銀座HSクリニック 柳生邦良先生 監修

人毛植毛と人工毛植毛 -薄毛対策講座-

自毛植毛

自毛植毛とは、自分自身の後頭部から側頭部の頭髪を採取し、薄毛が気になる部分に※再分配する移植技術です。(※自分自身の頭に生えている毛を再分配するので、頭髪の総数が増えるわけではありませんし、薄毛が進行している髪の成長を促す技術でもありません。) 後頭部から側頭部にかけての毛は、薄毛を誘発する男性ホルモンの影響を受けにくく、ほぼ一生太い髪のまま生え続けます。そして、薄くなった生え際などにこの部分の毛髪組織を移植した場合、移植先での環境に左右されず、後頭部と同じ髪が生えてきます。 将来薄毛が進行して、元々前頭部や頭頂部に生えていた髪がすべてうぶ毛になって見えなくなっても、後頭部に毛が生えている限り、植毛された毛も前頭部や頭頂部で生え続けます。後頭部の毛のこうした特徴は、「ドナードミナント」と呼ばれます。 自毛植毛のさまざまな方法が考案されている中で、日本を含む世界各国で行われている主な自毛植毛の技術について紹介します。

FUT法(毛包単位移植)

自然の頭髪は2~3本ずつの束が1~2ミリの間隔で離れて生えています。それらの束を毛根から生えているそのままの状態(毛包単位)で植毛する方法が毛包単位植毛です。この植毛法は毛包単位で移植することからFUT(Follicular Unit Transpantation)と言い、毛根単位で移植する顕微鏡レベルの最新技術です。 FUTは最新の実体顕微鏡(マンティス)を使って作業を行う毛包単位の植毛の為、人工的に植えたとは思えないくらいきれいに仕上がります。

ニードル植毛

いろいろな植毛針を使用して、穴開けと植え込みを同時に行う方法です。韓国で人気のある方法で、日本の多くのクリニックでも採用されています。仕上がりはきれいで、生え際などの狭い範囲なら効果がありますが、密度を濃く植えることが難しく、費用が高額になりがちな傾向にあります。そのため現在では、韓国と日本以外の国ではほとんど行われていません。

FUE(くり抜きグラフト採取)

後頭部から植毛用のドナー株を採取するのに、直径1ミリ前後のパンチを使って毛根をくり抜く方法で、1960年代に広く行われていたパンチ・グラフト植毛の変法です。2002年に発表され、「メスを使わない、切らない、縫合の傷跡ができない」方法として話題になりました。狭い範囲の植毛で少量のドナーで済むケースや、ドナー部の皮膚の緊張が強くて余裕のないケースなどには便利な方法です。 しかし、大量のドナーが必要となる広範囲な植毛には不向きです。一度に多量のドナーをFUE法で採取するためには、坊主刈りにしなければならず、植毛後のヘアスタイルに困ることがあります。また、くり抜くときに皮下の毛根を傷つけないようにするためには、高度の技術が必要で、ドナー採取に長時間かかります。FUE法でドナーを採取した後の頭皮には、1ミリ大の白くて丸い米粒状の傷痕が多数残るので、坊主刈りにするとかなり目立ちます。

自動植毛機

ドナーの株分けや植え込みを機械によって行う方法です。人手が少なくて済む上、手がける医師の技量を問わずに植毛が行えます。しかし、一本一本異なる毛根の向きを無視して機械的に裁断して切り分けるため、ドナー毛根の損傷が多くなりがちです。 また、移植後の頭髪にでこぼこの傷痕が残る、生え際が不自然になりがち、移植密度を高くすることが困難などのデメリットがあります。自毛植毛が盛んなアメリカでは、きれいな仕上がりの自毛植毛を実現するためには、熟練したスタッフが手作業で行う方法が最も評価されています。

人工毛植毛

人工毛植毛とは、合成繊維で作った毛を頭皮に植え込む増毛法で、素材は人体に馴染みやすいポリエステルやナイロンなどです。そして、表面には人体の頭髪にあるキューティクルと似た構造を作ることで、自然に近い艶を出し、黒、グレー、茶色などさまざまな色を組み合わせ、できる限り本人の頭髪と違和感のないように仕上げています。 日本では自毛植毛よりもずっと認知度が高く、植毛は人工毛を使うものだと思っている方も少なくありません。 人工毛のメリットは、植毛する毛の長さも量も自在に作れることです。希望通りに髪の量を増やせ、植毛直後からボリュームアップを実感できます。 しかし、人工毛植毛にはさまざまなデメリットがあります。人間の体には、体内への侵入を図る細菌やウィルスなどの異物を排除するための免疫システムが備わっています。 リンパ球などの免疫担当細胞は人工毛を病原体と同じ異物と認識し、体外に追い出そうと働きます。その結果、せっかく植毛した人工毛が少しずつ抜け落ち、一年後には6~7割も脱毛してしまうことになります。抜けた分を補うには、年に1、2回のペースで植毛を繰り返さなければなりません。
━「医療で治す薄毛の悩み」より引用
■コラム著者紹介
医学博士/ 柳生邦良 <やぎゅうくによし> 銀座HSクリニック総院長(現職) 東京大学医学部卒業。医学博士。 国際毛髪外科学会(ISHRS)理事、アジア毛髪外科医学会(AAHRS)理事、アメリカ毛髪外科(ABHRS)専門医、日本臨床毛髪学会理事。 植毛に関するすぐれた研究業績に対して、日本臨床毛髪学会から「第1回平山賞」を受賞。