女性の願掛けや僧侶の剃髪の理由など、髪がもつさまざまな意味や文化・歴史について

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髪は女の命といわれるほどに、古来より髪は女性にとって大切なものとされています。そんな髪には、さまざまな意味があることをご存じでしょうか?

今回は、女性の願掛けや僧侶の剃髪の理由、世界における髪の歴史など、髪がもつさまざまな意味をご紹介します。

女性の髪の意味とは?

髪を持ち上げる女性 古くから髪の毛は、神聖なものとされていました。主に女性の髪に対して「髪には神が宿る」と考えられ、髪に宿った霊力が高位の存在を招き寄せるといわれていました。そのため髪は、平安時代では王や高位の貴族に見初められるための、女性にとって大切な要素とされていたそうです。

その他にも女性の髪は、貞節の証しとして夫が亡くなった際棺に髪を奉納したり、重い資材を動かしたりする際などにも使用されていました。
また、女性の髪は願掛けにも使用されていました。自分の願いをかなえるために、「願いがかなうまでは髪を切らない」などして願掛けをしていたそうです。

しかし、髪は良い意味だけでなく、穢れなど悪いものも宿るといわれています。特に失恋をしたときに髪を切って新しい自分に生まれ変わるというジンクスは、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

僧侶が剃髪をする理由とは?

僧侶にとって髪は煩悩の象徴とされています。仏教では、髪はどんなに剃っても生えてくるため、いつもきれいに整えることで煩悩と自分自身を切り離すことを試みるという考え方があります。そして髪を剃るという行為には、煩悩にまみれた自分が、首を落として清潔な自分に生まれ変わるという意味もあり、首の変わりに髪を落とすというのが剃髪です。

このように髪は、俗世や煩悩と己自身を結びつける象徴のような意味をもちます。そのため僧侶は、現世のあらゆる欲望を捨て、悟りへ少しでも近づくため、主に出家の際に剃髪を行うのです。

しかしこの剃髪も、仏教の宗派によって考え方が異なり、仏教の中でも髪を伸ばすことを禁止していない宗派も少なくありません。その中でも、浄土真宗では有髪の僧侶が一般的です。浄土真宗では「非僧非俗」という僧侶と俗人の区別を超えるという考え方のもと、剃髪という見た目よりも「心」を重んじるため、髪の有無を禁じていません。
これは、浄土真宗の宗祖「親鸞上人」が有髪であることも影響していると考えられています。

さまざまな髪の意味

日本だけでなく、世界各地の髪のもつ意味はさまざまです。
かつてフランスでは、髪をファッションとしてだけではなく、お金持ちの特権や権威を意味するものとしていました。バッハやマリーアントワネットに代表されるように、ボリュームのある髪型によって権威や地位を現すために、髪を派手に飾ったり、地毛を短くしたりしてカツラを被り、髪型を工夫していたそうです。
また、長い髪も権力の象徴とされており、それを切ることは権力や力を失うことを意味していました。

一方モンゴルや中国では、頭部を1部残して髪を伸ばし、三つ編みにする「辮髪(べんぱつ)」という髪型がありました。これには服従の意味があり、この髪型を強制することで人を支配していたといわれています。
また日本やヨーロッパなどには、髪を切られる=服従という意味もあったといわれています。

おわりに

今回は、髪がもつさまざまな意味をご紹介しました。古来より、日本においても世界においても、髪は文化的・宗教的・政治的にも多くの意味をもっていました。日本では神聖なものとして考えられていた髪も、場所や時代が変われば考え方が大きく変わります。

今回ご紹介した以外にも世界にはさまざまな髪の意味があります。興味があれば髪の役割や願掛けなど、髪の歴史についてより詳しく調べてみるのもおすすめです。