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毛・抜け毛研究所

2025.10.07

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【医療監修あり】インナーキュアを知らずに令和のヘアケアは語れない

これまでの髪のダメージケアは「しっとり」「ツヤ」「指通り」など、見た目や手触りの仕上がりを重視するものがほとんどでした。

しかし、令和のヘアケアは違います。

表面だけを整える時代は終わり、“髪本来の健康を内側から育てる”という新たな価値観が注目されています。

注目されているキーワードは「インナーキュア」。
髪の内部構造は紫外線、薬剤、熱処理などによって分子レベルで崩壊しています。

新しいケア概念は、壊れてしまった髪の分子構造を“根本から補修”することにフォーカスしたアプローチ。今までの表面をコーティングするだけのケアでは、髪本来の美しさは取り戻せません。

この記事ではインナーキュアの定義や仕組み、進化した補修成分、そして専門家がすすめるケアのポイントまでを解説します。

「令和のヘアケアを知りたい」「髪を芯から健康にしたい」という人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

髪の構造にアプローチする新時代ケア“インナーキュア”とは?

「インナーキュア」という言葉を耳にしたことはありますか?

近年、ヘアケア業界では表面を一時的にコーティングするだけでなく、髪の内部を「分子レベル」で補修する新しいアプローチが注目されています。これこそが「インナーキュア」です。

髪のダメージは紫外線、熱、カラーやパーマなどのケミカル施術、日常的に起こる摩擦などによってキューティクルが剥がれ、内部のタンパク質や脂質が流出することで進行します。

このとき起きるのは単なる表面の傷だけではなく、髪内部の構造変化=分子レベルでの損傷です。

従来のケアでは、表面をコーティングして手触りを良くする「アウターケア」が中心でしたが、インナーキュアはダメージを受けた髪内部を分子レベルで補修し、健康な構造を再生することを目指します。

インナーキュアの定義

インナーキュアとは「表面だけでなく髪の内部(インナー)に働きかけて、ダメージを分子レベルで補修する」という新しいケア概念です。

例えば、髪はケラチンというタンパク質が主成分ですが、ケラチンの不足や損傷が進むとさまざまなトラブルが生じやすくなります。

インナーキュアでは、分子サイズを小さくした成分を髪の内部まで浸透させ、補修することを狙います。

「表面を一時的に整えるだけのケア」ではなく、「分子レベルで再構築する」。それがインナーキュアの真髄です。

従来の家庭用ヘアケアは「アウターケア」が主流だった

従来のヘアケアは主にシリコンなどで髪表面をコーティングし、手触りの良さやツヤを出す「アウターケア」が中心でした。もちろん即効性や手軽さは魅力ですが、ダメージの根本的な修復は難しいのが現実です。

キューティクルの内側まで浸透するインナーキュアは、これまで主に美容室のサロントリートメントで行われてきた「内部補修」にあたります。

髪のダメージは分子レベルで進行する

「髪が傷む」と聞くと手触りが悪い、ゴワゴワする、パサつく…など表面的な変化をイメージしがちです。

しかし実際には、髪のダメージはキューティクルの内部から進行し、内部構造そのものが変質してしまうのが問題なのです。

日々のヘアケアで「表面を整える」だけでは、この内部ダメージを根本から修復することはできません。

では、髪の内部ではどのようなダメージが起きているのでしょうか?

キューティクル損傷のメカニズム

髪の表面を覆う「キューティクル」は、魚のうろこのように何層も重なったバリア構造で、内部の水分やタンパク質を閉じ込める役割を果たします。

しかし、紫外線や薬剤、熱処理、ブラッシングなどの物理的摩擦によって、キューティクルは剥がれやすくなります。バリア機能が低下することで内部の水分が蒸散しやすくなり、髪は乾燥・脆弱化します。

つまり、キューティクルの損傷は「見た目のツヤがなくなる」だけでなく、内部ダメージを加速させる入口となるのです。

コルテックス内部のタンパク質変性

髪の主成分はケラチンというタンパク質です。
髪の太さ、ハリ、コシなどの髪の健やかさはタンパク質が規則正しく並ぶことで保たれています。

ところが、ブリーチやパーマなどの化学薬剤処理やスタイリング時の熱処理などによって、髪内部のタンパク質は分子レベルで失われてしまいます。

内部のタンパク質が流出することでハリ・コシが失われ、切れ毛や枝毛が発生しやすくなるのです。

CMC層の脂質流出

さらに重要なのが「CMC層」のダメージです。
CMC(細胞膜複合体)はキューティクルやコルテックスの細胞同士をつなぐ“接着剤”のような役割を持っています。

CMCの構成成分は、タンパク質47%、脂質53%で脂質成分がメインです。

このCMC層が紫外線や薬剤ダメージで壊れると脂質が流出し、髪の柔軟性やまとまりが低下します。水分保持能力も落ち、パサつきや広がりの原因になります。

つまり、髪のダメージは「キューティクルがめくれる」だけでなく、「内部のタンパク質構造の変性」「細胞間の脂質が流出」という分子レベルの変化を伴っています。

だからこそ、分子レベルでの補修=インナーキュアが必要とされるのです。

インナーキュアが注目される理由

近年、ヘアケアでは「インナーキュア(内側からの補修)」というコンセプトが強調されるようになりました。

従来のように「表面をコーティングしてツヤを出す」ケアだけでは、現代のヘアダメージを十分にカバーできなくなっているからといえそうです。ここでは、その背景を詳しく解説します。

ケミカル施術の増加

一昔前と比べてヘアカラーやブリーチ、パーマなどのケミカル施術は身近になりました。特にブリーチを使ったハイトーンカラーは、ファッション感覚で楽しむ人が増えています。

しかし、ヘアカラーやブリーチ、パーマなどの薬剤処理は髪に大きな負担をかけ、キューティクルの損傷や内部タンパク質の変性を引き起こします。

繰り返すことでダメージは蓄積し、髪は弾力を失い、切れ毛やパサつきが目立つようになります。そのため、単に表面をコートするだけではなく、薬剤ダメージで分子レベルで壊れた構造を補修・再構築するケア=インナーキュアが必要とされるようになっているのです。

令和時代の美容トレンド

「健康美」や「自分らしさ」を大切にする価値観は、令和時代の美容トレンドを象徴するキーワードです。単なる「派手さ」「一時的な美しさ」ではなく、「健康的で芯から美しい髪」を求める人も少なくありません。

ヘアケアとしても「土台を整える」ことが注目されつつあり「ダメージレスカラー」「ケアブリーチ」「酸性ストレート」など、ダメージを最小限に抑えるメニューが進化。

また、ホームケアも「インナーキュア」を意識し、髪内部の結合や脂質を補修する成分を配合したアイテムも登場しています。

健康的な髪は、単に手触りが良いだけでなく、カラーの持ち、スタイリングの再現性など自分らしいヘアデザインの幅を広げます。

インナーキュア成分の進化と分子設計

インナーキュアが注目される背景には、成分そのものの「分子レベル」への加工技術の進化があります。表面を覆うだけではなく、髪の内部に分子レベルで浸透・補修することを目的に、各種成分が開発・応用されてきました。

ここでは2025年現在注目されているインナーキュア成分を解説します。

ミルクシスルペプチド

髪のタンパク質構造を形成するアミノ酸。その中でも「ペプチド」は髪の毛の補修成分として以前から注目されている成分の一つです。

髪の内部補修を「家庭用ヘアケア成分に」というコンセプトで株式会社マツキヨココカラ&カンパニーから発売された「MQURE(エムキュア)モレキュラーリペアヘアセラム」には「ミルクシスルペプチド」が配合されています。

これは、従来のペプチド成分のサイズと比較すると1/8程度の大きさに加工されていて分子レベルで壊れた髪の構造を補修する成分として注目を浴びています。

ペプチドを小さい分子量で髪内部へ浸透させ、損傷したケラチンを補修します。髪内部への浸透率が向上したことで、様々な髪の毛の悩みにアプローチすることが期待できるでしょう。

分子レベルでの修復が進むことで、髪はハリとコシを取り戻し、スタイリングのしやすさも改善します。ダメージでペタっと潰れがちな髪でも、根元から立ち上げるふんわりとした仕上がりが期待できます。

専門家が語るインナーキュアの重要性

かねてから美容師やヘアケアの専門家が口を揃えておすすめする「インナーキュア」という概念。髪のダメージを“表面のツヤ”で一時的に整えるだけではなく、分子レベルでの補修を目指す重要性が改めて注目されています。

髪のダメージは日々蓄積する

髪の傷みは一度起こると自己修復ができないという大きな特徴を持ちます。紫外線やカラー、パーマ、ドライヤーやアイロンの熱など、分子レベルで内部構造が損傷していく原因は日々の小さなダメージの蓄積もあるでしょう。

そのため、表面をコーティングするだけの対処療法ではなく、髪内部に働きかけるケアを早期から行うことが将来の髪の美しさを守るカギとなりそうです。

頭皮ケアとの相乗効果

もう一つ大事なのが「頭皮ケアとのセット使い」です。どれだけ髪に補修成分を入れても、髪を生み出す頭皮環境が健康でなければ、根本的な髪質の美しさは得られません。

健康な頭皮は血流が良く、毛母細胞や毛包幹細胞の働きを支え、ハリ・コシのある髪を育てます。頭皮マッサージや頭皮用美容液など、頭皮ケアを同時に行うことでインナーキュアの効果を最大化できるでしょう。

「頭皮と髪は一体」という視点が、令和時代のヘアケアの基本。未来の髪を美しく保つために、髪の内部補修と頭皮環境の改善を同時に意識することが大切です。

まとめ

「インナーキュア」は、これまでの表面のコーティング中心のケアから一歩進んだ、髪を分子レベルで補修するアプローチです。ヘアダメージは髪内部のタンパク質や脂質を失い、構造を変質させる毎日のダメージの蓄積です。

だからこそ表面を一時的に整えるのではなく、髪の内部まで浸透する成分で再構築するケアがこれからの時代には欠かせません。

さらに美しい髪を育むためには、健康な頭皮環境も必須。インナーキュアは単独で完結するものではなく、頭皮ケアと組み合わせて初めてその真価を発揮するでしょう。

毎日のヘアケアを、「分子レベルで髪を整える」という新しい視点でアップデートしてみませんか?令和の最新ケアで健やかで美しい髪を育てましょう。
監修者:繁和泉

看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。
同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。
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