする時間を作りましょう。 ストレスは交感神経を優位にし、体が休まりにくくなります。
髪の成長に必要な血流を維持しにくくなり、抜け毛につながる老廃物が運搬されにくくなります。 現代社会でストレスを完全にゼロにすることは難しいですが、蓄積する前に適度にリフレッシュする習慣を持ったり、リラックスする時間を持つことが大切です。

壮年性脱毛症の治療法

壮年性脱毛症に有効とされている治療法について解説します。
壮年性脱毛症の治療は早ければ早いほど効果が出やすいとされています。 薄毛の状況が気になったら、できるだけ負担にならない治療法の開始を検討しましょう。

飲み薬

近年では「フィナステリド(プロペシア)」「デュタステリド(ザガーロ)」と呼ばれる内服薬を活用する方法がポピュラーです。(2024年2月現在)
抜け毛を減らし、髪の毛の成長を促進するために用いられます。
5αリダクターゼという酵素の働きを抑制することで、男性ホルモンによる薄毛の進行を防ぎます。 フィナステリド(プロペシア)、デュタステリド(ザガーロ)は、薄毛クリニックではなくても取り扱っているクリニックが増え、手軽に治療ができるようになりました。

外用

外用薬として有名なのは「ミノキシジル(ロゲイン)」という製剤。市販薬では「リアップX5」という名でも販売されています。
頭皮に直接塗布することで血管を拡張し、髪の毛の成長を促進する効果が期待できます。 女性向けの製剤も販売されているので、用途に応じて使い分けると良いでしょう。

成長因子注入・再生療法

HARG(ヘアーオートログスリーピンググラフト)やPRP(血小板豊富血漿療法)などの注射法が有名です。
自己組織由来の細胞を利用した治療法で、頭皮に注入することで毛根の成長を促進します。再生医療の一環として開発されました。 自己の血液などから血小板や再生因子を抽出し、頭皮に注入することで毛根の成長を促進します。

植毛

健康な毛根を頭皮に移植する手術です。 自己の毛根を用いたFUT法やFUE法が一般的です。
FUSS(FUT)法は帯状に移植部分を取り出し、手作業で分割して移植する方法です。 対してFUE法は専用の器具で移植株を採取して移植するので、患者さんの痛みやダウンタイム、傷跡などへの負担が軽く、近年注目されている移植法です。(2024年2月現在)

まとめ

壮年性脱毛症は、男性の場合30〜40代に始まり頭髪が薄くなる状態です。 テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることで引き起こされます。 女性の場合にはハッキリとした原因はわかっていませんが、ストレスやホルモンバランスの関与が考えられています。
遺伝的要因や生活習慣の乱れも関与し、髪の毛の成長サイクルが短くなる特徴があります。 男性では頭頂部から始まりやすく、女性では全体的に薄くなる症状として始まる傾向が一般的です。
治療法には飲み薬や外用薬、成長因子注入、植毛などがあります。 また、自身の生活習慣の改善も重要です。セルフチェックをして、頭皮の観察や抜け毛などの症状が気になる場合は専門医の診察を早めに検討しましょう。
早めに対処することで、症状の改善や進行を遅らせる一助が期待できるでしょう。 まずはできることから取り入れて、お悩み解消を目指しましょう。