ツーブロックの定義とは?ツーブロック校則違反問題は、なぜ起きた?

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先般、いわゆる「ツーブロック校則違反問題」が大きな話題となりました。
たかが髪型、されど髪型。
ツーブロックという髪型を校則で禁止している学校が実際に存在することに世間はまず驚き、その理由を聞いて再び驚きました。
やがてこの問題は「ツーブロック」だけではなく、「校則」の問題としてさらなる広がりをみせていきます。
髪型の規制やおかしなルールは日本中のさまざまな学校に存在しているようで、SNSを中心にその謎すぎる校則を「ブラック校則」として披露し合う事態へと発展していったのです。
冷静に俯瞰で見れば、滑稽すぎて笑えてしまうブラック校則は、時に怒りとともに多くの人へと拡散されていきました。
今回は、「ツーブロック校則違反問題」が起きた原因の究明に軸足を置きつつ、ツーブロックの定義から始まり、最後に「ブラック校則」をおまけとしてご紹介します。

ツーブロック校則違反問題のきっかけ

きっかけは2020年3月、東京都議会でおこなわれた予算委員会でのことです。
ツーブロックという髪型を校則で禁止している学校が都内に実在するという事実を受けて、都議会で質疑がおこなわれました。
仮にこの質疑に対して誰もが納得できる答弁がなされていたらここまで話題になることはなかったでしょうが、東京都教育委員会の教育長は、次のように答弁したのです。
「その理由と致しましては、外見等が原因で事件や事故に遭うケースなどがございますため、生徒を守る趣旨から定めているものでございます」。
この答弁をきっかけに、東京といえどイチ地方議会での一幕が全国的なニュースとして報道され、大きな話題を呼ぶこととなりました。
しかものちの取材で東京都の教育委員会は、「実際にツーブロックにしたことで事件に巻き込まれた事例はない」と答えているため、あくまでも生徒を守るための「予防」として、「ツーブロック」を禁止したというわけです。

ツーブロックの定義

そもそも「ツーブロック」とはどういった髪型を指すのか、ここで確認しておきましょう。
文字通り「2」と「ブロック」からわかるように、段差をつくることで、ブロックが2つに分かれる髪型のことを「ツーブロック」と読んでいます。
通常の髪型が徐々に短くなったり長くなったりとなだらかなつながりをしているのに対して、段差によってつながりを無くすのがツーブロックの特徴です。
一般的に最も見覚えのあるツーブロックスタイルは、頭の両サイドとえりあし部分を刈り上げて、トップと後頭部の髪は長めに残すという髪型でしょう。
とはいえ極端な言い方をすれば、ソフトモヒカンではないメリハリの効いたハードモヒカンも定義的にはツーブロックに当てはまります。

ツーブロックの利点

ツーブロックの利点は3つあります。

清潔感

まず1つ目は清潔感です。顔まわりと首まわりがすっきりと仕上がるので、同じような髪の長さでツーブロックにしていない場合とくらべ、いくらか清潔感が増します。
それは他人に対しても少なからぬ好印象を与えることができます。

清涼感

次に2つ目の利点は、清涼感です。
顔と首まわりがすっきりと仕上がり、さらに髪の毛全体の質量も減るため、体感的にもすっきりと涼しく感じられます。
特に夏の暑いシーズンには効果絶大なので、部活をしている生徒には熱中症対策としてツーブロックを推奨してもいいぐらいだと思います。

ヘアアレンジ

最後に3つ目の利点は、ヘアアレンジの豊かさです。
髪が長いほうのブロックをどれだけ残すのかによって変わるので一概にはいえませんが、TPOに合わせてさまざまなヘアアレンジをできることがツーブロックの特徴です。
髪の毛を下ろせば、刈り上げ部分が隠れるので遠目には一般的なミディアムヘアと変わらないように見せることができます。そのまま学校に行って何ら問題はないでしょう。
また髪の毛をアップにして縛ったり、オールバックにして流したりすればまた違うヘアスタイルを楽しむことができます。
ベースは同じ髪型なのに、オンとオフでさまざまなヘアアレンジを楽しめることはツーブロック最大の利点といえます。

ツーブロックブームの立役者とは

髪型やファッションが世間でブームやトレンドとなるには、たいてい誰かの影響からスタートします。今でいうインフルエンサーです。
今のツーブロックブームでいうと、2000年代から流行し始めました。
当時は男性向けのファッション誌とヘアスタイル誌もまだ盛り上がりを見せていて、多くの学生、社会人に愛読されていました。
その頃に「ツーブロック」が再ブームの兆しを見せていて、読者モデルも兼ねている人気美容師さんや、ファッションモデルさんたちがこぞってツーブロックスタイルにし始めていたのです。
有名どころでいえば、 伊勢谷友介さんや オダギリジョーさんも この流れに含まれます。
しかしながら、あれから10年以上が経過した今でも、ツーブロックブームは勢いを失うばかりか、さらに層を厚くして支持を獲得し続けています。
とりわけ最近目立っているのは女性からの支持です。
インスタグラムなどの影響が大きいでしょうが、世間的には一般的な学校や一般的なオフィスに通っている女性までもが普通にツーブロックを楽しんでいます。
さまざまなヘアアレンジが可能なツーブロックスタイルが女性に好まれるのは当然といえば当然ですが、SNS時代で一気に加速したようです。
もはやツーブロックは「ブーム」ではなくて「定番」の髪型となりつつあります。
先ほど「再ブーム」という言葉を忍ばせましたが、お察しの通り、ツーブロックは過去にすでに一度ブームを迎えていました。
さらに時を遡った1980年代中盤~90年代初頭、当時の若い男性を中心に爆発的な支持を得ていたのです。
その立役者となったのが、今なおメンバーそれぞれが第一線で活躍し続けている、日本の至宝といっても過言ではないテクノポップバンド、YMOです。
当時の彼らの髪型は、テクノカットやボブなども合わさった独特なツーブロックスタイルでしたが、日本でのツーブロックブームの立役者となったことは間違いないでしょう。
ほかにも有名どころでは、吉田栄作さんがツーブロックスタイルを流行らせた立役者の一人です。

ツーブロック校則違反問題をめぐるさまざまな声

以上の記事を読んでいただけたなら、ツーブロックが悪ではないことがご理解いただけたかと思います。
本当に「ツーブロック」を校則違反にする必要があるのでしょうか。
しかも繰り返しますが、まだ「実際にツーブロックにしたことで事件に巻き込まれた事例はない」のです。
仮に百歩譲って、「ツーブロックの生徒が髪の毛を束ねるのは禁止」だとしたら、刈り上げ部分との極端な濃淡が露わになることで多少攻撃的に見えることはあるでしょう。
だから他校の不良からもからまれやすくなり、「事件や事故に遭うケース」の一つになるかもしれない……、とツーブロック校則違反を擁護する意見もあります。
確かにその意見を全て否定することはできませんが、この意見には大きく問題があります。
なぜならこのケースで悪いのは、完全にからんできた不良のほうではありませんか。
ツーブロックよりも彼らを規制できる方法こそ、教育委員会や地域の学校が連携して考えるべきだという論点がまた別の問題として生まれるのです。
また別の観点では、そもそもこれまでの旧態依然とした教育では、「男の子は男の子らしく」「女の子は女の子らしく」と教育してきたのではなかったでしょうか。
仮に自分をより強く見せるため、いわゆる男の子らしくするために過激なツーブロックをした生徒がいたとて、そう教えこんできたのはあなたたちではないですか、というのも今回のツーブロック校則違反問題で納得のできない理由の一つです。
とはいえ校則というのは理不尽でいい、という声も一定数あることでしょう。ブラック校則を擁護する意見も一定数あるのです。
いずれ社会に出れば理不尽なことばかりなのだから、若いうちに理不尽なことを受け容れられる耐性を付けておいたほうがいいという声です。要は校則は必要悪だという考え方です。
たしかに社会、世の中は理不尽なことばかりだという事実には賛同しますが、この考え方を容認すると最終的に「何でもアリ」になってしまう可能性もはらんでいます。
さらにブラック校則は、「多様性」が盛んに叫ばれるグローバルスタンダードともかけ離れています。
また弁護士によれば、この「ツーブロック校則違反」は学校としての裁量を超えているという声もあります。
法的に学校側が校則として定めることのできる裁量権を逸脱している可能性があるかもしれないというのです。
この結末は裁判にかけられないかぎりわかりませんが、弁護士の一人がそのような声を上げているということは、生徒たちに知っておいてもらいたいと思います。
ちなみに、かつて「男子は丸刈りにしなければならない」という校則が裁判で争われたとき、結果として学校が勝ったという判例があるようです。
判例に残っているということは効力として強いですが、時代も価値観も変わった今ならもしかしたら覆すことができるかもしれません。

過去にもあった髪型の規則

丸刈りの例のほか、かつての日本には今では考えられない校則が当たり前のようにありました。
校則と生徒の戦いはいつの時代も常にあるのです。
その一例として、沖縄県立第一高等女学校に実在した校則についてご紹介します。
沖縄師範学校女子部ととともに併置され、「ひめゆり」の愛称で親しまれた学校です。
ひめゆり平和祈念資料館によれば、昭和16年(1941年)の戦時下で、それまで自由だった髪型が学年ごとに統一されることになったそうです。
具体的には沖縄県立第一高等女学校の一年生はおかっぱ、二年生は前髪分け、三年生は二つに分けたおさげ、四年生は三つ編みと統一されたのです。
……そしてまもなく彼女たちは「軍国少女」へと変貌させられました。
つまり、上から下りてくるよくわからない規則に対して現代に生きる私たちが拒否反応を示すことは当然で、それを警戒しなければならないということを歴史は教えてくれます。
「何でもアリ」になってからでは遅いので、「ブラック校則」に立ち向かう勇敢な生徒を応援したいと思います。

髪型に関する変な校則

さて、おまけとして、ツーブロック以外にもネット上で実際にあるとされる髪型に関する変なブラック校則をご紹介します。
それは、「ポニーテールは男子を欲情させるから禁止」。
「男子を欲情させるから」と理由まで詳細に書いてあるのが秀逸です。
この校則を見て恥ずかしい気持ちになってなってしまいませんか。
抜け道を見つけた女子生徒がツインテールにでもしてきたら、このブラック校則は一体どう変貌するのでしょうか。

おわりに

みなさんは「ツーブロック校則違反問題」についてどう感じているでしょうか?
それこそ「多様性」の時代ですから、いろんな声があっていいでしょう。
でも教育現場にいる人間が必要悪として「何でもアリ」を発動するのはいかがなものかと思います。
本当に生徒たちの将来のためになるのかを真剣に吟味していただきたいと思います。