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薄毛・抜け毛研究所
2025.10.24
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【医療監修あり】2025年最新「幹細胞×ATP」薄毛治療とは?
「薄毛治療」というとミノキシジルやフィナステリドなど、外用薬・内服薬による治療をまず思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし近年、毛髪再生医療は目覚ましい進化を遂げています。
なかでも2025年に入り注目を集めているのが、幹細胞とATPを用いた次世代の再生医療的アプローチです。
従来の薬剤による薄毛症状の進行抑制にとどまらず、「自分の髪をもう一度再生する」という新しい可能性を示す治療として、国内外で研究が進んでいます。
この記事では「幹細胞×ATP」最新治療の仕組みや臨床研究の状況、今後の実用化の見通しまで、医療監修情報をもとにわかりやすく解説します。
「最近抜け毛が増えてきた」「育毛剤だけでは不安」という方は、最先端の薄毛治療情報をぜひチェックしてみてください。
「幹細胞×ATP」を用いた最新治療とは?

2025年スペイン・マドリードのサン・カルロス臨床病院の研究チームが発表した画期的な前臨床研究によると、「脂肪由来幹細胞(ASC)+ATP(アデノシン三リン酸)」を組み合わせた薄毛治療がマウスモデルにおいて「発毛率100%」を達成したと発表しました。
発毛率100%はあくまでマウスでの検証結果

参照:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/core/lw/2.0/html/tileshop_pmc/tileshop_pmc_inline.html?title=Click%20on%20image%20to%20zoom&p=PMC3&id=12145629_13287_2025_4372_Fig7a_HTML.jpg
今回の報告は、雄マウスを用いたAGAモデル(DHT誘導性)において、脂肪由来幹細胞とATPを併用した群で全例発毛が確認されたものです。しかしこれはすべてマウス実験に限られたデータであり、現時点では人への臨床応用前段階での成果です。
なぜ画期的だったのか?
今回の実験は、今までの研究や治療において幹細胞単独やATP単独では効果が得られなかったが、「併用することで100%の再発毛」が起きたことが最大の驚きポイントといえるでしょう。毛包における成長因子活性化や免疫制御作用が、両素材の併用により飛躍的に高まったと考えられています。
従来の薄毛治療の課題

現在までの薄毛治療は大きく分けて、以下の2つの軸で行われてきました。
●進行抑制:フィナステリド、デュタステリドなどの内服薬によるDHT抑制
●発毛促進:ミノキシジルなど外用薬による血流改善
これらは2025年現在、薄毛治療として確立された標準治療で、多くの臨床データも蓄積されています。
しかし大きな課題として、
●完全に失われた毛包を「新たに作る」ことはできない
●進行を穏やかにするだけで「元通りの密度」に戻せるとは限らない
●薬を止めると再び進行する可能性が高い
といった点がありました。
注目を集める「再生医療的薄毛治療」

今までの薄毛治療の期待できる効果はあくまでも「進行の抑制」と「現在ある毛包の働きを活性化する」ことでした。
こうした背景から、世界中の研究者が取り組んでいるのが「再生医療的アプローチ」です。
再生医療的薄毛治療とは、「失われた毛包細胞を補い、再び髪を生やすことを目的」とする
という次世代治療の方向性を目指しています。
幹細胞とは?薄毛治療への応用

参照:https://www.mouhatsu-saisei.com/male/kerastem/
細胞の数自体を取り戻すためのアプローチとして注目されているのが、幹細胞由来成分を活用するアプローチです。
「幹細胞」とは、他の細胞に分化する能力を持つ特殊な細胞です。
私たちの体の成長や修復に欠かせない「万能細胞」とも呼ばれます。
薄毛治療への応用では、以下のような働きが期待されています。
●毛包幹細胞を活性化し、休止期毛包を成長期へ
●毛乳頭細胞の増殖因子を誘導
●皮膚の血管新生を促進し、頭皮環境を改善
●炎症を抑制し、慢性的なダメージを回復
国内では、自家由来の幹細胞を培養して注入する「再生医療等安全性確保法」に基づく自由診療が一部クリニックで行われています。
しかしコストや技術面のハードルも高く、「広く使える治療」としては研究が続けられている段階です。
脂肪由来幹細胞を使った自由診療はすでに実用化済み
自由診療で提供されている幹細胞を活用した薄毛治療は、主に「脂肪由来幹細胞」由来です。
この治療は、患者自身の皮下脂肪から採取した「脂肪由来幹細胞(ADSC)」を利用して頭皮に移植し、毛包の再活性化や頭皮環境の改善を図るものです。
その名の通り、脂肪細胞を採取して、その細胞内から「幹細胞」のみを採取し、頭皮に移植する方法です。幹細胞治療そのものが高価である中で、比較的安価で採取できる方法です。
また、骨髄液から採取して培養する手間などもないため、患者さん自身の体の負担も比較的軽く、採取後すぐに頭皮に注入できるのも脂肪由来幹細胞を使用した育毛治療の強みといえるでしょう。
脂肪由来幹細胞とは?
脂肪組織は間葉系幹細胞(MSCs)を豊富に含むことが知られており、これらの細胞は血管新生、組織修復、抗炎症などの再生医療的なメカニズムを持ちます。
自由診療で行われている脂肪由来幹細胞を用いた薄毛治療では、以下のような流れで施術が進みます。
●患者自身の腹部や大腿部などから脂肪組織を吸引
●そこから幹細胞を抽出・濃縮
●頭皮の気になる部分に注入
自家組織由来であるため、拒絶反応のリスクが低いのが特徴です。
どのように使われるのか?治療や使用法への期待

幹細胞×ATPによる薄毛治療として、現在のところヒトへの応用技術としての報告はなされていませんが、マウスモデルで得られた成果をもとに、自由診療や臨床応用を目指して以下のようなアプローチで治療への活用が期待できそうです。
幹細胞液+ATPを頭皮に注入
オープンアクセスの学術論文全文アーカイブ、米国国立衛生研究所(NIH)のPubMedCentral(PMC)「ジヒドロテストステロン誘発性男性型脱毛症マウスモデルにおける、ATP補充同種脂肪由来幹細胞による発毛促進」という論文をみると、 “本研究では、ジヒドロテストステロン(DHT)誘発性AGAのマウスモデルにおいて、同種脂肪由来幹細胞(ASC)単独またはATP添加の皮内投与の効果を検討します。”とあります。 つまり、何らかの液体を皮内注射して実験したことがわかります。 これらの方法を従来の育毛治療の治療法から見ると、以下のような投与方法での活用の可能性がありそうです。 【具体的な施術法】 ●メソセラピー(微細な頭皮注射による導入) ●ダーマペンやマイクロニードル(皮膚に微細な穴を開け、有効成分を深部へ浸透させる) ●医療用エレクトロポレーション(電気的手法で薬剤浸透を補助する機器を用いた導入) 従来のメソセラピーなどの手段から考えると、成分の安定性などの問題がなければ、患者ごとに成分のカスタマイズも検討できるでしょう。 毛髪の状態、年齢、ホルモン感受性などに合わせた「パーソナライズ医療」の要素も盛り込める可能性があります。
頭皮スプレーや外用製剤の開発への期待
また、さらに進んだ形で活用できれば、患者さんのセルフケアとしての活用の可能性も期待できるでしょう。
リポソーム技術などを応用し、ATPを安定化させつつ皮膚バリアを突破しやすい形態へ加工できれば、患者さん自身が行うセルフケアとして、日常の中に取り入れられそうです。
実際に幹細胞培養上清成分を配合したスカルプローションもすでに一部のクリニックや自由診療で導入されています。
研究が進めば「薬を塗る」「頭皮ケアする」感覚での手軽な応用も視野に入ってきそうですね。
実用化のタイムラインは?

今回発表された「幹細胞×ATP治療」は、研究チームが「計画通りに進めば5年以内の実用化を目指す」と公表しています。実現すれば毛髪再生医療の選択肢が大きく広がると期待されています。
一方で、今回のマウスモデルを中心とした研究は「小規模な前臨床研究」に過ぎないとの指摘もあります。
研究に参加していないニューヨークの皮膚科専門医ブレンダン・キャンプ博士は、「幹細胞とATPの併用が脱毛症治療に効果を示す可能性はあるが、商用利用に向けてはさらに大規模で長期的な臨床研究が必要だ」とコメントしています。
あくまでも現時点では「臨床研究段階」です。
安全性や長期効果、最適投与方法など、クリアすべき課題も多く残されているのが実情です。
まとめ

幹細胞とATPを組み合わせた最新の発毛治療研究は、「失われた毛包を再生させる」という従来の治療を超えた新しい選択肢を切り開くものとして大きな期待が寄せられています。
特に脂肪由来幹細胞の持つ成長因子分泌能と、ATPの細胞活性化・エネルギー供給作用を掛け合わせることで、これまで単独では得られなかった「相乗的な発毛促進」が動物実験レベルで確認されています。
ただし現時点では、この治療はマウスモデルでの前臨床研究段階にとどまっており、人への安全性や有効性を確認する臨床試験はこれから本格的に進められる段階です。(2025年8月現在)
研究チームは「計画通りに進めば5年以内の実用化を目指す」としていますが、自由診療レベルでの先行的な導入を除けば、公的な承認や保険診療への展開には相当の検証と時間が必要になるでしょう。
とはいえ、近年では脂肪由来幹細胞を用いた自由診療による育毛治療もすでに実用化されており、再生医療的アプローチは確実に薄毛治療の幅を広げています。
今後も幹細胞とATPを組み合わせた治療の研究が進むことで、より安全で効果的、かつ患者ごとの状態に合わせた「パーソナライズ医療」としての実用化が期待されます。
薄毛治療を検討する方にとっては、従来の内服薬・外用薬だけでなく、こうした最先端の医療情報を知り、自分に合った選択肢を考えることがますます重要になっていくでしょう。
監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。
同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。