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薄毛・抜け毛研究所
2025.08.28
- 豆知識
【医療監修あり】猛暑×紫外線で髪もダメージ!?夏の切れ毛対策
2025年の夏も「記録的猛暑」が続いています。
強烈な紫外線は、肌だけでなく「髪と頭皮」にも深刻なダメージを与える大敵です。夏場に気になる「切れ毛」「パサつき」「薄毛リスク」は、実は紫外線ダメージの蓄積が大きな要因。
紫外線は髪の表面だけでなく内部構造も壊し、毛包や頭皮環境にまでダメージを及ぼします。
この記事では、紫外線による髪と頭皮へのダメージメカニズムから、今日からできる具体的な予防策・ケア方法までをわかりやすく解説します。
「夏になると髪がバサバサになる」「切れ毛が増えて悩んでいる」という方は、ぜひチェックしてみてください。
紫外線が切れ毛を引き起こすメカニズムとは?

夏場に増える「切れ毛」や「パサつき」の大きな原因の一つが紫外線ダメージです。
髪はもともと紫外線に対する防御機能が弱く、強い日差しを浴びることでさまざまなヘアダメージが生じます。
紫外線によるヘアダメージで問題になるのは、表面だけでなく内部構造や毛包環境までダメージを与えること。
ここでは紫外線が切れ毛を引き起こす仕組みを具体的に解説します。
キューティクルの破壊

参照:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/48/4/48_271/_pdf
髪の一番外側を覆う「キューティクル」はウロコ状の構造で水分を閉じ込め、外的刺激から内部を守るバリアの役割を果たしています。
しかし、紫外線はこのキューティクルを直接破壊し、めくれ上がりや剥離を引き起こします。バリア機能が低下すると髪内部の水分が保持できなくなり、パサつきやゴワつきが進行します。切れ毛や枝毛といった物理的な断裂を招くのです。
上の写真は、通常のバージン毛とブリーチ毛それぞれに紫外線を照射した後の内部構造の変化を示したものです。どちらも紫外線照射後には空洞化が起きているのが確認できます。
タンパク質変性
髪の主成分はケラチンというタンパク質です。
紫外線、特にUV-Bはこのケラチンを損傷させる性質があり、髪内部のタンパク質構造を壊してしまいます。結果として髪のハリやコシ、弾力が失われ、絡まりやすくなったり切れ毛が生じやすい脆い状態に。
健康な髪を保つためのタンパク質ネットワークが分解されることで、見た目のツヤや滑らかさも低下します。
酸化ストレス

参照:https://egrant.co.jp/hair/uv-care/
紫外線を浴びると、頭皮や髪内部でフリーラジカル(活性酸素)が発生します。
これが髪のタンパク質を攻撃してダメージを加速。
酸化ダメージは目に見えにくいものの、継続的に進むことで、髪の色素を分解して褪色させたり、手触りをザラつかせたりする要因になります。
毛包へのダメージ
髪の生まれる場所である「毛包」も紫外線ダメージの影響を受けます。 紫外線を浴び続けることで頭皮が炎症を起こし、毛包幹細胞や毛乳頭細胞がダメージを受けると、正常な毛周期が乱れ、成長期が短縮します。 こうした毛包ダメージは切れ毛だけでなく、薄毛や抜け毛のリスクを長期的に高める要因になります。
紫外線で「頭皮も日焼け」する

夏場の強烈な紫外線は、髪だけでなく「頭皮」そのものにもダメージを与えます。頭皮は顔や腕などと同じ皮膚組織ですが、髪で覆われていて紫外線対策を油断しがち。
分け目やつむじなど髪の密度が低い部分は、体の一番上にある頭部だからこそ直射日光を受けやすいのです。なんとその紫外線暴露量は、顔の2倍以上なのだとか。
頭皮の日焼けは単なる一時的な赤みやかゆみだけではなく、毛根や毛包環境にも影響を及ぼします。
頭皮の日焼け症状
頭皮が日焼けすると、まず現れるのが赤みやヒリヒリ感。顔の日焼けと同様に、紫外線によって皮膚表面の角質層が損傷し、バリア機能が弱まってしまいます。
さらに症状が進むと皮むけやかゆみが起こり、乾燥が悪化。頭皮は皮脂腺が多いため、一見うるおっているように感じても、バリア機能が失われた状態では外部刺激に非常に弱くなり、かゆみや炎症を引き起こしやすくなります。
炎症による毛根ダメージ
頭皮の日焼けが引き起こす最大の問題は「炎症」です。炎症状態が続くと、毛包内の幹細胞や毛乳頭細胞など、髪の成長に欠かせない細胞がダメージを受けます。
炎症によるダメージが蓄積すると、毛周期(髪の毛が生え変わるサイクル)にも影響を与えることがあります。毛周期のサイクルの成長期が短くなったり、休止期に移行してしまうこともあります。
慢性的な頭皮ダメージ
日焼けによる炎症が慢性化すると、頭皮の弾力性が失われて硬くなります。硬化した頭皮は血流が悪くなり、毛根への酸素や栄養供給が滞ることに。
血流不良は毛乳頭細胞の働きを低下させ、発毛環境の悪化へとつながってしまいます。さらに、乾燥や炎症が繰り返されることで、頭皮バリア機能はますます脆弱化し、外的刺激や紫外線に対する防御力が低下。
結果として、時を重ねるごとにダメージが蓄積しやすくなることもあるのです。
夏の紫外線による「隠れ薄毛リスク」に注意

夏は強い紫外線や高温多湿による汗、皮脂分泌の増加など、頭皮にとってはつらい季節です。
「紫外線=日焼け」というイメージはあっても、実は紫外線が進行性の脱毛症を悪化させる可能性があることは、まだあまり知られていません。
特に、もともと薄毛の素因がある人は、紫外線ダメージが抜け毛を加速させる「隠れ薄毛リスク」に注意が必要です。
紫外線ダメージが進行性脱毛を加速?
実は紫外線が直接「薄毛や抜け毛」を進行させているわけではありません。
しかし、紫外線による「蓄積ダメージ」が、より脱毛症状を進行させることがわかっています。
つまり、紫外線によるダメージが「間接的」に薄毛に影響を及ぼすということです。
AGA(男性型脱毛症)、FAGA(女性型脱毛症)は、ホルモンや遺伝の影響で毛包の働きが弱まり、髪が細く短くなっていく病態です。このミニチュア化した毛包は非常に繊細で、外的ダメージへの耐性が低いことがわかっています。
慢性的な紫外線暴露は頭皮の炎症を助長し、頭皮が硬くなったり血流に影響を及ぼしたりする可能性があります。
結果として、AGAやFAGAの進行を加速させ、治療の効果を妨げるリスクも考えられます。
育毛剤や内服治療を受けている人ほど、紫外線ケアを怠らないことが大切です。
皮脂酸化と炎症

参照:https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/10820
紫外線は頭皮の「皮脂」を酸化させることがわかっています。
頭皮は顔より皮脂腺が発達しており、特に夏場は皮脂分泌が活発になります。
紫外線はこの皮脂を酸化し、過酸化脂質を生成。これが頭皮に炎症を引き起こす一因になり、バリア機能を破壊します。
皮脂の変性による二次的なトラブルがフケ、かゆみ、湿疹などを引き起こす可能性もあり、頭皮環境を悪化させる要因の一つになります。
紫外線の種類と特徴

参照:https://www.ogawa-1.com/sigaisen.html
紫外線と言っても、その種類によって波長や肌・髪への影響が異なります。 紫外線対策を効果的に行うためには、まずその特性を正しく理解することが大切です。 紫外線は大きく分けて「UV-A」「UV-B」「UV-C」の3種類があります。 このうち私たちの生活環境に届くのはUV-AとUV-B。UV-Cは大気層(オゾン層)でほとんど吸収され、地表には届きません。 ●UV-A(波長315〜400nm) UV-Aは波長が長く、雲や窓ガラスも透過しやすいのが特徴です。髪の内部の寒中物質にまで届くので、髪の主成分のタンパク質がダメージを受け、髪の柔軟性が低下します。また皮膚や頭皮の深い部分まで到達し、コラーゲンを破壊するなどの「真皮ダメージ」を引き起こします。長期的には光老化(しわ・たるみ)を促進する要因にもなります。髪に対しては内部のメラニンやタンパク質にダメージを与え、褪色やパサつきの原因になります。 ●UV-B(波長280〜315nm) 波長が短くエネルギーが強いため、肌表面に直接的な炎症(日焼け、サンバーン)を引き起こします。夏は特にUV-Bの量が増え、頭皮の日焼けリスクが高まります。頭皮の炎症は毛包へのダメージや、毛根幹細胞の機能低下を招き、切れ毛・抜け毛を増やす要因になります。 ●UV-C(波長100〜280nm) 本来はオゾン層でほぼ吸収され、地表には届きません。ただしオゾン層破壊の影響が進めば将来的なリスクとしても注視されています。 夏の強烈な日差しではUV-Bによる急性のダメージと、UV-Aによる慢性的なダメージが同時進行で髪や頭皮に襲いかかります。髪の切れ毛や頭皮の炎症を防ぐには、この2種類の紫外線を意識したケアが重要です。
紫外線によるダメージを防ぐには?

夏の紫外線から髪と頭皮を守るには、意識的な対策が重要です。
ここではすぐに実践できる具体的な予防法を紹介します。
髪の紫外線対策
●帽子、日傘など物理的防御
最もシンプルで確実な方法が「直射日光を避ける」こと。通気性の良い帽子を被る、UVカット加工の日傘を使うなど、外出時は必ず紫外線を遮る工夫をしましょう。頭皮だけでなく、髪全体を紫外線から守る効果的な手段です。
●UVカットスプレー、ヘアオイル、ローション
市販のヘア用UVカットスプレーや紫外線防止成分配合のヘアオイル・ローションは、外出前にサッとつけるだけで手軽に紫外線をガードできます。日中の塗り直しも簡単です。
●洗い流さないトリートメントやヘアスプレーで保湿・保護
紫外線で乾燥しやすくなる髪を保湿し、キューティクルをコーティング。ダメージを受けにくい髪に整えます。特に夏は保湿重視のアウトバストリートメントがおすすめです。
●塗ることができる範囲に日焼け止めを使う
生え際や分け目など、肌が露出しやすい部分は日焼け止めを薄く塗ってカバーするのも有効です。赤みや皮むけなどの頭皮トラブルを防ぎます。
●髪の分け目を工夫
分け目は紫外線が集中する「日焼けポイント」。分け目を定期的に変えたり、ジグザグ分けにすることでダメージを分散できます。
日常的な生活習慣でできるケア
●規則正しい食事と睡眠
体の回復力は頭皮や髪の修復にも直結します。タンパク質、ビタミン、ミネラルを意識したバランスの良い食事、十分な睡眠を確保しましょう。
●血流を促す頭皮マッサージ
紫外線ダメージを受けた頭皮は硬くなりやすく、血流が滞ると栄養供給が不足します。シャンプー中やドライヤー前のマッサージで柔軟性を保ち、健康な発毛環境をサポートしましょう。
●適度な運動
全身の血流促進は頭皮の健康にもプラス。ウォーキングやストレッチなど、無理なく続けられる運動習慣を心がけることが、紫外線ダメージからの回復力を高めます
専門家が教える紫外線対策は「早めの対応」

紫外線による切れ毛や頭皮ダメージは、気づかないうちにじわじわと進行するのが怖いポイントです。
医師がすすめるのは、「紫外線量が増える前からの備え」と「早期対応」。ここではそのポイントを具体的に紹介します。
- ダメージを「蓄積させない」意識
紫外線ダメージは、日々の小さな蓄積が大きなトラブルの原因になります。短時間の外出でも油断せず、帽子や日傘、UVカットスプレーを活用しましょう。 - 紫外線量が増える前から対策を
春から初夏にかけて紫外線量は急増します。「夏本番になってから」では遅いことも。紫外線が強くなる季節を意識して、早めにケア習慣を始めることが大切です。
専門家からも「ダメージが進んでから治すより、最初から防ぐ意識が大事」とのアドバイスをよく耳にします。紫外線ダメージは予防こそが最大の治療です。
切れ毛・抜け毛が増えたときは?
●セルフケアで改善しないなら美容師などの専門家へ相談
紫外線ダメージによる頭皮トラブルやヘアダメージは、自宅ケアで改善する場合もありますが、「抜け毛が増えた」「切れ毛や枝毛がひどい」「フケがおさまらない」といった場合は早めに専門家への相談を検討しましょう。
●皮膚科や毛髪専門クリニックへ
「髪が急激に薄くなった」「頭皮のかゆみや赤みがひどい」といった場合は皮膚科やAGA/FAGA専門クリニックに相談するのも良いでしょう。頭皮の状態を医師が診断し、必要に応じて炎症を抑える外用薬や、脱毛症治療薬、育毛治療など専門的なケアを指導してくれます。
まとめ

夏の紫外線は、私たちが思っている以上に「髪と頭皮」にダメージを与えるものです。
その影響は表面的なパサつきだけではなく、髪の内部構造や頭皮の毛包にまで及び、切れ毛・枝毛の増加、薄毛リスクの進行を助長します。
だからこそ大切なのは、「気づいたときにはもう遅い」 という意識を持つこと。
紫外線ケアは春先からの早めの対策がカギであり、帽子や日傘などの物理的防御、UVカットスプレーやアウトバストリートメントなどのホームケア、そして頭皮ケアや管理をセットで行うことが大切です。
「紫外線ダメージは予防こそ最大の治療」。
しっかり備えて、健康で美しい髪と頭皮を夏の間もキープしていきましょう。
参考:毛髪の紫外線ダメージ-評価指標とダメージケア-|渡辺智子 株式会社資生堂リサーチセンター
監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。
同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。