髪に関する知識や技術を公開中

毛・抜け毛研究所

2021.05.28

  • Q&A

    世界で一番ダサいと呼ばれる理由は?マレットヘアって何ですか?

    A.マレットヘアとは、前から見たら短いのに後ろから見たら長い髪型のこと。いわばウルフカットのことです。一昔前には日本でも大流行しました。

    かつて日本で流行ったウルフカットをイケてると思うかダサいと思うかは個人差があるかと思います。
    でも他方、同じ髪型であるマレットヘアは、世界的にほぼ共通の認識で「ダサい髪型」の代名詞として語られてきました。
    それはなぜでしょう?
    なぜマレットヘアはダサいのでしょうか?

    マレットヘア大流行のきっかけ

    マレットヘアがまだ「ダサい髪型」として認識されるずっと前、マレットヘアが大流行した時期もありました。
    その大きなきっかけとなった人物がデヴィッド・ボウイ。イギリス出身のミュージシャンです。
    時代のファッションアイコンであったり、のちには俳優業にも挑戦したため、ミュージシャンの域を越えマルチアーティストとしても大活躍しました。
    かなりの影響力をもった人物だったわけです。
    音楽においてもジャンルの垣根を越えてさまざまな要素を取り込んでは楽曲へと昇華していった彼ですが、
    彼の史実を振り返るうえで最も重要なポイントとなるのが「グラム・ロック」という新ジャンルの先駆けだったということ。
    時は1970年代の前半。
    音楽性とは別に、派手なメイクや煌びやかなファッション、ステージパフォーマンスまですべて含めて観衆を魅了した彼のライブは、「glamorous(グラマラス)=魅惑的」な音楽と評され、
    「グラム・ロック」として一ジャンルを築いていくことになります。
    そしてグラム・ロックの流行に合わせて、彼のアイコンであった「マレットヘア」も流行していくのです。
    やがて80年代、マレットヘアは大流行にまで至ります。要はきっかけをたどるならマレットヘアの起源はデヴィッド・ボウイにあったといえるのです。
    ちなみに彼は2016年に惜しくも帰らぬ人となりましたが、親日家としても有名でした。

    マレットヘアをダサくした張本人

    デヴィッド・ボウイがマレットヘアを流行らせた70~80年代、そのままの流れで今に至っていれば、もしかしたらマレットヘアは「ダサい髪型」ではなかったかもしれません。
    イケてる髪型の代名詞だったかもしれないのです。
    とはいえ史実、マレットヘアがダサくなった背景にはある人たちによる大きな影響がありました。
    奇しくも同業者である、ある音楽グループによって「マレット=ダサい」ということが喧伝されてしまったのです。
    そして聴衆から、時代から、絶大なる支持をされてしまったわけなのです。
    その張本人がビースティー・ボーイズ。
    当時アメリカで大活躍していた、歴史に名を残すほど有名なヒップホップ・グループです。
    そんな彼らが1994年に発表したのが『Mullet Head(マレットヘッド)』という楽曲でした。
    ビースティー・ボーイズ以前まで「マレットヘッド」は日本語に直訳すると「ボラのおつむ」とされていて、知性に乏しい人を指すときに使うスラングでした。
    でも当の楽曲を発表してからは、だんだんと襟足を伸ばした例の髪型「マレットヘッド」=「ダサい」という認識も広まっていくことになります。
    極めつけは、彼らが翌年に自身で発行した『Grand Royal(グランドロイヤル)』という雑誌でした。
    その中で「世界最悪の髪型」という特集を組み、マレットの歴史やマレットにしている有名人の写真などを数多く掲載することで、マレットをディスりまくったのです。
    彼らは当時若者に対して絶大な影響力をもっていたので、「マレットヘッド」=「ダサい」という認識は急速に、かつ不動の価値観として定着していくことになりました。

    日本はなぜ「ウルフカット」に?

    ここで疑問に思うのが、世界的には「マレット」や「マレットヘア」と呼ばれているのに、なぜ日本では「ウルフカット」という呼称で広まったのか、ですよね。
    おそらく深い意味はありません。
    デヴィッド・ボウイやビースティー・ボーイズとは隔絶された世界で、たまたま襟足を伸ばしていたプロゴルファーの「ジャンボ尾崎」こと尾崎将司さんの活躍や、
    その他ウルフらしき髪型の著名人たちが活躍することによって、気付いたら「ウルフカット」という独自の呼称が流通していっただけでしょう。
    まさに「ガラパゴス」な文化ともいえます。
    とはいえ世界的にみれば「マレット」が主流です。
    何ならかねてから日本のウルフカットは、海外では「asian mullet(アジアンマレット)」と紹介されていたそうですよ。

    おわりに

    今現在、日本では「ネオウルフ」という新しい髪型が流行りつつあります。
    デヴィッド・ボウイやジャンボ尾崎さんほど後頭部・襟足の長さが際立ってはいないものの、フロントやサイドから後頭部にかけて徐々に長くなっていく、
    グラデーションのウルフ、グラデーションのマレットが男女問わずに流行しているらしいのです。
    これも時代の反動でしょう。
    かつて「ダサい」と思われていた髪型でさえも、時代が変われば「かっこいい」に変わってしまうものなのです。
    コラム一覧ページに戻る

    2621