髪の毛質の遺伝が原因で薄毛や抜け毛・AGAになるのか?

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髪の毛質と遺伝にはさまざまな説があります。いまだ確定的な実証をともなう研究結果はないようですが、白髪などの髪質については遺伝的な要素が大きいともいわれています。
今回は、薄毛・抜け毛やAGAと遺伝についてご紹介します。

薄毛の遺伝子があるの?

米国人類遺伝学会の正式機関誌であるアメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)に掲載されたフランス・ボン大学の研究チームは、薄毛になる人とならない人ではX染色体にあるアンドロゲンの受容体に違いがあり、薄毛遺伝子とはこの受容体の違いによるものである可能性があると発表しています。

男性と女性は、持っている染色体に違いがあり、女性の染色体はXX型、男性はXY型です。このときX染色体は母親から受け継がれる遺伝子なので、ボン大学の研究内容によると、薄毛遺伝子は母親側の遺伝子が大きく関係していると考えられます。
そしてこの研究によって薄毛遺伝子の可能性があるとされている受容体は「アンドロゲンレセプター(AR)」と呼ばれ、X染色体の1つです。

アンドロゲンレセプターは体の中で男性ホルモンからの情報を受容し、変換する機能を持ちます。アンドロゲンレセプターの違いとは、変換機能の感度の違いを表しています。感度が高いほど男性ホルモンの影響を強く受け、結果的に薄毛や抜け毛になりやすい体質となってしまうと考えられているのです。

現在はこのアンドロゲンレセプターの遺伝子検査をすることもでき、薄毛や抜け毛になりやすい体質かどうかや、AGAなどの薄毛治療を受ける際にも利用されています。

また、薄毛の遺伝的要素として挙げられるものには「5αリダクターゼ」と呼ばれる還元酵素の活動量があります。この酵素の活動が活発な遺伝子を受け継ぐと、男性ホルモン(テストテロン)を薄毛の原因となる「ジヒドロテストステロン」に変換しやすくなってしまい、抜け毛や薄毛を促進するともいわれています。

薄毛になりやすい家系とは?

薄毛になりやすい家系と行動 上記のような薄毛遺伝子は、母親の持つX染色体に受け継がれると考えられていますが、母親自身が薄毛かどうかはあまり重要ではありません。

女性は、男性と比べて女性ホルモンが多いためアンドロゲンレセプターや高感度の5αリダクターゼを持っていても女性ホルモンに守られて薄毛の進行を抑えられ、薄毛遺伝子の存在が分かりにくい側面があります。
そのため薄毛遺伝子の影響を判断する際には、母方の父である祖父の頭髪状態を参考にすると良いでしょう。

しかし、これら薄毛の遺伝はあくまで可能性の話であり、薄毛や抜け毛のすべてが遺伝によるものではありません。父親や祖父の髪は何も問題がないので遺伝的に考えて大丈夫だと思っていても、頭皮の環境が清潔でなければ、薄毛や抜け毛になる可能性は充分にあります。

また親や祖父母の髪の毛が少なくても、きちんとした生活を心掛けていたら何も問題がなかった、というケースもあります。そのため、自身のヘアケア習慣などを見直すことも大切です。

遺伝に関わらず、日頃から髪のケアを行うべし

頭を洗う男性 遺伝による薄毛や抜け毛の心配がある方もそうでない方も、日々のシャンプー方法に気を付けるなど、日頃からケアすることで頭皮環境を整えなければ脱毛のリスクは高まります。

男性は短髪の方が多いと思いますが、髪のもつれや絡まりはそのままにしておくと抜け毛の原因になってしまいます。シャンプー前はブラシなどで必ずとかすようにし、髪をシャワーで十分に濡らした後、シャンプーで指の腹を使って洗います。その際、爪で洗うことは絶対に避けましょう。長時間の洗浄や2度洗いは頭皮に負担を掛けるため、2分程洗浄したらよく流します。

その後は、育毛剤やトニックで頭皮ケアをしっかり行い、雑菌が入らないようドライヤーで完全に乾かします。シンプルですが、毎日正しい方法で頭髪洗浄を行うだけで頭皮の環境は良くなり、髪への負担を大きく減らすことができます。

おわりに

薄毛や抜け毛、AGAを引き起こす可能性があるといわれるアンドロゲンレセプターや5αリダクターゼ。これらは母親からの遺伝によって受け継がれるという研究結果ありますが、薄毛や抜け毛は遺伝的な要素だけではなく、頭皮環境にも大きく左右されます。
遺伝的要素を持つ方もそうでない方も、日々のケアを見なおしてみてはいかがでしょうか。