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薄毛・抜け毛研究所
2026.01.21
毛包幹細胞が“眠る”と毛根はどうなる?発毛メカニズムをわかりやすく解説
私たちの髪は毎日自然に伸び、一定の周期で生え変わっています。ですが「なぜ髪は生えるのか?」「毛根のどこで新しい髪が作られているのか?」といった仕組みを正しく理解している人は多くありません。
髪の根本である“毛根”や“毛包幹細胞”には、髪の成長を支える緻密なメカニズムが備わっているのです。この記事では毛根の構造から毛包幹細胞の働き、発毛のスイッチが入る研究を含めて発毛のメカニズムをわかりやすく解説します。
毛根とは?髪が生える“根っこ”の仕組み

参照:https://www.demi.nicca.co.jp/salonsupport/beauty2_detail_01.html
髪の毛は、私たちの頭皮から生えている“毛”の部分だけで構成されているものではありません。目に見えない頭皮の下に、その土台となる「毛根(もうこん)」があります。
毛根は、髪の毛を作り出す“生産工場”のような役割。見えない部分の働きで美しい髪の健康を維持しているのです。
毛根の構造:毛乳頭・毛母細胞・毛包とは?
毛根は頭皮の下、毛穴の奥に存在しており、髪の根っこを形成しています。毛根の内部にある髪の毛を生み出す組織と、成長した髪の維持組織でもある毛根の構造について解説します。
①毛乳頭(もうにゅうとう)
毛根の深部にある、栄養の供給拠点です。毛細血管と隣り合っていて、髪の成長に必要な酸素や栄養素を取り込んで届ける役割を担います。
②毛母細胞(もうぼさいぼう)
毛乳頭のすぐ上にある細胞で、髪を実際に生み出している場所です。この細胞が分裂・増殖を繰り返すことで髪の毛を形成します。
③毛包(もうほう)
毛根全体を包み込む鞘(さや)のような構造で、毛乳頭や毛母細胞を外部の刺激から守ります。毛の成長にかかわる細胞を守るだけではなく、髪の毛が容易に抜け落ちないように固定する役割もしています。
髪1本1本がしっかりと育つためには、毛乳頭・毛母細胞・毛包がサポートし合うことで成長が維持されているのです。
毛包幹細胞とは?発毛にどうかかわる?

参照:https://www.demi.nicca.co.jp/salonsupport/beauty2_detail_01.html
毛包幹細胞とは、毛を生み出す「毛包」のなかの「バルジ領域」に存在します。バルジ領域とは、毛髪の成長と再生を担う幹細胞です。他の部位に存在する幹細胞と同様に「自己複製能」と「多分化能」を備え、髪の成長を支える毛母細胞などに分化する能力を持ちます。
毛包幹細胞の存在場所は「バルジ領域」
毛包幹細胞は、頭皮の表皮(皮膚の最も外側の層)と、髪の根本である毛包(もうほう)の境目にあたる「バルジ領域」と呼ばれる場所に存在しています。毛包幹細胞は新しい毛を生み出すだけではなく、損傷した皮膚の再生機能があることもわかってきました。
毛包幹細胞と発毛のメカニズムとの関係性
髪は、ヘアサイクルの「成長期」に毛母細胞が活発に分裂・増殖することで伸びていきます。毛包幹細胞はこのヘアサイクルのコントロールも担っているのです。
毛母細胞が毛乳頭からの栄養や情報を受けて増殖し、細胞が角化して硬くなり束になることで髪の毛となり、頭皮の外に向かって成長すると「髪が伸びる」現象が起こります。
毛包幹細胞が“眠る”とどうなる?

参照:https://hand-webshop.com/shop/information/column-20250321-01?srsltid=AfmBOooZsMWwELK3X3QDoaAw4hZRozfkFAuXK2p89eJ2BLOouKhULzXY
人間の髪は、常にすべての毛穴から「生えている」わけではありません。髪の元となる毛包幹細胞は、一定のタイミングで“眠る”ことがあります。毛包幹細胞が決められたサイクルよりも長く眠っている状態が続くと、脱毛が進行したり、薄毛症状が出ることもあるでしょう。
幹細胞の「休止期」とは?
毛包幹細胞は、髪の成長サイクル(毛周期)のなかで活動を「オン/オフ」しています。この“オフ”の状態が「休止期」です。毛周期は成長期→退行期→休止期の3段階からなります。
休止期では毛包幹細胞の働きが一時的にストップするので細胞分裂もなされずに、髪の成長がストップします。
休止期間は本来一時的なもので、期間はおよそ3~4か月が一般的です。休止期は一定期間を経て再び毛包幹細胞が活性化し、新たな髪が生えはじめる成長期に移行します。
正常な毛周期でも“休眠状態”になる
ヘアサイクルの休止期は誰にでも起こる自然な現象です。
人間の場合、全ての毛包が同時に休止するわけではなく、毛穴ごとに毛周期のサイクルがズレているため、見た目の髪のボリュームには影響が出にくいようになっています。
成長期の後に退行期→休止期と呼ばれる期間に入り、髪の毛は自然に脱落します。一般的なヘアサイクルは以下です。
| 成長期 | 約2〜7年 | 毛母細胞が活発に分裂・増殖し、毛幹(髪の毛)を押し出すように伸ばす。髪は次第に長く、太く成長する。 |
| 退行期 | 約2〜3週間 | 毛母細胞の分裂が停止し、毛乳頭と毛母細胞の位置が離れる。毛包は縮小し、次の休止期への準備をはじめる。 |
| 休止期 | 約2〜3カ月 | 毛乳頭が活動を休止し、毛髪は自然に抜け落ちる。新しい毛包が再形成され、次の成長期への移行が始まる。 |
何らかの異常により休止期が長引くこともある
ストレスや加齢、ホルモンバランスの乱れなどにより、休止期が長引いてしまうと徐々に髪の毛の太さや長さが出にくくなります。きちんと成長しないまま退行期を迎え、やがて休止期の毛も増えてくると、髪の毛の脱毛症状が目立ったり薄毛症状が生じたりするのです。
毛包幹細胞の活動が低下し続けることで新しい毛母細胞が供給されず、結果として髪が生えない「発毛停止状態」に陥ります。さらに休止状態が長期間続くと毛根自体も徐々に縮小してしまい、やがて完全に髪の毛を生やす機能を失ってしまうこともあるのです。
“働かない毛根”が増えると、抜け毛が増える一方で新たな髪が生えてこなくなります。結果として髪全体の密度が低下していくのです。
参照:【医療監修あり】髪が伸びるのが早くなるのは問題?仕組みと原因を解説
毛包幹細胞を目覚めさせる方法は?

「毛包幹細胞が眠っている」=「発毛のスイッチが切れている状態」。
一般的には休止期が終わると自然に成長期に入りますが、なかには何らかの要因でスムーズに成長期へと移行しない場合もあります。止まってしまったスイッチをもう一度オンにするには、日常生活の見直しや医学的な治療の両面からアプローチすることを検討しましょう。
生活習慣によるアプローチ
毛包幹細胞の働きは、日々の生活習慣の影響を受けることもあります。セルフケアとして手軽に取り入れられる発毛習慣について紹介しましょう。
●十分な睡眠:幹細胞は夜間に活発に働くため、6〜8時間の質の良い睡眠が欠かせません。
●ストレス管理:慢性的なストレスはホルモンバランスを乱し、毛包幹細胞の働きを抑制してしまいます。
●バランスの取れた食事:たんぱく質、鉄分、亜鉛、ビタミンB群など、発毛に必要な栄養素をしっかり摂取することが大切です。
●血流改善:運動や頭皮マッサージなどで頭皮の血行を促すと、毛包に酸素と栄養が届きやすくなります。
日常生活の注意点としては、慢性的な炎症は毛包幹細胞を萎縮させる原因になります。シャンプー・整髪料の刺激、紫外線、皮脂の酸化など、頭皮に炎症を起こすリスク要因を減らす工夫も重要です。
医療・研究的アプローチ
医学の進歩により、毛包幹細胞の活性を高めるための治療法も登場しています。とくに注目されているのが以下の3つの方法です。
成長因子注入療法(FGF・EGF)
「FGF(線維芽細胞増殖因子)」「EGF(上皮成長因子)」といった発毛を促す成長因子を、頭皮に直接注入する治療法です。各種成長因子の成分は毛包幹細胞の分化・増殖を促進する働きがあり、すでに一定の効果が認められています。近年は男女問わず人気のある育毛治療法です。(2025年11月現在)
再生医療技術(S-DSCなど)
自分の細胞から抽出した再生因子を使って、毛包幹細胞の機能を再起動させる再生医療的アプローチも注目されています。S-DSC(Scalp-Derived Stem Cell)とは、頭皮から採取した幹細胞を培養し、患者さんご自身の頭皮に注入する新しい技術です。細胞レベルで毛包環境の改善を促す可能性があると期待されていて、実際に大学病院等ではすでに治療として取り入れられています。(※2025年11月現在は自費診療)
「S-DSC®」についての詳しい記事はこちらを参考にしてください。
参照:【医療監修あり】毛髪再生医療の最前線!いつどんな形で実用化されていく?
幹細胞培養上清液治療
幹細胞そのものではなく、幹細胞が分泌する成分を含む「幹細胞培養上清液」を利用する治療法です。
幹細胞そのものが含まれているわけではありませんが、幹細胞を培養する過程で培養液内に幹細胞が放出したサイトカインや成長因子などが含まれています。
再生医療での大きな課題であった幹細胞を抽出・培養する手間がないので、他の再生医療に対して比較的安価に治療が勧められる点が注目されている治療法です。
毛包幹細胞が再活性化することで期待できる効果

毛包幹細胞が再活性化すると、薄毛や抜け毛の根本的な改善につながることが期待できます。育毛や増毛を考えたとき、毛包幹細胞の休止期スイッチをいかにして入れないかが課題となりそうです。
毛包幹細胞が再活性化することで以下のような育毛につながる効果が期待できます。
●髪の太さ・密度の回復
休止していた毛包が再び成長期に入り、太くしっかりとした毛髪が生えやすくなります。全体のボリューム感も改善され、若々しい見た目印象へとつながります。
●発毛サイクルの正常化
毛周期(ヘアサイクル)のバランスが整い、成長期が伸びることで抜けにくい健康な髪が育ちやすくなります。抜け毛の量が減ることで、日常生活のストレスや不安の軽減が期待できます。
●頭皮環境の改善
幹細胞の働きにより血行が促進され、炎症や乾燥、皮脂の過剰分泌などが改善されやすくなります。頭皮環境が整うことで髪の成長に適した健やかな頭皮状態が維持されます。
毛包幹細胞の休止スイッチ「FGF18」
毛髪の成長サイクルには「休止期」があり、この期間に毛包幹細胞は活動を停止します。産業技術総合研究所の研究により、FGF18というシグナル分子がこの休止期を維持する重要な因子であることが明らかになりました。
実験でFGF18を欠損させたマウスでは、休止期が短縮され、毛の再生が頻繁に起こることが確認されました。つまり、FGF18の働きを抑えることで、眠っている毛包幹細胞を活性化し、発毛を促す可能性があるのです。
今後、脱毛症治療や再生医療への応用が期待されます。
まとめ

髪の毛の健やかな成長は、毛根や毛包幹細胞がどれだけ活発に働けるかによって変わるといえるでしょう。毛包幹細胞が休眠すると発毛は止まり、逆に目覚めれば再び髪の成長がはじまります。
近年では、FGF18などのシグナル分子によってこの“休止スイッチ”を制御できる可能性も示され、再生医療の分野でも大きな注目を集めています。(2025年11月現在)
毛包幹細胞の働きを守り活性化を促すことこそが、薄毛や抜け毛を防ぎ、美しい髪を取り戻すための第一歩といえそうです。