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薄毛・抜け毛研究所
2025.09.04
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【医療監修あり】ミノキシジルのナノ化で期待されることとは?
「発毛成分」として広く知られているミノキシジルは、これまで外用薬として多くの育毛剤に使用されてきました。
もともとは高血圧治療薬として開発された成分ですが、血流を促進し毛根への栄養供給を活性化させる作用があることから、薄毛・抜け毛の改善に効果が期待できるとされています。
2025年現在では育毛治療の初期治療として非常に人気の高い成分です。
しかし、従来のミノキシジル製剤の課題の一つに「成分が毛包(毛根を包む組織)にまで十分に浸透しにくい」という点が指摘されてきました。
また、ミノキシジルの含有量が増えれば増えるほど粘性が高くベタつきやすいという難点もありました。さらに長期使用による刺激感など、使用感や継続性に関する不満の声も少なくありません。
こうした課題を克服すべく、大正製薬と近畿大学が共同で取り組んだのが「ミノキシジルのナノ化」です。
今回の研究では、ミノキシジルを100nm未満のナノサイズに加工することで、毛包への到達性が向上し、より高い発毛効果が期待できることが示されました。加えて、アラビアガムなどの天然素材を用いた新しい製剤技術により、使用感の軽さや安定性も改善されています。
今回は、この「ナノ化ミノキシジル」が従来製品とどう違うのか、具体的な技術や効果について詳しく解説していきます。
ナノ化ミノキシジルとは?

(参照:https://www.taisho.co.jp/company/news/2025/20250602001995/|大正製薬)
2025年6月、大正製薬と近畿大学薬学部の共同研究によって、発毛有効成分「ミノキシジル」のナノ粒子化に関する新たな技術が発表されました。
この研究では、ミノキシジルをより微細な「ナノ粒子」の形で製剤化することで、毛根(毛包)への到達効率や使用時の快適性を大幅に向上させることが可能になると考えられています。
ミノキシジルのナノ化技術は発毛剤の機能性を高めるだけでなく、薄毛・脱毛症に悩む多くの人々にとってさらなる高い効果の発揮が期待できます。
湿式粉砕法+アラビアガムによる100nm級粒子へのナノ化
今回開発されたナノ化技術のコアとなるのが「湿式粉砕法」による微粒子化と、「アラビアガム」を添加することで得られる高い安定性です。
具体的にはミノキシジルの原末を湿式粉砕機にかけることで、粒径100nm(ナノメートル)レベルの微粒子に加工。このとき、アラビアガムを配合することで粒子の安定した分散状態を保てるようになったと発表されました。
期待されるメリット:毛包到達性・安定性・使用感の向上
ナノ粒子化されたミノキシジルには、以下のような複数のメリットが期待されています。
①毛包への浸透性向上

(参照:ミノキシジルナノパーティクルの機能解明|大正製薬)
粒径をナノレベルにまで小さくすることで毛包までの到達効率が飛躍的にアップされることがわかりました。
②製剤の安定性の向上
アラビアガムによる乳化作用により、微粒子が製剤中で安定して分散することで品質を保ちやすくなる点も期待できます。
③使用感の改善
従来のミノキシジル製剤に比べて、製品の粘度が下がったことによりさらっとした感触が得られやすく、白濁やべたつきが少ないため、使いやすい仕上がりになることが期待できます。
従来のミノキシジルとの違い

(参照:https://www.taisho.co.jp/company/news/2025/20250602001995/|大正製薬)
ミノキシジルはこれまで、外用(主にローション)として長年使用されてきました。しかし、従来製剤ではミノキシジル粒子のサイズがマイクロレベル(1,000nm以上)であり、皮膚の表面を通過して毛包にまで十分に到達させるには限界がありました。
附属器官ルートを活用した浸透効率
今回開発されたナノ化ミノキシジルは、粒子サイズが平均100nm以下と非常に微細なのが最大の特徴です。
ナノ化されたことで特に注目されているのが、毛穴や汗腺といった「皮膚の附属器官ルート(adnexalroute)」を通れるようになったことです。つまり、毛穴の内部に侵入できるようになったため、より効率的に毛包へと浸透できるようになりました。
皮膚の付属器官ルートは経皮吸収の新たなルートとして近年注目されており、ナノ粒子の大きさだからこそ到達が可能になる経路です。
薬剤の皮膚浸透を効率的に進める上で重要であり、ナノ化技術の真価が発揮されるポイントと言えるでしょう。
マウス皮膚実験による検証結果:毛包への到達率向上

(参照:https://www.taisho.co.jp/company/news/2025/20250602001995/|大正製薬)
大正製薬と近畿大学の研究チームはナノ化ミノキシジルの実効性をマウス皮膚を用いた実験で検証した結果、従来の非ナノ製剤に比べて毛包内部におけるミノキシジルの濃度が顕著に高まったと評価しました。
ナノ化製剤は毛包の深部まで成分が浸透しており、単に皮膚表面に留まるのではなく「目的地」である毛乳頭付近までしっかりと届いていることが確認されました。
発毛メカニズム
ミノキシジルは、単に血流を促進するだけではなく、血管細胞に直接作用し発毛を促進すると考えられています。
ナノ化ミノキシジルの研究では、その作用がどのようなメカニズムで毛髪の成長につながるかについても実験的な検証が進められています。
毛乳頭細胞・毛包幹細胞への活性化実験結果
ナノ化されたミノキシジルの評価において、毛乳頭細胞や毛包幹細胞に対する影響も研究されました。
実験ではマウスにナノ化したミノキシジルを塗布したところ、毛包幹細胞や毛乳頭細胞の活性化が確認されています。
毛乳頭細胞は、髪の成長シグナルを司る中心的な存在であり、ここが活性化されることで、休止期にある毛包を成長期へと移行させるきっかけになります。また、毛包幹細胞への刺激は毛の再生そのものを促す重要な要素の一つです。
血管生成・バジル領域への作用
ミノキシジルには血管新生を促進する作用があり、頭皮の毛細血管を拡張・新生させることで、毛包への酸素・栄養供給を高めるとされています。頭皮の血流が増えることで、毛髪の成長環境が根本から改善される一助になると考えられるでしょう。
さらに、発毛における鍵とされる「バルジ領域」への影響も見逃せません。バルジ領域には、毛包を再生させる幹細胞が集中しており、ここへの血流が増えることで新たな毛包の形成や休止期毛包の活性化が期待されます。
ナノ化技術により、毛包深部までミノキシジルが浸透しやすくなったことで、従来製剤では届きにくかったバルジ領域への作用も、より明確に現れる可能性があると考えられます。
今後の展望と実用化の可能性の考察

今回の研究で注目されたナノ化ミノキシジルは、従来の外用薬と比較して毛包への到達性や製剤の安定性の向上が期待されていて、将来的な製品化に大きな期待が寄せられています。
大正製薬は長年にわたりミノキシジルの研究開発をリードしてきました。今回のミノキシジルナノ化技術は、マウス実験から実用化に向けた「次世代型育毛剤」として、今後はヒト臨床試験のフェーズへと進んでいくことが期待されます。
また、ナノ化ミノキシジルがもたらす特長は、薄毛治療の新しいスタンダードの一つとなりうる可能性を秘めているでしょう。
【ナノ化ミノキシジルの特徴】
●毛根への直接的な薬剤送達
●不快感の少ないテクスチャー設計
●発毛実感の早期化と効率化
まとめ

従来のミノキシジル製剤では難しかった、毛包深部までの浸透性向上・使用感の快適さ・成分の安定性。こうした長年の課題を「ミノキシジルのナノ化」によって一歩前進させました。
今回の研究により、ナノ粒子が附属器官ルートを通じて毛根まで届く構造や、毛乳頭細胞・幹細胞への活性化作用は、今後の発毛治療において大きな可能性を秘めています。
薄毛や脱毛症に悩む多くの方にとって「ただ塗る」から「届いて働く」へと進化したこの新しい選択肢は、今後さらに注目されることが予測できます。
“実感できる発毛”を目指す時代へ―。
―ナノ化ミノキシジルの進化は、その第一歩です。
監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。
同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。