超ポジティブ!NYのハゲフェスとは?

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2021年9月13日。アメリカのニューヨークで通称「ハゲフェス」が開催されました。
ハゲの、ハゲによる、ハゲのための超ポジティブなイベントです。
なぜこのようなイベントが開催されることになったのでしょう。
その背景には、「ハゲを肯定的にとらえることで世界は明るくなる」という主催者からの熱いメッセージがこめられています。

主催者はハゲのラッパー

主催者は当然ながらハゲています。
その主催者というのが、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するラッパーのkoshadillz(コーシャ・ディルツ)さん。 40歳にして彼の頭部はすでにツルツルです。
通称「ハゲフェス」である『Bald fest 2021』の開催に先駆けて、ディルツさんはSNSで次のようなメッセージを公開しています。
“このイベントは、毛が無い人を祝うためのものです。ハゲという運命を持った人たちを祝福する美しい1日なのです”

ハゲフェス開催時期に宿るメッセージ性

ハゲフェスが開催されたのは9月13日。
前日にあたる12日までの延べ5日間には、同じニューヨークで「ニューヨーク・ファッションウィーク」というファッションの祭典がおこなわれていました。
ハゲとファッション。
なかなか相容れない(と思われがちな)両者ですが、ディルツさんの投稿からは「そんな古い固定観念をぶっ壊したい」という熱い想いが伝わってきます。
“ファッションウィークなんてくそくらえ。ハゲを称え、ハゲを祝おうじゃないか”
また別の機会には次のようなコメントを残しています。
“ハゲ同士の連帯感を味わえる素晴らしい1日になれば”
主催者の「ハゲフェス」を意義あるイベントとして成功させたい想いを感じます。

ハゲ盛りだくさんのイベント内容

それでは「ハゲフェス」の内容はどうなっているのか。
ディルツさん本人がラッパーだということもあって音楽がメインの構成にはなっていますが、 詩の朗読やヨーヨーや操り人形を使ったパフォーマンスなど、バラエティに富んださまざまな演目が盛り込まれています。
そして演者たちは基本、みんなハゲています。 ちなみにハゲの度合いは関係ないようです。
またハゲにまつわる雑学クイズを出題する来場者参加型の演目もおこなわれたようで、 演者も参加者もみんなが楽しめるハゲ盛りだくさんのイベント内容となりました。

ハゲフェスにはどんな人が参加したのか

これまで本稿では主催者や演者としてハゲばかりが登場してきましたが、参加者はどうだったのでしょう。
ハゲていなければ参加できないイベントだったのでしょうか……。
ここが「ハゲフェス」のおもしろい点だと思うのですが、ハゲのためのフェスではあるものの、参加者は必ずしもハゲていなくてもOK。
ただし、「ハゲ好きである」ことが条件であるところです。
実際にフェス当日の写真を見ると、たくさんの若い女性たちが「ハゲフェス」に参加しています。
彼女たちはハゲに魅力を感じているのです。
またハゲている老人男性の姿が確認できるほか、本来は口元を覆うはずの不織布マスクをハゲ頭に装着している楽しそうな若者の姿がそこには写っています。
つまり「ハゲフェス」は老若男女に開かれたイベントであったと同時に、 参加者みんなが楽しく連帯できた大成功のイベントになったということを窺うことができるのです。
ちなみに料金は18ドル、日本円換算で約2,000円。
当日に会場前で頭を剃れば、無料で入場することができたようです。

ハゲフェスの収益はどうなるのか

また興味深いのが「ハゲフェス」で得た収益の使い道です。
ほかのフェス主催元であれば、収益を次年度の開催予算として計上したり別事業に投資したりするでしょう。
あるいは音楽業界を盛り上げるために同じ業界や仲間のために還元するかもしれません。
ところが「ハゲフェス」では、フェスの収益はハイチ地震の救済活動に寄付するそう。
もっとも困っている人たちのために収益を寄付するというディルツさんたちの判断は素晴らしいと思います。 ハゲが社会のためにもなるということが立証されました。

メディアの反応

「ハゲフェス」の功績を各メディアが紹介しています。
たとえば『ニューヨークポスト』では、“史上初”と題してセンセーショナルに「ハゲフェス」を紹介しています。
あるいはイギリスの伝統的なメディアである『The times』では、“歴史的なイベント”と大絶賛しています。 「ハゲフェス」の功績が世界からも認められたのです。
また「ハゲフェス」開催前のディルツさんのSNSには、「ハゲフェス」の開催を好意的に受け取ったり参加表明をしたりするコメントが相次ぎました。
ディルツさんの熱いメッセージにみんなが共感したのでしょう。

日本における「ハゲフェス」

翻って、日本での「ハゲフェス」は可能でしょうか。
好意的に受け容れられ、開催できるものなのでしょうか。
その答えは意外なところに帰着します。
日本ではすでに、大々的に「ハゲフェス」が開催されていたのです。
吉本興業所属のお笑い芸人にトレンディエンジェルというコンビがいます。 ハゲを活かした芸風が大人気ですよね。
そのボケ担当である斎藤さんが中心となって主催するイベントに「ハゲフェス」というものがあり、過去数回にわたって開催されていたのです。
『HAIR TONIC』という名を冠したその「ハゲフェス」は、言わずもがなで『SUMMER SONIC』が意識されています。
同じ「夏フェス」くくりであり、サマソニと同じように音楽がメインで構成されています。
お笑い芸人の彼らですが、あえて「音楽」で勝負しているところが一周回って「笑い」へと変わるのでしょう。攻めています。
またさらに挑発的なのが「ハゲフェス」開催日を本家のサマソニと同日にしているところ。 日本の「ハゲフェス」も十分にセンセーショナルなことをしていたのです。
通称「ヘアトニ」と呼ばれるそのハゲフェスがスタートしたのは2015年。
ニューヨークの「ハゲフェス」開催より6年も前から、日本では「ハゲ」を超ポジティブにとらえていたのです。
結果「ヘアトニ」は2018年までの4年間、毎年夏に開催されていました。
一定の固定ファンがいたことは明らかでしょう。

おわりに~コロナ以後の「ハゲフェス」はどうなるか~

同じようにコロナ禍を経験したとしても、ニューヨークと日本では考え方も行動規範も異なります。
だから日本では今すぐニューヨークと同じようにリアルでの「ハゲフェス」を開催することはできないでしょう。 実際2021年の夏に開催した音楽フェスがいまだに物議をかもしています。
とはいえ同時にオンラインでのフェスが勃興しつつあるのがコロナ以後の世界。
ハゲと音楽。あるいはハゲとファッション。日本でも再び、新しい「ハゲフェス」が生まれる可能性は十分にあり得ます。
閉塞した現代に「ハゲ」でポジティブな風穴を開けてくれる日がくることを楽しみにしています。