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毛・抜け毛研究所

2026.03.26

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ストレス脱毛は一時的ではない?将来の脱毛症を引き起こす可能性

ストレスにより抜け毛が増えるという実態。今までストレスによる脱毛は、「一時的なもの」「時間が経てば自然に戻る」と説明されることが一般的でした。

最新の研究から「ストレスが単に髪の成長を止めるだけでなく「毛包」を壊してしまう可能性がある」ことがわかってきました。ストレスによる脱毛の影響は、将来の自己免疫性脱毛症の引き金になり得るとも提示されたのです。

この記事では最新の研究をもとに、ストレスと脱毛の因果関係、研究結果からセルフケアでもできる対策について解説していきます。

①ストレスは「毛包」を壊していた

強いストレスを感じたあとに、「急に抜け毛が増えた」「短期間で髪がごっそり抜けた」という経験を持つ人もいるでしょう。ストレスによる脱毛は、一般的には一時的なものと考えられ、時間が経てば自然に回復すると説明されることが多い症状でした。

2025年の新たな研究によって、「ストレスは単に髪の成長を止めるだけでなく、髪を生み出す土台そのものに深刻なダメージを与えている」可能性がわかったのです。

ストレス脱毛の原因は「毛周期の乱れ」が通説

今までストレスによる抜け毛は「毛周期(ヘアサイクル)の乱れ」によって起こると考えられてきました。髪の毛は「成長期→退行期→休止期」というサイクルを繰り返しています。

強いストレスを受けると毛周期のサイクルが乱れ、本来まだ成長しているはずの髪の毛が早めに休止期へ移行。成長期の髪が少なくなるとボリュームが減ったり、抜け毛が増えたりすることで薄毛や脱毛の症状が進行します。

ストレスによる髪の毛への影響は、髪の毛の成長が一時的に止まるイメージでした。逆に言うと毛包(髪を作る器官)自体は無事で、「環境が整えば再び髪は生えてくる」という考え方が根本にありました。

最新研究でわかったのは「毛包の細胞死」

ところが、最新の研究で明らかになったのは、「強いストレスがかかった状態では、髪の毛の成長が止まるだけではなく、毛包そのものが損傷し内部の細胞が死んでしまう」という事実が確認されたのです。

原因はホルモンではなく「交感神経」

ストレスと脱毛の関係を語るとき、これまで必ず登場してきたのが「ストレスホルモン」との因果関係でしたが、今回の研究では脱毛の直接原因はホルモンではなく「交感神経の過剰な活性化」だったという事実です。

交感神経とノルアドレナリン

今回のストレスと毛包壊死の研究により浮かび上がったのが「交感神経(※自律神経系のうちの一ひとつ。主に「体の活動性」を司る)」です。

一般的に私たちの体ではストレスを感じたとき、「体の活性化」反応を担う交感神経が一気に活動します。このとき神経末端から放出されるのが、「ノルアドレナリン」です。

研究によると、強いストレスにより交感神経の過剰な興奮→ノルアドレナリンの大量放出
が起こると、毛包の中にある「毛包移行増殖細胞(HF-TACs:模倣幹細胞から生じる非常に速く分裂・増殖して毛包を形成し、髪の毛の繊維そのものを作り出す細胞群)」が標的になり壊死が引き起こされることがわかりました。

毛包の壊死→炎症発生

実は「細胞の死」は日常的に起こっています。人体の中で日常的に「アポトーシス(細胞の自殺)」は起こっていて、大人にも子どもにも見られる通常の生理的な細胞死です。一方、強いストレスによってノルアドレナリンの大量放出により起こる「毛包の壊死」は、「壊死(ネクローシス)」と呼ばれ、より細胞にダメージが加わる細胞死といえます。

壊死(ネクローシス)とは

細胞が自ら役割を終える「アポトーシス」は、新陳代謝などに代表される古い細胞から新しい細胞に入れ替わるための自然な生理現象のため炎症は起きません。

しかし、今回の研究により判明したノルアドレナリンの放出により起こる「ネクローシス(壊死)」では、細胞膜が破裂し細胞の内部にあった物質や残骸が周囲の組織へまき散らされます。まき散らされた細胞の内容物は、周囲の組織にとって「激しいダメージが起きた」ことを知らせる危険信号です。毛包周辺でネクローシスが起こると強い炎症反応が生じる引き金となり得ます。

自己免疫応答の活性化→自己免疫疾患へつながる

壊死によって毛包周辺に炎症が発生すると、体の免疫システムが過剰に反応し始めます。体の免疫システムが過剰反応することで、将来の自己免疫性脱毛症(円形脱毛症など)へつながる可能性があることもわかりました。

免疫細胞が毛包を「敵」と誤認識する

壊死によって残骸をまき散らされた毛包では、処理役であるマクロファージや免疫指令塔である樹状細胞が活性化します。

活性化した樹状細胞は、毛包細胞の残骸により毛包を攻撃する能力を持った「自己反応性T細胞(オートリアクティブT細胞)」を活性化し、増殖させてしまうのです。

ストレスは急性脱毛だけではなく「将来の脱毛症」の種になる

強いストレスにより、毛包を標的とする自己免疫が活性化すると、将来自己免疫により毛包を攻撃する「種」を体内に植え付けてしまいかねないことがわかりました。この「自己反応性T細胞」は、すぐには毛包を攻撃せずリンパ節などに「免疫応答の準備」として待機し続けます。

一度ストレスがなくなり、急性の脱毛症状が収まったとしましょう。例えば紫外線や感染症、軽度の炎症など、何らかの他の二次的なストレスが生じた際に、待機していたT細胞が目覚めて毛包への本格的な攻撃をしてしまうのです。

つまり、一度強いストレスにさらされて免疫応答の準備が整ってしまえば、その後同じストレスではなくとも、別のストレスが加わった後に再度症状が発症・再発する「自己免疫性脱毛症(円形脱毛症など)」を引き起こしてしまう可能性があることが分かりました。

今回の研究から見えてきた「毛包を守る」ための対策

今回の研究が明らかにしたのは、急性脱毛のメカニズムが「交感神経の過剰な興奮」による急激な細胞死であるということがわかりました。

今回の研究をもとに急性脱毛をできるだけ起こさず、将来の「脱毛の種」を発生させないためにできることはあるのでしょうか?以下に、セルフケアでできる対策をまとめました。

ストレス時の「ノルアドレナリン」対策をする

強いストレスがかかった際に、交感神経が極端に興奮してノルアドレナリンを大量に放出しすぎないようにコントロールする意識を持ちましょう。

①意識的にリラックス・リフレッシュする(副交感神経を優位にする)
ストレスを感じたときこそ、自律神経を意識的に整えたいところです。深呼吸や穏やかな音楽を聴く、半身浴をするなど、副交感神経を優位にするために意識しましょう。

②十分な睡眠の確保
睡眠不足は交感神経を常に緊張状態に保ち、小さなストレスでもノルアドレナリンが過剰に反応しやすくなります。質のいい睡眠のために、夜のスマートフォンの使用を避けたり、明かりを落として過ごすなどもよいでしょう。

自己免疫の引き金を引かせない

体内に作られてしまった「自己反応性T細胞」を目覚めさせない意識付けも重要です。

①頭皮への物理的な刺激を避ける
研究内容にもあるように、紫外線は外的要因によるストレスの一つです。強い日差しを避ける、帽子や日傘を利用するといった頭皮を物理的な炎症から守る対策も取り入れてみましょう。

②炎症を抑える生活習慣
高血糖や不健康な食事、喫煙などは全身の慢性的な炎症につながりかねません。抗酸化作用のある食品やバランスの取れた食事を心がけ、体全体の炎症レベルを高くしない生活習慣も意識したいところです。

まとめ

今回の研究により、ストレス脱毛が単なる「一時的な毛周期の乱れ」ではなく、交感神経の過剰な興奮によって毛包そのものが壊死し、炎症や自己免疫反応を引き起こす可能性があるということがわかりました。

とはいえ、ストレスフルな現代社会では「ストレスにさらされない」生活を送ることは難しいはず。

髪を守るためにセルフケアでもできることは毛包を壊さない環境を整えることです。

ストレスを感じたときには自律神経を意識的に整え、睡眠や生活習慣を見直し、頭皮や体全体の炎症を抑えるために意識的に行動することが大切です。こうした地道なケアこそが、将来の脱毛リスクを減らす第一歩になるでしょう。

ストレス社会に生きる私たちにとって、この問題は決して他人事ではありません。

「抜けてから対処する」のではなく、「毛包を守る」という視点を持つことがこれからの脱毛対策の新しいスタンダードになりそうです。
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