おでこを見せると好印象?!政治家の髪型から読み解く人に好かれる髪型とは

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髪型によって人の印象は変わります。
たとえば綺麗に整えられた男性の短髪。 この髪型が好印象を与えることはあっても悪い印象を与えることは少ないでしょう。
あるいは短髪ではなくミディアムほどの長さであっても、前髪で目元が隠れてしまうより、おでこを見せているほうが好印象。 これが一般的な感覚ではないでしょうか。
そこで今回読み解きたいのが政治家の髪型です。
政治家はその特殊な職業柄、より多くの人に好印象を抱いてもらうことが大切だと考えられます。 そうなると必然的に、髪型にも気を配っているのが自然。万人受けする髪型プラスアルファそれぞれのこだわりがありそうですよね。
そこで今回は、政治家の髪型を参考に、人に好かれる髪型について学んでいきましょう。

政治家の髪型(男性編)

男性政治家の髪型といえば「七三分け」か「オールバック」。 そのような印象を持つ人は多いかと思います。
「七三分け」も「オールバック」もまさに「おでこを見せる」わけで、これが事実なら、「おでこを見せる」ヘアスタイルと好印象はかなり密接に関係していそうな予感がしますよね。
しかし同時に、「七三分け」や「オールバック」を「古臭い」と感じてしまうのが若者の本音かもしれません……。
もしその仮説が当たっているとしたら、これから「新しい政治」を展開しようとしている政治家にとって、「古臭い」という印象は避けたいところでもあるでしょう。
なら万人受けしたいはずの政治家が、なぜ「七三分け」や「オールバック」を続けているのでしょうか。
そもそも本当に、今の政治家の方々もおでこを見せているものなのでしょうか?

年相応の髪型にしないとそれもそれで問題

まず政治の話題から離れてご紹介したい話があります。
時は2017年2月。 「マイナビ学生の窓口」が、現在または過去3年以内に、新卒採用の面接官として関わった20代~70代の男女645人(男性:582人、女性:63人)を対象にインターネット調査をおこないました。
同調査によれば、面接官の95.5%が「面接は第一印象が影響する」と回答し、髪型の影響については面接官の8割以上が「影響する」としています。 さらに続けて「面接で第一印象が良いとされる髪型」を尋ねたところ、「ツーブロックスタイル」が第1位(166人、25.7%)であったようなのです。
「ツーブロックスタイル」の特徴をひとくくりにすることは難しいでしょう。
なぜならブロックとブロックの面積比や長短などによって、同じ「ツーブロックスタイル」に属していても与える印象がガラっと変わるからです。
余談ですが、昨今 「ツーブロック校則違反問題」 が物議を醸したのは「ツーブロックスタイル」の過激な側面にのみズームアップしてしまったからかもしれません。
しかしながら、この調査で面接官たちが好印象第1位に選んだ「ツーブロックスタイル」は、 おそらく過激なものではなく、一般的な「ツーブロックスタイル」の印象である「爽やかさ」や「清潔感」を感じての好印象でしょう。
調査結果をまとめると、男子就活生に一番おすすめの髪型は、爽やかさと清潔感を感じさせる「ツーブロックスタイル」であるということ。 つまり髪型で好印象を得たい若者(メンズ)は、いわゆる「ツーブロックスタイル」を選ぶのが賢明だと言えそうです。
この調査結果は政界にもそのまま転用できそうなもの。世間の人々に広く好印象を与えることが肝要である政治家ですから、 すぐにでも「ツーブロックスタイル」を取り入れればいい……単純に考えるとそういう気がします。
ところが話はそう単純ではありません。
繰り返しますが、同調査は20代前半の若者が対象なのです。
政界の人間はどんなに若くても、確実に彼らより年上にあたります。
ちなみに戦後に発足した内閣の平均年齢はおおよそ60歳前後だそう。 仮に60歳の男性が意気揚々とツーブロックスタイルを真似てみたところで世間からどのような印象を持たれるでしょうか。
仮に「似合っていない」や「若作り」など政策とは無関係のことで非難されるようなことがあれば、それはそれで本末転倒です。
つまり政治家にとって、好印象の髪型にすることは最低限大事だけれど、不要なノイズが発生しないように「年相応」「キャラ相応」の髪型であることも同じように大事だと考えられるのです。

政治家の散髪にはマニュアルがある?

各政党、各派閥によってもさまざまでしょうが、一応政治家にも散髪におけるマニュアルのような規則があるようです。
その証拠に、現・参議院議員であり東京維新の会に所属している音喜多 駿(おときた しゅん)議員は過去のブログで次のような発言をしてます。
“実は選挙区を持ってる政治家は、基本的に自分の地元選挙区内の美容院・床屋で髪を切るのが定石です。 しかも、できれば床屋。いかにも地元の方が経営している風の。”
このマニュアルの狙いは、地元選挙区内の美容院・床屋で髪を切り「店主や美容師と仲良くなれば票になる」。 さらに上手くいけば「ポスターを貼ってくれたり、チラシを置いてくれる」。
また「特に床屋は地元の高齢者が集まる情報サロンであり、人脈が広がる可能性がある」という理屈のうえに成り立っているようです。 よって政治家たるもの、できればこの規則を遵守せよ、ということらしいのです。
しかしながら当の音喜多議員本人が ブログ で今風のおしゃれな美容室でのヘアカットを報告していることからもわかるように、マニュアルといってもガチガチの規則ではないようです。
音喜多議員は政界ではまだまだ「若者」の部類に入ります。 「ツーブロックスタイル」でもおそらくばっちり似合うでしょう。
しかしすでに地盤を固めている60歳以上の政治家が、音喜多議員と同じように、急に今から新たな美容室を開拓して「ツーブロックスタイル」にチャレンジするのはなかなか考えにくいものがあります。
それでもベテラン政治家が「ツーブロックスタイル」を強行した場合。仮に「若づくり」や「似合わない」などの批判があろうものなら、やり損であり、失敗でしょう。 より多くの人に好印象を抱いてもらうことが大切だと考えてチャレンジしたヘアスタイルが、逆に悪印象すら与えるようなら完全に失敗なのです。
そう考えると、既定路線の「七三分け」か「オールバック」に落ち着く背景が鮮明に見えてくるではありませんか。

健在のオールバック、左分けに多支持

以上まではまだ推測の域を出ませんでしたが、ここからは実際に、政治家の髪型を統計的に見ていきましょう。
本当に、男性政治家の「七三分け」、「オールバック」は既定路線と言えるのでしょうか。
新宿で「日本一出世するビジネスマンが多い理容室・床屋 ZANGIRI(ザンギリ)」の2代目を務め、 「政治家髪型評論家」としての顔も持つ大平 法正(おおだいら のりまさ)氏はメディアにも多数出演するほどの、政治家の髪型マニア彼の独自統計をもとにすると、 たとえば最新2021年におこなわれた第49回衆議院選挙における小選挙区の立候補者852人のうち髪型の分類は次のようになります。
「左分け:222人」、「右分け:198人」、「オールバック:139人」、「真ん中分け:76人」、「前髪あり:131人」、「ショート(薄毛、スキン):139人」という統計結果。
つまり僅差ではあれ、また必ずしも七三分けではないものの、「左分け」にする政治家が最も多いようなのです。
あるいは同氏による前回第48回衆議院選挙での当選率を髪型別に見てみましょう。
すると「左分け:33%」、「右分け:34%」、「オールバック:48%」、「真ん中分け:36%」、「前髪あり:12%」、「ショート(薄毛、スキン):41%」。
拮抗した結果になっているとはいえ、前回の選挙では「オールバック」の人間が最も好印象だったようです。
さらに同氏が10年近く前に公開した統計では、歴代の総理大臣を髪型別にランク分けしています。
少し古いデータではありますが、その結果は「左分け:22人」、「ショート:17人」、「オールバック:15人」、「右分け:5人」、「真ん中分け:2人」。
伊藤博文氏の時代から現代に渡って調査した結果の数値だというので説得力が増しますよね。
つまりは大平氏のお力添えのもと出した結論は、やはり男性政治家はオールバック、あるいは髪を分けておでこを見せるのが常識。 しかも髪を分けるなら「左分け」にすることが多いようなのです。

日本の政治家の髪型(女性編)

他方、まだまだ割合的には少ない女性政治家の髪型はどうなっているのでしょう。
こちらでは「日本初のヘアライター&エディター」である佐藤 友美(さとう ゆみ)女史の考察が助けとなります。
彼女によれば前・菅義偉総理大臣入閣までの時点で、戦後における女性の大臣は41人だといいます。 そしてそのうち38人、割合にして実に92%もの女性大臣たちが入閣時においてショートヘアだったというのです。
先に述べたように、政界の人は平均年齢が高い傾向にあります。 だから髪質的な問題などの理由も含めてショートヘアにする女性政治家が多いとも考えられそうです。
しかしながら入閣にあたっては(とりわけ近年の傾向としては)、30代40代の若さで大臣に任命される女性も結構いるのだと女史は続けます。 これが本当であれば、一般的な女性の傾向とは明らかに異なるデータとなります。
ショートヘアには何か戦略的な事情があるのではないか。女史はそう勘ぐっています。
なぜなら以前、佐藤女史が現・東京都知事の小池百合子都知事に「なぜずっとショートヘアなのですか?」と質問したところ、 その答えは「髪を洗う時間と乾かす時間が短くてすむから」だったそう。
たしかに政治家である以上、実用的な側面も大事なのでしょう。佐藤女史の考察はそこで終わりません。
基本的に女性のショートヘアには、元気な印象やボーイッシュな印象、アクティブな印象が付いてくるもの。 「活動的」に見えることはどの政治家にとっても「欲しい」印象でしょう。
だから少しでも「活動的」に見えるように、「キャラ設定」として、彼女たちはショートヘアにしているのでしょう。
さらに日本国内で根強い男性社会の中で、たとえ女性であっても対等かそれ以上に渡り合えるのが政治家には求められます。 その意思表示として、男性のようなショートヘアをしているのかもしれないと勘ぐる佐藤女史の考察は、的を射ているのではないでしょうか。
加えて女史は、「女性政治家は、役職があがるほど髪が短くなる」とも続けます。
たとえば市議会議員や区議会議員のように地域密着が望まれる政治家であれば「親近感」こそが重要になるわけで、「どこにでもいそうなお姉さん」感を演出することが好ましいそう。 そうなると、ロングヘアやボブヘアなどの一般的な髪型のほうが市民には馴染みやすいと考えられます。
しかしながら国会議員や大臣など要職に就く女性には、国会での「強い」印象や、海外のリーダーたちに「なめられない」印象も時に大切になってくるようなのです。 そのような戦略的な事情も考慮したうえで、「女性政治家は、役職があがるほど髪が短くなる」と佐藤女史は考察しています。
一人一人がなぜその髪型にしているのかの動機まではわかりませんが、女性政治家の髪型には、とりわけショートヘアには、ただならぬ戦略が込められていそうですよね。
「国民からの好印象」は当然大事ですが、それだけで終わらないのが政治家の髪型のようです。
好印象の獲得だけでは終わらない、もっと広い視点で戦略的に髪型を選んでいるのが、政治家という特殊な職業の運命なのかもしれません。

おわりに

今回ここまで読み解いた結果、政治家たちが「単に万人に受けるためだけに、その髪型をしているわけではない」という事実がよくわかりましたよね。
男性政治家なら「左分け」や「オールバック」、女性政治家なら「ショートヘア」が印象的なその裏には、一般人とは異なる政治家ならではの戦略や駆け引きがあるようです。
とはいえ一般男性の皆様。
もし次の髪型に悩んでいるのであれば、清潔感のある「ツーブロックスタイル」をおすすめします。恐らくもっと好印象を得られるでしょう。
なぜならザンギリの大平氏も、「出世=清潔感」だと断言しているし、「マイナビ学生の窓口」のインターネット調査でも数値として結果にでているからです。
今回は日本の政治家の髪型だけに話が留まってしまいましたが、海外に広く目を向ければもっと別の視点が見えてくるかもしれませんね。