ヘアサイクルの乱れが薄毛を引き起こす?薄毛・抜け毛の原因や種類のまとめ

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男女問わず、多くの人が悩みを抱える薄毛や抜け毛。この薄毛や抜け毛にはさまざまな原因がありますが、その中の1つに、ヘアサイクルの乱れが関係していると考えられています。

今回は、ヘアサイクルが抜け毛や薄毛とどのようにかかわっているかや、薄毛・抜け毛の原因や種類などについてご紹介していきます。

薄毛・抜け毛の原因と考えられているもの

男性ホルモンによる影響

ジヒドロテストステロンの影響 薄毛や抜け毛には、男性ホルモンが大きな影響を及ぼすと考えられています。しかしこの男性ホルモンが、直接薄毛や抜け毛につながるわけではありません。薄毛や抜け毛の原因には、ジヒドロテストステロン(DHT)という一部の悪玉男性ホルモンが関係していると考えられています。

ジヒドロテストステロンとは、男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、5αリダクターゼという酵素との結合によって変化したものです。ジヒドロテストステロンの主な作用は、薄毛や体毛の増加、精力の減退などとされています。このジヒドロテストステロンが髪の成長を抑制することで正常なヘアサイクルが乱れ、抜け毛が進行していくことで髪は次第に薄くなります。

この5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は後頭部や前頭部、Ⅱ型は頭頂部と前頭部に多く存在します。これらジヒドロテストステロンの作用は、遺伝による影響が大きいと考えられています。

シャンプーの刺激

髪を洗う際には、摩擦やシャンプーに含まれる強い洗浄成分などによって頭皮が刺激を受けていることがあります。このような刺激が頭皮を傷め、必要な油分まで取り除いてしまうことで頭皮環境を悪化させ、抜け毛や薄毛の原因になってしまうことがあります。

シャンプーの際の刺激を少なくするためには、シャンプーをつける前の予洗いを入念に行うことが大切です。次にシャンプーを泡立て指の腹で洗うようにし、頭皮にベッタリとシャンプーをつけない洗い方を心掛けましょう。

また、シャンプーを十分に洗い流さないとフケやかゆみの原因となり、毛穴の詰まりや頭皮環境の悪化の原因となります。その他にも、頭皮の洗いすぎは皮脂を過剰に分泌する要因にもなります。洗浄力が強すぎるシャンプーの使用やシャンプーでの2度洗いは控えるようにした方が良いでしょう。

ストレス

人はストレスを受けると、交感神経が刺激され血流が良くなり、全身に栄養素を運ぶことでストレスに対処しようとします。通常であればすぐにもとの状態に戻りますが、慢性的にストレスにさらされた状態が続くと、全身に運ばれるべき栄養素やエネルギーが不足します。すると体は、生命維持に必要な主要器官に優先して栄養やエネルギーを運ぶようになります。そのため髪に運ばれる栄養やエネルギーの優先順位はさがり、結果的に頭皮に運ばれる栄養が不足してしまうのです。

また一時的なストレスと違い、慢性的なストレスは自律神経の乱れを引き起こして血行不良を促します。血行不良もまた、頭皮への栄養補給の妨げとなるため、薄毛や抜け毛の原因となると考えられています。

分け目を変えないヘアスタイル

髪の分け目は定期的に変えないと、常に空気や紫外線などの刺激にさらされている状態が続きます。同じ場所にくりかえし刺激が加えられている状態が続くと、頭皮は乾燥しやすく毛根もダメージを受けやすい状態となります。

このような頭皮や毛根へのダメージの蓄積も、抜け毛や薄毛の原因になると考えられています。

遺伝

抜け毛や薄毛の原因には、遺伝が深くかかわっていることが分かっています。
薄毛の要因の1つとして、5αリダクターゼ酵素とテストステロンと呼ばれる男性ホルモンの結合によってジヒドロステロンが生成され、このジヒドロステロンが受容体と結合することが挙げられます。この受容体の感受性の高さに関する情報が、母親から受け継ぐX染色体に受け継がれているため、薄毛や抜け毛は母方の遺伝子による影響が大きいと考えられています。

しかし遺伝するのはあくまでも「薄毛になりやすい体質」だけです。母方の親戚に薄毛の人がいるからといっても、必ずしも薄毛になるというわけではなく、また父親からの遺伝による影響が無いというわけでもありません。

タバコによる血行不良

タバコを吸うと自律神経が刺激されることで血管が収縮し、この血管の収縮はもとに戻るまでしばらく時間がかかります。つまりタバコを吸うと血行が悪い状態が続いてしまうということです。すると頭皮の血流にも影響が及び、毛根への栄養供給が十分に行われなくなるため、髪の毛の成長を阻害すると考えられています。

血行不良の原因となる喫煙行為は、薄毛や抜け毛の原因にもなり得るということです。

髪を乾かさない

髪を乾かないことが直接の原因になるわけではありませんが、髪をドライヤーで乾かさずぬれたままにしておくと、頭皮に雑菌が繁殖しやすくなります。この雑菌が頭皮の健康状態を害することがあり、その結果薄毛や抜け毛を引き起こすことがあるといわれています。

また頭皮の菌が過剰に増えてしまうことによって、皮脂による毛穴の詰まりを引き起こし、正常なヘアサイクルが行われなくなる可能性もあります。

紫外線

紫外線により髪の毛のタンパク質やコラーゲンが破壊され髪の毛が細くなったり、頭皮も紫外線によって乾燥などを引き起こしたりしてしまうことがあります。細くなった髪の毛と頭皮環境が悪化した毛穴は、それ自体が抜け毛・薄毛に原因になるのです。

また、紫外線は毛乳頭細胞刺激することで髪の毛の成長を阻害し、正常なヘアサイクルを乱してしまうとも考えられています。

病気の症状、投薬の影響

甲状腺機能障害や膠原病、梅毒によって抜け毛や薄毛が起こってしまう可能性があります。また、ホルモンバランスの不調や頭皮の病気も薄毛・抜け毛の原因の1つといわれています。急に髪の毛が薄くなった、抜け毛の量が増えた場合は、何らかの病気が抜け毛を引き起こしている可能性があります。心当たりがある場合は、早めに病院を受診しましょう。

また、抗がん剤をはじめとする薬の副作用で抜け毛が引き起こされることもあります。

薄毛・抜け毛のさまざまな種類

自然な抜け毛と脱毛症

抜け毛の種類には、ヘアサイクルによって起こる「自然な抜け毛」と脱毛症などの病気によって引き起こされる「異常な抜け毛」があります。この2種類の違いについて解説していきます。

自然な抜け毛…正常なヘアサイクルによる抜け毛

髪の毛が成長していく過程を「ヘアサイクル」といいます。ヘアサイクルは、毛母細胞が分裂し髪が成長していく「成長期」、成長が停止する「退行期」、新しく生えてくる髪に押し出され髪の毛が抜ける「休止期」に分けられます。

休止期に起こる抜け毛は、新しくできた髪の毛が古い毛が押し出されることによって抜け落ちます。いわゆる「自然な抜け毛」であり、抜けた髪の毛が健康であれば心配する必要はありません。また、ヘアサイクルは髪の毛ごとに休止期の時期が異なるので、一度にまとまって抜け落ちることはありません。一度にまとまって髪の毛が抜けてしまう場合は、何らかの異常によって抜け毛が起こっている可能性が考えられます。

異常な抜け毛…脱毛症の可能性

正常なヘアサイクルによるものではない抜け毛は「異常な抜け毛」であり、脱毛症の可能性があります。このような場合は、脱毛症の種類別によって対策を変えていかなくてはなりません。

代表的な脱毛症

脱毛症はいくつかの種類に分けられ、種類によって抜け毛の状態にも違いがあります。以下では、代表的な脱毛症の症状についてご紹介します。

円形脱毛症

円形脱毛症

円形脱毛症は、10円玉ほどの円形に髪が抜けることが特徴です。症状が進むと、抜け毛の範囲が巨大化することや、無数の脱毛斑が発生することもあるようです。場合によっては脱毛が全身の体毛にまで及ぶこともあります。円形脱毛症は自己免疫疾患による可能性が有力とされていますが、甲状腺の異常や膠原病などによって引き起こされることもあり、微熱や疲労感などの全身症状を訴えるケースもあります。

びまん性脱毛症

びまん性脱毛症

びまん性脱毛症は、30代後半以降の女性に多いといわれる脱毛症であり、髪の毛全体の広い範囲で抜け毛や薄毛が起こることが特徴です。ホルモン異常や投薬、病気などさまざまな原因によって引き起こされると考えられています。 初期症状としては、髪の毛が細くなりコシが無くなってくることが多く、思い通りに髪をセットできなくなったと感じる場合に注意が必要です。

粃糠(ひこう)性脱毛症

粃糠性脱毛症

雑菌が大量に繁殖することでフケが多量に発生して毛穴をふさぎ、毛根に炎症が起こる脱毛症です。常在菌の大量な繁殖は炎症やかゆみを引き起こし、その結果抜け毛を悪化させてしまいます。粃糠性脱毛症のフケはかさぶた状に毛穴をふさぐことが特徴であり、ただフケが多いというだけでは粃糠性脱毛症とされることはありません。ホルモンバランスの乱れなどで常在菌が異常繁殖することが原因と考えられていますが、はっきりしたことはまだ解明されておらず、比較的珍しいタイプの脱毛症です。

牽引(けんいん)性脱毛症

牽引性脱毛症

ポニーテールやエクステなどで引っ張られることで髪が抜け、薄毛が起こる脱毛症です。髪を引っ張ることで起こるため、分け目やおでこなどにも起こりやすい特徴があります。髪型以外にもカチューシャやヘッドアクセサリー、ヘアアイロンなども牽引性脱毛症の原因となり得ると考えられています。短期間の牽引性脱毛症は改善する可能性も高いといわれていますが、長期間に及ぶ牽引性脱毛症は回復が難しくなってしまうこともあるため、いつも同じヘアセットをしている場合には注意が必要です。

髪はどのように生まれ、成長するのか

頭皮毛根断面図

髪は毛母細胞の分裂によって成長する

髪の毛は、分裂した毛母細胞が少しずつ角質化したものの集合体です。毛母細胞は毛乳頭細胞の周りにあり、毛乳頭から送られる栄養や酵素を材料に細胞分裂をすることで毛髪を作り出します。毛母細胞の根幹には毛乳頭があり、毛乳頭は毛細血管から栄養やビタミン・水分を受けとり、毛母細胞に発毛・脱毛の指令を出します。毛乳頭の指令により、毛母細胞は発毛・細胞分裂・脱毛を行うことで正常なヘアサイクルを保っています。

毛包の構造と髪の成長

毛包とは、表皮が円柱状(筒形)に内部に入り込んだ部分のことです。いわゆる「毛穴」のことを指します。毛包の底部には毛母細胞が毛乳頭を取り囲んでいて、毛包を通過し髪の毛は成長をしていきます。毛包は、毛母細胞が細胞分裂によって作り出した髪の毛を支える働きを持っています。毛包は髪の毛の生産工場とも呼ばれており、毛髪を作り出す重要な器官とされているのです。

髪が生まれてから抜けるまでのヘアサイクル

髪が生まれてから抜けるまでのヘアサイクル

へアサイクルとは

ヘアサイクルとは、髪の毛が作り出され成長し、脱毛していく周期のことをいいます。ヘアサイクルは通常5年から6年ほどとされており、薄毛が進行している人はこのヘアサイクルが通常よりも短くなっている可能性があります。上記で説明したように、ヘアサイクルは「成長期」「退行期」「休止期」の3つ時期に分けられます。

成長期

成長期は、男性が3年から5年、女性で4年から6年ほどの期間といわれています。成長期は、毛乳頭からの指令により毛母細胞の細胞分裂が活発に行われ、髪はどんどん成長を続けます。成長期は髪の毛を太く硬く成長させる、育毛にとって最も重要な期間です。ヘアサイクル全体の80%ほどが成長期であり、髪の毛は1日0.3mmから0.5mmほど伸びると考えられています。

退行期

退行期とは髪の毛の成長がストップする期間です。毛根が次第に縮小していき毛母細胞の細胞分裂が少なくなることで髪の毛の成長活動が鈍くなっていきます。期間は2週間程度と考えられており、退行期が終了すると休止期に移っていきます。

休止期

退行期がすぎて毛根が機能しなくなると、髪の毛の成長が止まり3カ月から4カ月程度の休止期に入ります。休止期は次の髪の毛が生えるまでの準備期間です。休止期の間に毛根で新しい毛が生まれ始め、古い髪の毛は成長した髪の毛に押し出され抜け落ちます。また、日々の洗髪などで抜け落ちることもあります。

正常なヘアサイクルによる抜け毛の特徴

正常なヘアサイクルが保たれている場合、抜け毛の量は1日50本から100本程度と考えられています。髪の毛は太く丈夫で、十分な長さがあり、太さは根元から毛先までほぼ均一です。

正常な抜け毛は、根元に十分なふくらみや太さがありマッチ棒のような形をしています。毛根の色は透明なのが健康的な状態です。

頭皮の異常による抜け毛の特徴

頭皮の異常によりヘアサイクルが乱れると、抜け毛は細く柔らかくなっています。また、根元から毛先までの太さが均一になっていません。一度にたくさん(1日に100本以上)の本数が抜けてしまう場合も、異常な抜け毛の可能性があります。

異常な毛根・髪の根元の状態

異常なヘアサイクルにより抜けた髪の毛の根元は、毛根がマッチ棒のように十分にふくらんでいない場合や、ふくらみが短いケース、中には全くふくらんでいない場合もあります。また、通常透明であるはずの毛根の色が黒くなっていたり、皮脂の過剰分泌により白い膜状のものが付いていたりするなどの場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。


以上のことから、「1日の抜け毛が100本以上」「抜け毛が短く細く柔らかくなってきた」「根元から毛先までの太さが均一でない」「毛根や根元がマッチ棒のようにふくらんでおらず、毛根が透明でなく黒くなってしまっている」「毛根に白い膜状の付着物がある」などの場合は、ヘアサイクルに乱れが起きているサインと考えられるため、早めの対処が必要となります。

ヘアサイクルを正常に保つために

成長ホルモンのグラフ

睡眠によって成長ホルモンの分泌を促す

健康な髪を育てるヘアサイクルを正常に保つためには、成長ホルモンの働きを活発にすることが重要となります。成長ホルモンとは細胞の修復を促すホルモンであり、健康な髪を育てる働きも持っているからです。

成長ホルモンは、眠りに入ってから30分後から3時間ほどの深い睡眠時に分泌されるため、質の高い睡眠をとる工夫を行うことが、成長ホルモンの分泌を促進するためのカギになります。

成長ホルモンの特徴

成長ホルモンの主な働きは、体中の組織の修復と再生で、ノンレム睡眠という深い眠りのときに最も多く分泌される特徴があります。アンチエイジングに必要不可欠なホルモンとされていることから、老化防止に役立つと期待されています。成長ホルモンは、22時から午前2時までの間に多く分泌されるといわれており、この時間に良質な睡眠をとることで肌や髪の再生を促します。

成長ホルモンと発毛・育毛の関係

毛髪は毛母細胞が細胞分裂し角質化したものです。つまり、髪の毛の成長や毛根の再生も成長ホルモンに大きくかかわっていると考えられます。この成長ホルモンが分泌されなければ、発毛から成長につながる正常なヘアサイクルが行われず、髪の成長が止まり、生まれるはずの髪が生まれなくなってしまう恐れもあります。

おわりに

今回は、薄毛や抜け毛が起こる原因や、抜け毛を引き起こすヘアサイクルの乱れについてご紹介しました。抜け毛や薄毛にはさまざまな要因がありますが、薄毛や抜け毛は、遺伝や生活習慣、ストレスや病気などによって正常なヘアサイクルが乱れることで起こることがあります。

今薄毛・抜け毛に悩んでいない方も、ヘアサイクルの乱れを感じたら、普段のお手入れや生活習慣から見直してみてはいかがでしょうか。