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薄毛・抜け毛研究所
2025.04.18
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【医療監修あり】牽引性脱毛症とは?原因・対策・改善方法を徹底解説

髪型やヘアスタイルにこだわるあまり、生え際やこめかみの薄毛が気になったことはありませんか?
ポニーテールやお団子ヘア、エクステの使用など、長時間髪を引っ張る習慣が続くと知らないうちに「牽引性脱毛症」になっている可能性もあります。
牽引性脱毛症は、毛根に過度な負担がかかることで発症する脱毛症の一つです。
この記事では牽引性脱毛症のメカニズムや症状、原因について詳しく解説するとともに、改善方法や効果的な対策についても紹介します。
放置すると薄毛が進行し、元の状態に戻すのが難しくなる場合もあるため、早めの対策が重要です。 髪の健康を守りながら、牽引性脱毛症を予防・改善する方法を詳しくみていきましょう。
牽引性脱毛症とは?どんな結び方で起こる?

「牽引性脱毛症」は髪を長時間引っ張ることで毛根に負担がかかるために起こります。
ポニーテールやお団子ヘアなどの髪型を頻繁にする人や、エクステンションを装着する習慣がある人に生じやすいといわれています。 バレエや水泳をしている競技者に聞かれる悩みの一つでもあります。
髪の根元に強いテンション(張力)がかかることで毛根がダメージを受け、抜け毛が発生しやすくなるのです。
初期段階では髪が細くなる程度の変化ですが、長期間負担をかけ続けると毛根の機能が低下し、新しい髪が生えにくくなることで起こります。
牽引性脱毛症の基本 的なメカニズム
牽引性脱毛症は、髪が常に引っ張られることで毛根に負担がかかることで発症します。
物理的に長時間牽引力がかかることで毛の成長を促すための血流が乏しくなり、栄養不足や酸素不足、老廃物の運搬が妨げられることによって生じると考えられています。
長期間同じ場所に牽引力がかかる状態が続くと毛包が萎縮し、新しい髪が生えにくくなるとされているのです。
幸いなことにその他の脱毛症とは違い、牽引力が加わる状況を改善すれば、症状の改善も期待することができます。 診断として「脱毛症」と定義される場合には、本来生えている髪の密度と比較して50%以下になることが目安です。
牽引性脱毛症の症状

参照:牽引性脱毛症とは|ポニーテールが原因?FAGAとの違いや治し方をご紹介
つむじ・生え際・こめかみ周辺の毛が薄くなりやすい
髪を結ぶ際に引っ張られる力が強くかかるつむじや生え際、こめかみ周辺は特に牽引性脱毛症の症状が現れやすい場所です。
バレエや新体操、チアリーディングのように髪をきつく結ぶスポーツをやっている人や、仕事柄ヘルメットや帽子を長時間着用する人にもみられることがあります。
抜け毛の毛根に特徴的な症状がある
牽引性脱毛症の抜け毛には毛根(根元)に特徴的な症状があります。 毛根の組織がダメージを受け、毛包の一部が変形して一緒に抜け落ちることで生じます。
抜け落ちた毛の毛根には半透明の塊や、毛根の先にひげ根がついています。 これは牽引力がかかったゆえの変形といえるでしょう。
頭皮が変色したり、炎症をともなうこともある

参照:明るい「新しい生活」ニュース〈第83回〉|健康な頭皮の「色」を画像でチェック!おすすめのスカルプエッセンス配合頭皮ケアアイテム
髪を強く引っ張り続けると物理的にかかる牽引力により頭皮の血行が悪くなり、毛根が十分な栄養を受け取れなくなり炎症が発生することもあります。
頭皮が黄色~赤く変色し炎症を起こしたり、かゆみ、乾燥など頭皮の健康が阻害されている特徴的な症状が現れることもあります。 長期間放置すると慢性的なダメージが蓄積され、毛髪の成長が妨げられます。
【年代別】牽引性脱毛症の主な原因

牽引性脱毛症には年代ごとにも傾向があります。 それぞれの年代でどのような要因が牽引性脱毛症につながるのか、その傾向を解説します。
【10代】髪を引っ張るヘアセットの影響
10代は部活動や習い事、学校生活などで髪をまとめる機会が多く、ポニーテールや三つ編み、お団子ヘアなどの髪型を長時間続けることが牽引性脱毛症の原因になります。
特にバレエやチアリーディング、新体操といったスポーツでは髪を強く引っ張るヘアセットが一般的なため、頭皮に負担がかかりやすいです。 また、学校の校則で髪を結ぶ必要がある場合、毎日同じ髪型を続けることで生え際やこめかみの毛根がダメージを受けやすくなります。
長時間の引っ張りによって毛根が弱まると、髪が抜けやすくなるだけでなく、新しく生える髪が細くなってしまうこともあります。 幸い、若い年代での牽引性脱毛症であれば牽引力の物理的要因を改善することで、症状の改善が期待できます。
環境要因による脱毛症状が考えられるようならば、医師の診断書をもって責任者や指導者への相談も検討しましょう。
【20~30代】エクステやヘアアイロンの影響
20〜30代ではヘアスタイルをアレンジする機会が増え、エクステンションの装着やヘアアイロンの使用が牽引性脱毛症の原因となることがあります。
エクステは自分の髪に人工の毛を編み込んだり接着することで、長さやボリュームを出すものですが、その重みが毛根に負担をかけます。 長期間エクステを装着していると毛根が引っ張られる状態が続き、抜け毛が増える原因になるのです。
また、髪が豊かな人のロングヘアによる重みと、髪の分け目がいつも同じであることも牽引性脱毛症の要因になり得ます。 ブラッシングの際に髪を強く引っ張ることも、毛根にダメージを与える要因の一つです。
さらに、ヘアアイロンの熱によるダメージも牽引性脱毛症のリスクを高める要因となります。 高温のアイロンを頻繁に使用すると髪のタンパク質が変性し、髪がもろくなるだけでなく、頭皮が乾燥しやすくなります。
頭皮の乾燥が進むと毛根の健康が損なわれ、抜け毛が増える可能性につながるため、ヘアアイロンを使う際は適切な温度設定や、ヘアケアをしっかり行うことが大切です。
【40代以降】頭皮環境の悪化
40代以降では、髪を強く引っ張る習慣があるかどうかに関係なく、頭皮環境の悪化が牽引性脱毛症を助長することがあります。 加齢による血行不良や、ホルモンバランスの変化によって毛根が弱くなり、少しの刺激でも髪が抜けやすくなるのです。
物理的に持続的な牽引力がかかるほかに、個人の要因も絡んでくるため脱毛症の原因が複雑になりがちです。
髪のボリュームが減ってくる年代でもあるため、もともと気にならなかった髪型やヘアアレンジによる影響が無意識のうちに毛根に負担をかけるケースも増えてきます。
どのくらいで治る?牽引性脱毛症の進行度と治るまでの期間

牽引性脱毛症は髪を強く引っ張ることで生じる脱毛症ですが、進行の度合いや回復にかかる期間は人それぞれ異なります。 症状が軽いうちは髪を引っ張る習慣を改善することで比較的短期間で回復することができます。
どのくらいの期間で回復する?
牽引性脱毛症は原因となる髪を引っ張る習慣をやめることで改善が期待できます。 一般的には改善後、数ヶ月〜1年ほどで症状が改善するケースが多いです。
髪の成長には「ヘアサイクル」と呼ばれる周期があり、一度抜けた髪が新しく生え揃うには時間がかかります。
通常、休止期の毛根は数ヶ月の間に成長期へと移行し、新たな髪が生え始めます。 そのため、症状が軽度の場合は数ヶ月で抜け毛が減り、徐々に髪のボリュームが戻ってくることが期待できます。
しかし、症状が進行している場合は回復までに半年〜1年以上かかることもあります。 また、長年にわたって強い負荷をかけていた場合、毛根の機能が弱まり新しい髪が生えてこなくなる可能性もあるため、できるだけ早めに対策を始めることが重要です。
進行するとどうなる?
症状が進行した例では、頭皮の血行不良が悪化し、髪の成長に必要な栄養が届きにくくなります。 その結果、髪が細くなり、新しく生えてくる毛も弱々しく、物理的牽引力以外の要因が生じてしまい放置し続けると改善までに長い時間がかかるだけでなく、薄毛が定着してしまう可能性もあります。
牽引性脱毛症と他の脱毛症の違い
牽引性脱毛症は髪を引っ張ることによって発生する脱毛症ですが、薄毛や脱毛症状が生じている場所や髪の状態によってはAGA(男性型脱毛症)やびまん性脱毛症と混同されることもあります。
AGA(男性型脱毛症)との違い
AGA(男性型脱毛症)は、DHT(男性ホルモン)の影響によって毛根が徐々に縮小し、髪が細く短くなることで進行する脱毛症です。
額の生え際や頭頂部から薄くなっていくのが特徴で、抜け毛の進行がゆっくりと続きます。 男性に生じる脱毛症であり、遺伝的傾向がみられる症例でもあります。
びまん性脱毛症との違い
びまん性脱毛症は、髪全体のボリュームが均等に減少していく脱毛症です。 原因としてはホルモンバランスの乱れやストレス、栄養不足などが関与していて、牽引性脱毛症のように特定の部位に集中するのではなく、全体的に髪が薄くなるのが特徴です。
牽引性脱毛症の治療方法

牽引性脱毛症は原因を改善することで回復するケースが多いですが、症状が進行すると治療が必要になる場合もあります。 ここでは牽引性脱毛症のセルフケア・治療方法について、生活習慣の見直しから医療機関での治療まで詳しく解説します。
生活習慣の改善による回復
牽引性脱毛症は物理的な刺激が原因となるため、負担のかかる髪型を避けることで改善が期待できます。
毎日髪を引っ張るようなスタイル(ポニーテール、お団子ヘアなど)は避け、できるだけ自然な状態ですごしましょう。 また、分け目を頻繁に変えたり髪をゆるめに結ぶだけでも負担を軽減できます。
さらに頭皮マッサージを取り入れることで血行を促進し、引っ張られていた頭皮の状態を緩和させることで毛根に栄養が行き渡りやすくなります。
内服薬・外用薬による治療
生活習慣の改善で十分な回復が見込めない場合、医薬品の使用も選択肢として検討するのも一つの方法です。
①ミノキシジル
外用薬として使用されることが多く、毛根の血行を改善し発毛を促進する働きがあります。 軽度の牽引性脱毛症なら、ミノキシジルの使用によって発毛が促される可能性があります。
②育毛剤・スカルプエッセンス
頭皮環境を整える成分を含んだ育毛剤を使うことで、炎症を抑える効果が期待できます。
③サプリメントの活用
髪の健康維持にはビタミンB群や亜鉛、鉄分が有効とされています。 特に亜鉛は、毛髪の主成分であるケラチンの生成を助ける働きがあり、毛根の回復を促します。
女性向け育毛製剤が市販されるようになった
近年、男性だけではなく、女性向けの育毛製剤の開発が各製薬会社にて進められています。 過去には、医療機関でしか入手できなかった医薬品として販売されている外用薬も、ドラッグストアで気軽に入手できるようになりました。
医薬品扱いになるものであれば、中には常駐している薬剤師との相談等が必要になる場合もありますが、「薄毛」のお悩みに気軽に対処できる手段の一つとして注目されています。
自毛植毛やメソセラピー

参照:牽引性脱毛症の治療(女性向け)|自毛植毛の親和クリニック【東京・名古屋・大阪・福岡】
進行した牽引性脱毛症では毛根がダメージを受け、新しい髪が生えにくくなっていることがあります。 その場合、医療機関での専門的な治療が必要になります。
①自毛植毛
後頭部などの健康な毛根を採取し、脱毛部分に移植する方法です。 定着すれば髪の細胞が活動する間、半永久的に髪を維持できるため、進行が進んだ場合の選択肢となります。
②メソセラピー
成長因子やビタミンを直接頭皮に注入する治療法で、毛根の回復を促進する効果が期待されます。 近年医療機関で受ける治療法で主流になっており、各クリニックごとに取り扱っている製剤や治療方法に多様な種類があります。
牽引性脱毛症は早期に適切な対策を取ることで改善することが多いですが、進行してしまうと回復に時間がかかることもあります。 症状が続く場合や悪化していると感じたら、専門医に相談することを検討しましょう。
まとめ

牽引性脱毛症は髪を引っ張る習慣が原因で発症する脱毛症ですが、適切な対策を講じることで改善が期待できる脱毛症の一つです。
軽度のうちは髪型を変えたり、頭皮ケアを意識するだけでも回復の可能性があります。 しかし、長年にわたって毛根に負担をかけ続けると毛包が萎縮し、新しい髪が生えにくくなってしまうこともあるため、早めの対策が肝心です。
日常的に髪を結ぶ場合は締め付けすぎないヘアスタイルを心がけ、分け目を定期的に変えるなど、頭皮に優しい工夫を取り入れましょう。 また、症状が進行してしまった場合には育毛剤や医療機関での治療を検討するのも一つの方法です。
健康的な髪を保つために日頃の習慣を見直し、牽引性脱毛症のリスクを抑えながら美しい髪を維持しましょう。
監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。 同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。