【監修あり】ストレスが原因で抜け毛が増える?ストレス要因の脱毛症の種類と対策

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この記事では「ストレス」が原因で薄毛や抜け毛が起こる原因と自分でも取れる対策を紹介しています。
ストレスとうまく付き合うのが症状改善の近道です。
生活習慣の中で取り入れられることから始め、髪にとってよい生活を心がけましょう。

ストレスでなぜ抜け毛が増えるの?脱毛症のメカニズムは?

気になる抜け毛とストレスの因果関係。
実は、直接的にストレスが抜け毛を起こすわけではありません。 ストレスが増えると抜け毛が増えるといわれる理由には「ストレスにより何らかの体内環境の変化が起こり、毛髪に影響を及ぼす」からです。
それではなぜ、ストレスがたまると抜け毛が増えるのでしょうか?

ストレスがたまると自律神経系のバランスが乱れ、毛髪が成長しにくくなる

ストレスがたまると早くに影響を受けるのが自律神経系です。 自律神経系は交感神経と副交感神経からできていて、体のバランスを活発にしたり休息させたりするような働きをします。
毛髪の成長を考えると、大切なのは「成長ホルモン」。
成長ホルモンは寝ている間に多く分泌され、毛髪の成長を促します。 ストレスがかかると交感神経が優位になるので、本来寝ている間に働く副交感神経が機能せず成長ホルモンがうまく分泌されません。
さらに男性型の脱毛症「AGA」への影響を考えると、成長ホルモンの分泌不足はテストステロンがDHAに変換される量が増えるので、薄毛や抜け毛が加速する要因にもなるのです。
つまりストレスがたまると、本来成長ホルモンが分泌されるべき環境を整えられません。
結果として毛髪の成長が促されず毛が細く短くなり、早く抜けてしまうことで薄毛や抜け毛を引き起こします。

ストレスがたまると血流が悪くなり、毛髪の成長に必要な栄養素が運ばれにくくなる

ストレスがたまると、体は緊張・興奮状態に陥り交感神経が優位な状態になります。
交感神経が優位になると血管は収縮するので、頭皮のような体の末端には髪の毛の成長に必要な栄養素が運搬されにくくなるのです。
さらにストレスは、活性酸素を作りだします。活性酸素が増えると細胞の働きが低下し、髪の成長に影響が出ます。 結果として、髪の毛が太く長くならず、細く短い毛が増え薄毛傾向になります。

ストレスによる暴飲暴食や、喫煙も薄毛・抜け毛の要因に

ストレスがたまると、暴飲暴食や喫煙してしまう方もいるのではないでしょうか。 実はこれも薄毛・抜け毛の要因になります。
【喫煙の影響】
喫煙すると、ニコチンが体内に入り込み血管を収縮させることがわかっています。 血管が収縮すれば頭皮までの血流も悪くなり、髪の毛に十分な栄養が行き届きません。
さらにニコチンを分解するのに髪の成長に必要なビタミンやミネラルなどを消費してしまうので、ますます髪の栄養状態が悪くなります。
【暴飲暴食の影響】
ストレスがたまって暴飲暴食すると、高カロリーで脂肪を多く含むものや、甘いものなどを食べたくなるでしょう。
糖分や脂肪分の摂り過ぎは血液中のコレステロールを増やし、血流が悪くなります。 さらに糖質は、糖化すると毛母細胞の活性を弱めヘアサイクルの乱れを起こすのです。
【飲酒の影響】
アルコールを摂取したあと、体内で分解するときにはアミノ酸を大量に消費します。 このアミノ酸が実は髪の毛の成長にとって重要な栄養です。
髪の毛の内部にある「ケラチン」は、まさにアミノ酸でできています。 お酒を飲むと髪の成長に必要なアミノ酸が少なくなり、髪が太く長く育つための弊害になります。

本質的な部分でいうストレスとは?

近年ストレスとは、精神的や心理的に何かしらの負荷がかかり極端に疲れている状態や緊張状態を表す言葉として使われています。
しかし医学的にストレスとは、「体外から何らかの刺激を受けたときに起こる緊張状態」を表しています。 これは単に、人間関係や職場環境、仕事の内容などの精神的な負荷がかかることだけではなく、さまざまな要因をストレス源として考えています。
【ストレスとは】
・環境要因: 暑さ、寒さ、騒音、混雑など
・化学的要因:公害物質、薬物、酸素欠乏、過剰一酸化炭素など
・心理社会的要因:人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など
普段私たちが使っているストレスとは「心理社会的要因」に対して使われることが多いようですが、それ以外のさまざまな要因でも身体的な負荷がかかり、ストレス状態に陥ることも少なくありません。

ストレスが影響する抜け毛の種類

ストレスが影響して脱毛症が進行する症状にはいくつか種類があります。

男性型脱毛症(AGA)

男性型脱毛症は男性ホルモンの性質が変化して毛髪の成長を滞らせ、毛髪が細く短くなり、早く抜けてしまうということから薄毛につながります。
年齢を重ねていくと半数以上の人にこの変化が現れるので、生理的状態であると捉える方もいます。 しかし、近年では10代後半や20代前半のような若年者の方でも薄毛になる方も増えてきました。
もともと持っている遺伝的素因やホルモンの影響も受けていますが、食生活の欧米化や、スマホ・ゲーム、街中の娯楽などから生活習慣が乱れやすくなり、薄毛や抜け毛を加速しているともいわれています。

休止期脱毛症

休止期脱毛症とは、毛の成長が止まっていつ抜けてもいい毛髪サイクルの時期「休止期」が通常よりも長引くことで、緩やかに毛の密度が低下して薄毛の症状を進行させる状態です。
通常の毛髪サイクルは
・成長期が2-6年
・退行期が2-3週間
・休止期が3か月程度
です。休止期脱毛症にもいくつか種類があります。
     
急性休止期脱毛 成長期が急激に休止期に移行する脱毛症。 精神的ストレスや過激なダイエットなど、低栄養状態を契機に数か月後に脱毛症状が現れる
慢性びまん性休止期脱毛症 多くの場合何らかの基礎疾患があり、その基礎疾患を治療することで回復する可能性のある脱毛症。 6か月以上をかけて頭部全体に症状が現れる
慢性休止期脱毛症 壮年期の女性に多い症状で、6か月以上10年以下におよび徐々に進行する脱毛症。 後述するFAGAとは側頭部の産毛の有無で判別する(FAGAは側頭部の脱毛は目立たない)

女性男性型脱毛症(FAGA)

女性男性型脱毛症(以下FAGA)は、男性型脱毛症「AGA」と同じような症状が女性に起こるものとして考えられてきました。 しかし近年では、研究が進み女性独自の症状や原因があることがわかってきたので、最近では差別化して「FPHL(Female Pattern Hair Loss)」とも呼ばれています。
FAGAは男性の脱毛症とは異なり、頭部全体の毛髪が少しずつ薄くなります。 発症年齢は40代〜50代ですが、20代などの若い頃に起こる場合もあり、その症状の現れ方にも個人差があります。
その原因として、ホルモンバランスの乱れが影響していると考えられていいます。
その主な原因は女性ホルモンの1つであるエストロゲンです。 エストロゲンは髪の成長期を伸ばす働きがあるといわれており、このバランスが乱れることで薄毛や抜け毛につながるといわれています。

円形脱毛症

円形脱毛症は「心のストレスがどこかで影響し丸い形で髪の毛が抜ける部分ができてしまう」症状として捉えられてきました。
病院にかからなくても知らないうちに治っていることも多いので、軽く考えてしまうケースもあるでしょう。 もともとは原因不明とされていた円形脱毛症ですが、長年の研究により最近徐々にその実態が明らかにされてきています。
現在円形脱毛症の要因として考えられているのが「自己免疫反応」で、毛根の部分に炎症反応が起きているからだと考えられています。 炎症が強い場合には医学的介入が必要な場合もあります。
脱毛外来や毛髪再生外来では親子や兄弟など、家族で症状が発症し受診する人もいます。 また、何度も繰り返し円形脱毛症が起きる人もいるのです。
そのことから考えると円形脱毛症になりやすい体質=自己免疫反応が毛髪に影響を与えやすい人がいるということが考えられます。

ストレスによる抜け毛を改善するには何をする?

ストレスにより薄毛や抜け毛が進行しているならば、そのストレスを排除すれば改善するというのはあまりにも容易です。 なかなか解決しないからこそ、ストレスは髪にも影響を与えてしまうのでしょう。
ストレスを解消するまではいかなくても、うまく付き合うことで、髪への影響を少なくすることはできるはずです。

禁煙・断酒・よい食生活

心理的要因としてかかるストレスを解消するのは難しくても、自分の実生活において明らかに髪に対して悪影響と思える要因であれば、自分の意思で取り除けます。
前述したとおり暴飲暴食、喫煙は髪にとっていい影響はありません。 とくに髪にとって必要な栄養素は 「タンパク質・ビタミンC・ビタミンB・亜鉛」です。
これらの栄養素を意識的に摂り、ストレスによる暴飲暴食を少しでも控えるようにしたいですね。

適度な運動は、髪にもいい影響が!

ストレス解消としておすすめなのはズバリ「運動」です。 運動すると成長ホルモンが分泌されるので髪を太く長くし、頭皮の健康状態も健やかにしてくれます。
また、運動すると体の血流が改善し、髪に対して必要な栄養素の運搬を促し、老廃物の排泄も高められます。
また、適度な疲労感は良質な睡眠を促します。 夜にしっかりと熟睡することで、さらに成長ホルモンの分泌が促されます。
体を動かすと、鬱々とした気分も晴れやかになり、ストレス発散にもつながるので運動は非常におすすめです。

ストレスによる脱毛を起こさないために

ストレスそのものは、直接脱毛症状を起こすわけではありませんが、ストレスが蓄積することによりさまざまな影響が出現します。 結果として髪の成長が阻害され、抜け毛が進行し薄毛につながります。
心理的要因のストレスは、どこでも思わぬところで生じる可能性はあります。 しかし、その他の環境要因や物理的要因は自分で意識的な生活をすることで、ある程度排除できます。
ストレスによる脱毛症はストレス要因の積み重ねで起こるので、普段から意識的に髪にやさしい生活をすることが大切です。 そうすれば多少のストレスでも脱毛症状につながることは少なくなるはず。
髪によい生活は、基本的に体にとってもやさしい生活になります。
自分の健康状態を見直し、体も髪にもよい生活習慣を身につけましょう。


監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。 同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。