赤ちゃんの頭の形はいつまでに整えばいい?親ができる対策は?

〈 約 12分27秒 で読めます 〉

お母さんの産道を通って生まれてくる赤ちゃん。生まれた直後は頭の形の変形が顕著でも、日を追って丸みを帯びてきます。 しかしながら赤ちゃんの向きグセや頭の位置によっては生まれた頃の変形とはまた別の変形が生じることも少なくありません。
この記事では、赤ちゃんの頭の形が変形する原因から自宅で養育者ができる対処法、どうしても気になる場合の治療法について解説しています。

頭の形が変形する原因

赤ちゃんの頭の形が変形する主な原因の一つは、一方向への寝かせすぎといわれています。
赤ちゃんが同じ方向を向いたまま寝たり、同じ位置に頭を置いたまま過ごすことで、その部分の頭蓋骨に圧力がかかり、頭の形の変形につながってしまいます。 頭の一部が長時間同じ位置に圧迫されることで、圧迫された方向に徐々に歪みが生じてくるのです。
圧迫された状態が長期間続くと、頭の形が歪んで固定されてしまう可能性があります。 早期に対処することが重要です。
赤ちゃんの寝かせる向きや頭の位置を変えてあげることで、頭の形のいびつさを軽減・改善の一助になるでしょう。

赤ちゃんの頭が変形しやすい理由

赤ちゃんの頭が柔らかいのは、頭蓋骨の構造や発達の特性によるものです。 赤ちゃんの頭蓋骨は成人の頭蓋骨と比べて柔らかく、骨の間に隙間があります。
この柔らかい頭蓋骨により、赤ちゃんは出産時母体から出る際に頭が通りやすくなるのです。 また、赤ちゃんの脳は急速に成長します。
赤ちゃんの頭が当初柔らかいのは脳の成長に適応するための余地を残しているからです。 成長するにつれて頭蓋骨が硬くなり、骨の間の隙間も埋まっていきます。
この柔らかい頭蓋骨は、一般的に1歳頃までには落ち着きますが個人差もあります。

頭の形の変形は主に3種類

赤ちゃんの頭の形の変形は、主に以下の3種類に分類されます。
①斜頭症
斜頭症は、赤ちゃんが左右どちらかの特定の方向に頭を傾けることで、頭の形が歪む状態です。
通常赤ちゃんが同じ方向を向くことによって、頭蓋骨が圧迫され頭が一方向に平坦になることがあります。 上の図の場合、おそらくこの赤ちゃんは右側に頭を傾けて寝るクセがあると考えられます。
②短頭
短頭(いわゆる絶壁)は、赤ちゃんの頭の後部が丸みを帯びずに平らになっている状態です。
これは、赤ちゃんが寝たまま仰向けの位置に頭を置くことによって、頭蓋骨の後部が圧迫されるために起こります。 赤ちゃんのうつ伏せ寝を推奨しなくなった時代背景もあり、近年急速に増えてきている症状のひとつです。
③長頭症
長頭症は、赤ちゃんの頭の前後幅が横幅に比べて異常に長くなっている状態です。
これは、赤ちゃんが寝たまま真横の位置に頭を置くことによって起こります。 頭蓋骨の早期癒合の症状にいているため、これらの変形は成長段階での観察や評価に特に注意が必要です。
早期に対処しない場合、将来的に頭の形に影響を与える可能性があります。

放置すると頭の形はどうなる?

赤ちゃんの頭が一方向に圧迫された状態が長く続くと、頭蓋骨がその方向に変形しやすくなります。 頭蓋骨や脳の成長とともに必ずしもその状態のまま成長するわけではありませんが、向きグセなども放置されると、頭の形が変形したまま成長するケースもあります。
軽い変形なら髪の毛が生えてきた段階でほとんど気にならなくなったりもしますが、症状が重い場合だと顔のパーツの左右差や歯並びなどに影響を及ぼすこともあり、後の治療が難しくなる可能性があります。
そのため、変形が強い場合には早期に適切な対処をすることが重要です。

赤ちゃんの頭の形が気になる時の対処法

赤ちゃんの頭の形が気になる場合、自宅でもできる役立つ対処法を以下でご紹介します。
①体位変換を行う方法
赤ちゃんの寝かせる方向を定期的に変えることで、頭部にかかる圧力を均等に分散させます。
これにより、頭蓋骨への圧迫が偏らず、頭の形を整える助けになります。 例えば、寝かせる方向を1週間ごとに変えるなどの周期を設けると効果的です。
②枕を用いる方法
ドーナツ枕などを使用することで、頭部の圧力を分散させることができます。 特に短頭症などの場合、頭を支える部分が凹んでいるので、頭部の形を維持しやすくなります。
枕の選び方や使用方法については、小児科医や専門家に相談することがおすすめです。 ただし、枕を用いた方法は、赤ちゃんの首が座ってきて自分の意思で首の位置を調整できるようになり枕を外してしまうようであれば効果は期待できません。
呼吸の妨げになってしまうこともあるので、枕の使用が効果的ではない場合には無理に使用することはやめましょう。
③運動やマッサージを行う
赤ちゃんの首や頭を優しくマッサージしたり、寝返りの練習や運動を行うことで、頭部をささえる筋肉の強化を図ることで首の力を養い、頭への圧力が一方向にかからないサポートになります。
頭の位置が固定されなければ頭の形を整えるのにつながるでしょう。 ただし、力を入れ過ぎないように注意しましょう。
これらの対処法を適切に実践することで、赤ちゃんの頭の形を整えることが期待できます。

ヘルメット療法

赤ちゃんの頭の変形が高度で、将来の形容が懸念される場合には赤ちゃんの頭の形を整えるためのヘルメット療法を検討してみるのもいいかもしれません。
ヘルメット療法とは、赤ちゃんの頭の形を整える特殊な形状のヘルメットを装着し、頭の成長を促して形を整える治療法です。

ヘルメット療法の原理

ヘルメット療法は、頭蓋骨の成長に関する自然なプロセスを利用しています。
赤ちゃんの頭は柔らかく成長中であり、頭蓋骨がまだ柔軟性を保っています。 ヘルメットは頭の成長を促進し、頭蓋骨の成長を正しい方向に誘導することで、頭の形を整えます。

ヘルメット療法の適応

ヘルメット療法は赤ちゃんの頭が偏平や突出などの形状異常に適用されます。

ヘルメット療法の注意点

ヘルメット療法は赤ちゃんの頭の成長を促進するため、毎日23時間は装着します。 サイズや形などは定期的に調整する必要があり、定期的な受診によるフォローアップが必要です。
また、赤ちゃんの肌に優しい材料を使用し、皮膚の刺激や圧迫を最小限に抑えることも重要です。

ヘルメット療法の手順

①初診と評価
赤ちゃんの頭の形や成長状況を医師が評価します。 レントゲン撮影やCTスキャンなどの画像検査を行い、適応の有無やヘルメットの種類なども検討します。
②ヘルメットの作成
赤ちゃんの頭の形に合わせて特製のヘルメットが作成されます。基本的にはオーダー製です。 ヘルメットは軽量で通気性があり、赤ちゃんの頭にとって負担のないよう専門の技師によって作られます。
③ヘルメット装着と調整
赤ちゃんひとりひとりの頭の形に合わせて作られたヘルメットを頭全体を覆うように装着します。
ヘルメットは特殊な素材で作られており、赤ちゃんの頭に適切な圧力をかけることで、成長を促進し形を整えます。 ヘルメットは通常1日23時間以上装着します。装着後、定期的に医師が赤ちゃんの頭の成長を評価しヘルメットの調整を行います。
これにより、頭の形を効果的に整えるための最適な圧力をかけながら頭蓋骨の成長のサポートをするのです。

ヘルメット療法の期間と効果

ヘルメット療法の期間は赤ちゃんの頭の状態や重症度によって異なりますが、通常は数ヶ月から1年以上にわたります。
ヘルメットを装着することで、通常は数週間から数ヶ月で効果が現れ始め、頭の形が整っていきます。 継続的な使用は必須ですが、多くの場合、装着期間が長いほど顕著な改善が見られます。
ヘルメット療法は継続的な使用が必要です。 毎日の装着を守り、医師との密な連携の下で定期的なフォローアップを受けることが重要になります。
頭の変形に対して改善を期待するなら、骨が柔らかく成長が著しい早い段階での治療がより効果的です。 症状が気になったら早めに医師への相談を検討しても良いかもしれません。

ヘルメット療法の費用

ヘルメット療法を用いる場合、赤ちゃんの頭の形の変形具合により保険診療で治療を受けられる場合もあります。 また、保険診療にならなくても症状が気になれば、自由診療での治療できる病院もあります。

保険診療

医療機関により、頭蓋骨の形成異常を修正するためにヘルメット療法を保険診療として提供しています。 この場合、医師が異常な頭の形を評価し、保険適用の条件に合致する場合にヘルメット療法を指示します。
保険診療で提供される場合、治療費の一部が保険でカバーされます。

自由診療

保険適用の条件に合致せず、医師が治療を必要としない場合、自由診療として頭蓋骨の形成異常を修正するためのヘルメット療法を提供しているクリニックもあります。 自由診療でもヘルメット療法を受けることはできますが、治療費は患者が全額負担することになります。
しかしながら将来への形容の懸念を見据えて、早いうちに対処したいと考える養育者も少なくありません。

まとめ

赤ちゃんの頭の形の変形は、養育者にとって心配事の一つです。
まず、頭の形の変形の主な原因は寝かせる方向や頭の位置による圧迫です。 この圧迫が長期間続くと、頭の形が歪んでしまうため、早めの対処が重要です。
自宅でできる対処法として、体位変換や枕の使用、運動やマッサージが挙げられます。 これらの方法を適切に実践することで、赤ちゃんの頭の形を整えるサポートにつなげられます。
また、自宅での対処がうまくいかず頭の形の変形が進んでしまった場合には、ヘルメット療法という治療があります。
ヘルメット療法は、赤ちゃんひとりひとりの頭の形に合わせてヘルメットを作り、毎日の装着・使用方法を守ることで頭の成長を促進し、変形を整える対策です。
治療の費用に関しては、保険診療と自由診療の選択肢があります。 保険診療では一部が保険でカバーされますが、自由診療では治療費を全額負担する必要があります。
ただし、将来の形容を考慮して早めの治療を希望する場合は、自由診療も選択肢の一つとなるでしょう。
赤ちゃんの頭の形の変形に関する懸念がある場合は、早めに医師に相談し、適切な対処法や治療法を選択することが大切です。 適切なケアと医療の下で、赤ちゃんの健康な成長をサポートしたいですね。