昔の人が使っていた整髪剤は一体、どんな原材料だったの?今でも使える天然素材の整髪剤とは?

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現代の私たちはTPOや気分に合わせて整髪剤を自由に使い分けることができますよね。
たとえば髪の毛にツヤを出したまま固めたいときには相応のワックスやジェルがあります。反対にまったくツヤを出したくない時にはマット系のワックスを選ぶこともできますよね。
ですので、現代人は昔の人よりも大幅に自由に髪の毛をスタイリングできるようになっているわけです。とはいえ、整髪剤に含まれる成分を事細かにみた場合、はたして現代の整髪剤が昔の整髪剤よりも優れているといえるものでしょうか?
もしかしたら現代に使われている整髪剤には人体や自然環境にデメリットのある化学成分が多く使われているかもしれません。
そこで今回は、温故知新の精神のもと、昔の人が使っていた整髪剤とその原料について調べていきましょう。今でも使える知恵が見つかるかもしれません。

イノシシの油

日本に残されている古い文献「日本霊異記」の中には、元興寺で法会を営んでいる際に僧侶である行基がある女性を追い出したというエピソードが記述されています。
事実の詳細は不明ですが、その女性は頭髪にイノシシの油を塗っていて、その事実を知った行基が気分を害し女性を追い出したとされているのです。
このエピソードからわかるのは、「日本霊異記」の書かれた平安初期の頃には、女性が髪の毛にイノシシの油を塗っていたということ。
そしてイノシシ油の臭いがきつかったのか、法会という場にそぐわなかったのか、はたまた単に行基の機嫌が悪かったのかはわかりませんが、まだあまり一般に定着した行為ではなかったと読み取ることができます。
とはいえイノシシの油を髪の毛に塗ることで、当時の女性に何かしらのメリットがあったのだと想像できます。

植物の油や米のとぎ汁

同じく平安時代の女性です。
平安時代の女性といえば、かの有名な「源氏物語絵巻」などを見てもわかるように、黒くて美しいロングヘアがトレードマークですよね。
男性からモテるためにも黒くて美しいロングヘアは必須だったようです。 そのロングヘアを維持するために欠かせなかったのが、植物から採取した油や米のとぎ汁だったといいます。
当時は今のような入浴設備やシャンプーなどはありませんから、髪の毛を清潔に保ち、かつツヤや潤いを保つためには植物の油や米のとぎ汁が重宝したのでしょう。
ちなみに先ほどのイノシシ油も、髪のツヤを出すために重宝したのではないかと私は考えています。

ポマードの全盛

これまでの登場人物は女性でしたが、男性の整髪剤事情はどうだったのでしょう。
時間を早送りして明治時代に入ると、今なお残る整髪剤のポマードが登場します。
というのも江戸時代までは男性といえども長髪が主流で、髪の毛を結う「髷(まげ)スタイル」が基本のヘアスタイルでした。
江戸時代であってもやはり個人宅に風呂はなく、現代のようなシャンプーやトリートメントはありませんでした。
そのため男性の長髪にツヤを与えるために重宝されたのが、鬢(びん)付け油という油でした。やはり油です。とはいえ江戸時代後期には香り付きの鬢付け油が大人気商品となった歴史もあるようです。
その後時代は明治維新を経て、近代化へと突き進んでいきます。
そんな中、整髪剤事情において大きな変革となったのが、明治4年に公布された「断髪令」です。断髪令によって男性の髷スタイルが廃止され、ヘアスタイルの自由化が進んだのです。
しかしながら日本人の硬い髪質は扱いが難しく、西洋人のようになでつけるヘアスタイルは困難でした。そこで登場したのがポマードです。粘着性の強いポマードによって日本人のヘアスタイルも見事にアップデートされました。
なかでも「柳屋ポマード」は大ヒット商品となり重宝されたといいます。
主な原材料として用いられたのは、液状のひまし油とワックス成分の木蝋だったそうです。

まとめ

昔の人が使っていた整髪剤の原材料は、基本的には「油」であったといえそうです。 しかしそこにはやむにやまれぬ事情があって、簡単には洗髪できない生活のなか、髪の毛を美しく保ちたいという欲求が潜んでいたわけです。
現代でも椿油などの天然由来のヘアケア商品は変わらず人気がありますよね。
特に植物由来の天然油の需要は現代人のライフスタイルともマッチしているので今後も伸びるでしょう。昔から目を付けていた昔の人たちってすごいですよね。