【医師監修】生え際が後退している?セルフチェックしてみよう!薄毛の原因と対策法を医師が詳しく解説!

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「見た目」に大きな影響を与える薄毛は、男女ともに深刻なお悩みを抱えている方が少なくありません。
市販の育毛剤などを試しても十分な効果が得られず、髪の毛の悩みがどんどん増えていくという方も多いでしょう。
さらに、薄毛は年齢を重ねるごとに目立ちやすくなる…と思われがちですが、実際は20代から薄毛に悩まれている方もたくさんいます。
そこで今回は、特に薄毛になりやすい「生え際の後退」の原因と対策法について医師が詳しく解説します。

生え際はなぜ後退するのか?

生え際は薄毛症状が起こりやすい部位の一つです。
目立ちやすく髪型などでカバーしにくい部位のため、見た目の印象にも大きく影響します。
まずは、なぜ生え際が後退して薄毛が目立つようになるのか詳しく見てみましょう。

男性ホルモンの影響

生え際の後退は男性に多く見られる薄毛症状です。
というのも、日本人男性の3人に1人は「男性型脱毛症(AGA)」という病気を持っているからです。
この男性型脱毛症とは、男性ホルモンの一種である「ジヒドロテストステロン(DHT)」が毛包に作用して髪の毛の成長を妨げて抜け毛が増えていく病気のこと。
ジヒドロテストステロンは本来、毛を濃くする作用を持つテストステロンから作られます。 前頭部と頭頂部の毛包はテストステロンをジヒドロテストステロンへ変化させる酵素が特に多く存在するため、薄毛が起こりやすくなるのです。
薄毛は遺伝する…と思われがちですが、男性脱毛症の発症に関わっているとされる遺伝子も同定されており、遺伝の影響を受けやすいと考えられています。
一方で、遺伝が関与していない男性型脱毛症も多く、明確な発症メカニズムは解明されていない部分も大きいのが現状です。

女性にも生え際の後退が起こる?ヘアスタイルが原因のことも…

生え際が後退する原因の多くは男性特有の病気である男性型脱毛症です。 しかし、生え際の後退は男性だけでなく女性に見られることも少なくありません。
女性の体内では性周期によってエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンがバランスよく分泌されています。
2つの女性ホルモンには様々な働きがありますが、髪の毛の成長を促してハリや潤いを保つのはエストロゲンです。 そのため、更年期以降にエストロゲンの分泌量が減ると薄毛になりやすくなります。
なお、エストロゲンの分泌量低下が原因となって生じる女性の薄毛を「女性型脱毛症(FPHL)」と呼びます。
しかし、女性型脱毛症は頭頂部のいわゆる「分け目」が広がっていくように薄毛部分が目立つようになることが多く、生え際だけが後退するというパターンは少ないのが特徴です。
一方で、ポニーテールやお団子など長時間にわたって生え際に強い負担がかかるヘアスタイルが習慣になっている方は、「牽引性脱毛症」によって生え際が後退するケースもあります。
牽引性脱毛症はエストロゲンの分泌量に関係なく若い方が発症することもあるため注意が必要です。

生え際が後退してきたかも…セルフチェックをしてみよう!

上述したように生え際の後退は男性型脱毛症などの病気が関わっているケースがほとんどです。
いずれの脱毛症も早い段階で適切な対処や治療を行う方が改善する見込みが高いと考えられます。
生え際が後退してきたかも…?と悩み始めた方は次のようなチェックをしましょう。

「M字」の深さをチェック!

男性型脱毛症などで見られる生え際の後退は、左右のこめかみあたりがM字に剃り込まれるように深くなっていくのが特徴です。 剃り込みがどの程度深くなれば薄毛と診断されるのか明確な定義はありません。
しかし、一般的には目を開いたときに額にできる一番上のシワから生え際までの距離が指2本分以上ある場合は薄毛が進行していると考えられます。
なお、生え際の形には個人差があり、生まれつき剃り込みが深い「富士額」の方もいらっしゃいますが、思春期の頃よりも明らかにM字が深くなっている場合は薄毛症状と考えてよいでしょう。 生まれつき剃り込みが深い方は、若い頃の写真と見比べてみて下さい。

髪の毛にハリとコシがなくなった

髪の毛の質が柔らかく細くなっている場合は薄毛が進行している可能性があります。
生え際の髪の毛をチェックして他の部位に比べてハリやコシがなく、産毛のような毛が目立つ場合は要注意です。

抜け毛が増えている?

薄毛は正常な髪の毛の成長が妨げられて抜け毛が増えていくことによって進行します。
特に男性型脱毛症はヘアサイクルが乱れて髪の毛が成長するための期間である「成長期」が短くなるため、せっかく生えた髪の毛がどんどん抜けていってしまうのが特徴です。
私たちの髪の毛は健康な方でも1日に100本ほど抜けて新しく生まれ変わっていきます。
1日の抜け毛の本数を正確に数えることは困難ですが、以前より抜け毛が増えていると感じる方は薄毛が進行しているサインかもしれないので注意しましょう。

生え際の後退…どう対策すればよい?

では、生え際の後退が気になりだしたらどのような対策をしていけばよいのか詳しく見てみましょう。

日常生活で注意することは?

薄毛の多くは上述したような病気によって引き起こされることが多く、すでに薄毛が進行している場合は日常生活を見直しても薄毛症状が改善する可能性は低いのが現状です。
しかし、可能な限り進行を抑えるためにもつ次のような対策を心がけてみましょう。

肩や首のコリ、冷えを予防する

頭皮の血行が悪い状態が続くと髪の毛を作り出す細胞に十分な栄養が行き届かなくなり、薄毛が進行する可能性があります。
頭皮の血行悪化の大きな原因は肩や首のコリと冷えです。 特に長時間デスクワークをする方は肩と首がコリやすく身体も冷えがちなので、適度なストレッチを取り入れる・入浴時は湯船にゆっくり浸かるなどの対策をして体を温めましょう。

食生活の改善

髪の毛を作り出すには、十分なタンパク質、ビタミン、亜鉛などのミネラルが必要です。 通常の食生活を送っていれば、栄養が極端に偏ることはありません。
しかし、薄毛の進行を抑えるためにはバランスよい食生活を心がけることが大切です。
また、カロリーが高い食事や脂質が多い食事は毛穴詰まりを引き起こして頭皮環境を悪化させる可能性があります。 頭皮環境の悪化も薄毛の原因となりますので、脂質を摂りすぎない食事を意識しましょう。
ただし、過度な制限は栄養素不足を引き起こして薄毛を助長することも少なくありません。 適正カロリーを守った食事を心がけて下さい。

薄毛は治療できる

男性型脱毛症などの病気は治療をして改善することが可能です。
現在(2022年6月)、男性型脱毛症に対しては、発症の根本的な原因となるジヒドロテストステロンの産生を抑える「フィナステリド」や「デュタステリド」などの飲み薬と発毛を促す「ミノキシジル」という塗り薬を使用する治療が標準的となっています。
これらの薬は医学的に薄毛改善効果が認められており、実際に多くの方が薄毛のお悩みを解消しています。
また、女性型脱毛症にも「ミノキシジル」の使用が勧められており、男女とも正しい治療をすることで薄毛を改善することが可能です。 薄毛治療は早い段階で開始した方が治療効果は高くなることが分かっています。
生え際の後退が気になりだしたら、できるだけ早めに皮膚科や専門クリニックに相談しましょう。

まとめ

生え際は薄毛が起こりやすい部位の一つです。
生え際の後退が気になる場合は、薄毛が進行している可能性があるため注意しましょう。
生え際の後退は男性特有の男性型脱毛症(AGA)に現れやすい症状ですが、女性に現れることも少なくありません。
今回ご紹介した対策法を心がけ、早めに専門の医療機関に相談することをお勧めします。


<執筆者情報>成田亜希子
2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い分野の診療に携わってきた。2020年からはAGA専門クリニックに勤務。延べ一万人以上の診療に従事し、薄毛に悩む多くの方を改善に導いてきた。 「見た目から健康を!」をモットーに、ひとりひとりに合った薄毛治療や対策の提案を心がけている。