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毛・抜け毛研究所

2026.03.18

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人間の髪は「引っ張られて」伸びていた|最新研究が覆した髪の成長の常識

「髪の毛は毛根の奥で細胞が分裂し、その数が増えることで下から“押し出され”成長するる。」長年にわたって医学・生物学の分野で信じられてきた「髪の成長」の常識。

2025年の最新の研究により「細胞分裂のみによって髪は伸びる」という前提が大きく揺らぎます。

ヒトの毛包を生きたまま観察した結果、髪の毛は単に“押されて”伸びているのではなく、毛包内部で生じる「引っ張られる力(牽引力)」も成長に関与していることがわかったのです。

今回の研究による発見は、髪の成長を「細胞の数」だけで説明してきた従来の考え方を見直すだけでなく、今後の育毛研究や治療の方向性にも影響を与えるかもしれません。

この記事では「髪の毛の成長には引っ張られる力が働いている」という最新の研究結果の内容と、今後の育毛治療につながる可能性をわかりやすく解説していきます。

髪の毛の成長は「引っ張られる」力が関わっていた

長年、髪の毛は「下から新しい細胞が増えて押し出されることで伸びる」と考えられてきました。

2025年に「NatureCommunications」に掲載された最新研究によると「髪の毛の成長には「引っ張られている物理的な力」が関わっている」という発見がなされ話題になっています。

「引っ張られる」とはどういうこと?

ここでいう「牽引=引っ張られる」は、外から誰かが髪を引っ張るという意味ではありません。

研究で示された「牽引力」とは、「毛包の内部、外側にある細胞(外毛根鞘細胞)に下向きに引き伸ばされる力」が関与していることがわかりました。

髪の毛が伸びるには「下から押し上げられて伸びる」のではなく「毛包の中で引き伸ばされながら成長する」という仕組みがわかったのです。

今回この発見をした研究チームは、毛包内で細胞分裂を抑える薬剤を用い「細胞分裂による押し出す力」をほぼ止めた状態を作りました。そして細胞分裂がなくても、髪の毛は成長を続けたのです。

この結果から、髪の成長には細胞数の増加とは別の仕組みが存在することが明らかになりました。

3Dライブイメージングシステムにより見えてきた髪の細胞の動き

今回の研究結果が確認できた背景には、3Dライブイメージングシステムの開発があります。
3Dライブイメージングシステムは、細胞の動きをリアルタイムで追跡できるシステム。

3Dライブイメージングシステムを活用し成長期の人の毛包を培養しチェックしたところ、毛包の外側にある細胞(外毛根鞘細胞)が、らせんを描きながら下向きに移動し、毛包の底部に侵入していく様子が確認できました。

対して毛包内側の細胞層は上向きに移動する力が確認でき、さらに外側の動きの速さが早いほど内側の移動速度も上がることがわかったのです。

今まで「髪の毛はどうやって伸びている」と考えられてきたのか

「髪の毛は気が付いたら伸びている」と、私たちは思っています。
今まで医学・生物学の世界では長年髪の成長の仕組みについて「引っ張られる力」が働いているという概念は存在しませんでした。

毛母細胞が分裂して「下から押し出される」

今まで、髪の毛が成長するには毛包の一番下にある「毛母細胞」が活発に分裂することで「髪の毛の細胞」が作り出され、下から押し出されることで「髪の毛が伸びている」と考えられてきました。

毛母細胞は、いわば髪の製造工場のような存在です。毛包内で新しい細胞が次々と生まれます。新しく生まれた細胞は、「角化」と呼ばれる変化を経て硬い毛髪となり、下から上へと積み重なるように押し上げられていきます。

下からどんどん新しい細胞が生み出されることですでに存在している毛が外へ外へと押し出され、私たちの目に見える「髪の成長」として認識されるというのが従来考えられていた「髪の成長」の仕組みです。

指トラップというおもちゃの仕組みに近いイメージ

今回の研究でわかった毛包の動きは、「指トラップ」と呼ばれるおもちゃの仕組みによく似ています。

指トラップは、両端に指を入れて引っ張るほど、内側が締まり別の方向に力が返ってくる構造です。毛包でも同様に外側の細胞が下向きに動くことで内部に張力が生まれ、その力が中央部分を上へ押し出します。外側の動きが、髪の成長につながっているといえるのです。

今回の研究は「何がすごい」のか?

今までは「理論的に説明されてきた髪の成長」でしたが、今回、人間の毛包そのものを使って実際の動きを観察した研究方法が発表され、注目を集めています。

毛の成長については長年研究されているテーマですが、「どう伸びているのか」をリアルタイムで検証した研究は、実はほとんどありませんでした。

ヒト毛包を“生きたまま”観察した点が画期的

これまでの毛髪研究の多くは、組織の標本や遺伝子発現の解析など「細胞が静止した状態」を調べる手法が中心でした。

しかし今回の研究ではヒトの毛包を生きた状態で培養し、時間の経過とともに何が起きているかを直接観察しています。

今回、研究チームは美容外科で行われるエイジング治療「フェイスリフト手術」で除去された頭皮の組織を活用し、研究を進めたのです。

生きた状態で細胞を培養し、撮影を続けたところ、毛包の中で単に細胞が増えているだけではなく毛包全体に「物理的な力」が生じ、組織が引き伸ばされるように成長している様子が確認できました。

実験内容|「細胞分裂を阻害」する薬剤を使用したのに髪は成長した

今回の研究では、「細胞分裂を止める薬剤」を使って「髪の毛の伸びには細胞分裂以外の要素がある」ことを突き止めようとしました。

従来の考え方では毛母細胞が分裂して数を増やし、その細胞が下から押し上げられることで髪は伸びるとされていたわけですが、細胞分裂を止めれば成長も止まるという従来の仮説が覆されたのです。

今回の研究では、細胞分裂を抑制した状態でも、毛包全体が引き伸ばされるように変形し、毛幹が伸び続ける現象が観察されました。つまり、髪は「細胞が増える」だけでなく、「引き伸ばされる」ことによっても伸びていることがわかったのです。

今後の「育毛」市場にはどう影響するのかを大予想!

今回の「髪の成長」には引っ張られる力が働いていることがわかりました。この研究結果が育毛業界に「今まで確立されていた育毛アプローチ以外」の育毛治療の開発への足掛かりにもなるかもしれません。

今回の研究により、毛包にかかる物理的な力や構造変化が髪の成長につながる可能性がわかりました。将来的には細胞を無理に増やすのではなく、毛包が自然に伸びやすい「力学的環境」を整える治療や機器が登場する可能性もあります。

「引っ張れば髪は生える」のか?セルフケアで髪を引っ張ってもいい?

髪の成長には「引っ張る力が働いている」ことがわかると「じゃあ頭皮を引っ張れば髪は伸びるの?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、この研究結果をそのままセルフケアに当てはめるのは非常に危険です。研究内容にある「引っ張られる力」と、私たちが指で引っ張ったりマッサージしたりする行為は、まったく性質が異なります。

物理的に引っ張ることとはまったく別の話

研究で観察されたのは、毛包内部で自然に生じる「ミクロな力」のバランスです。

毛包の中で細胞が配置を変え、組織全体がゆっくりと引き延ばされる現象なので「髪の毛を伸ばしたいから、増やしたいから」といって外から無理に力を加える行為とは根本的に違います。

「引っ張る=育毛」という単純な話ではないのです。

まとめ

今回紹介した研究により「髪の毛は細胞分裂で押し出されて伸びる」という長年の常識に、新たな概念が生まれました。

今回の発見により将来的に「細胞を増やす」ことだけに頼らない、新しい育毛アプローチの可能性につながるかもしれません。毛包が本来持っている構造や力学的環境を守り、整えることこそが、髪の健やかな成長を支える一助になるのかもしれないのです。

髪の成長をめぐる研究は、次のステージへ進み始めています。

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