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毛・抜け毛研究所

2020.08.07

  • 豆知識

    あなたはなぜハゲている?3つのハゲの種類と解決策を徹底的に理解しよう

    コロナウィルスの後遺症として脱毛症状が出るというような見解も出てきていますね。
    そこで今回は人類の永遠のテーマ「ハゲ」について改めて特集します。


    ※今回の記事では、薄毛のみならず薄毛が進行した場合も含むニュアンスを含めたいため、より一般的な表現である”ハゲ”を多用しております。ご了承ください。
    すでにハゲている方であっても、まだハゲていない方であっても、「ハゲ」は他人事ではありません。
    なぜなら私たち全員に共通していえるのは、私たちは「ハゲ」のある環境で大きくなり、今もその世界に生きているからです。

    ハゲはなぜマイナスの価値観なのか

    誰に教わるでもなく私たちは、物心がついてからいつのまにか「ハゲ」という言葉を使うようになっていました。
    その矛先となった対象は学校の先生だったかもしれませんし、近所のおじさんだったかもしれません。
    あるいは厳密にいえば「ハゲ」ではない、ただ丸刈りの友達に対してだったかもしれません。
    無邪気な子供がいうからまた残酷で、「ハゲ」という言葉が耳に入った先生やおじさんは、当時すごく心を痛めたかもしれません。
    やがて私たちは「人の痛み」というものを学びながら成長していくことになります。少しずつ「大人になる」わけです。
    しかしながらどうでしょう。
    「ハゲ」に対する一方的な嘲笑はなくなったでしょうか?
    私たち大人の使う「ハゲ」はむしろ形を変えてタチが悪くなっているのではないでしょうか。
    子供たちの無邪気な「ハゲ」とは対照的に、大人たちは陰でコソコソと間接的に「あの人ハゲてるよね」と噂をします。
    実際はこちらのほうが攻撃力があるものです。
    つまり私たちの「ハゲ」に対する偏見や「ハゲ」という言葉の使い方は、昔から今にいたって何ら進歩していないようです。
    かくいう私も、今「ハゲ」という言葉を多用していて後ろめたい気持ちにさせられています。
    私自身が俗にいう「M字ハゲ」に少し属しているにもかかわらずそう感じてしまうのは、やはり「ハゲ=悪い」という価値観が深く根付いてしまっているからかもしれません。
    だから今こそ、自分の中にある、また世の中に蔓延しきっている「ハゲ」に対するマイナスの価値観を少しでも良くしたい!と思います。
    そのためにはまず、「ハゲ」についてよく理解することが重要です。
    ハゲの原因やハゲの種類、具体的な対策など、さまざまな観点からハゲを理解して、ハゲに対する固定観念を壊していこうではありませんか。

    ハゲの語源

    最初に「ハゲ」という言葉の意味を確認しておきましょう。
    「はげ(禿)」を辞書で引くと次のように記されています。


    毛髪が抜け落ちている部分。また、抜け落ちている状態。



    -出典:大辞泉 第二版 (デジタル大辞泉)
    丸刈りの友達が厳密にいえば「ハゲ」ではないということが、言葉の定義からも確認できます。
    髪の毛の長さや太さと「ハゲ」は無関係なのです。
    そもそも「はげ(禿)」という名詞は、「はぐ(剥ぐ)」という動詞が活用して使われるようになったようです。
    その完全な起源まではわかりませんが、寛文4 (1664) 年頃に刊行された「浮世物語」にはすでに「はげ」という名詞の使用が確認されているため、江戸時代初期には一般的だったと考えていいでしょう。

    「禿」という漢字の由来

    また注目したいのは、漢字にしたときの「禿」という字です。
    「剥ぐ」を語源にもつのであれば「剥」でいいじゃないか、と私は思ってしまいます。
    しかも「剥ぐ」には「表面がむき取られる」という意味があるので、意味も非常に近い。
    にもかかわらず「禿」なのには、また別の由来が関係しています。
    もともと「禿」という字は「かむろ」と読まれていて、「髪を短く切りそろえて垂らした子供の髪型」という意味がありました。
    要はおかっぱ頭の子供が「禿(かむろ)」と呼ばれていたのです。
    あらゆる生命と同じように、言葉もまた生き死にや盛衰のタイミングが読めません。
    「禿(かむろ)」が生まれてから時代は流れて、やがて僧侶などの剃り落とした髪型が「禿頭(とくとう)」と呼ばれるようになります。
    まったく意味の異なる「禿(かむろ)」が、今でいう「ハゲ」側の意味に飲み込まれていったようです。
    このように「ハゲ」という言葉の意味は時とともに形を変えながら、現代の「ハゲ」へとたどり着いたのです。
    ちなみに「チビ」は、漢字にすると「禿び」と書きます。
    「すり減ったもの」という意味をもつ「禿び」からきているようです。
    物心のついた子供が覚える三大悪口用語のうち、奇しくも二つに「禿」が含まれているとは驚きです。

    ハゲの種類は大きく3種類

    ハゲに対する理解が浅いと、すべてを一括りにして「ハゲ」と呼んでしまいますが、ハゲにもたくさんの種類があることを覚えておきましょう。
    ここでは大きく3つのハゲに分けて、それぞれの特徴をご紹介します。

    AGA(男性型脱毛症)

    近年になって「AGA(エージーエー)」という呼称が一般的になってきましたが、これまでもっとも「ハゲ」と呼ばれてきたタイプがこのAGA(男性型脱毛症)です。
    AGAはヘアサイクルが乱れることによって起こります。
    髪の毛は本来、伸びては自然に抜け落ち、抜け落ちてはまた生えるという一定の周期(ヘアサイクル)を保っています。
    ところがAGAになると、髪の毛の成長が早まったり途中で抜け落ちたりしてしまいます。
    そのメカニズムは、男性ホルモンのテストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)というホルモンに変換されることに起因しています。
    私のような「M字ハゲ」をはじめ、おでこ全体がぐっと後退して頭頂部までつながる逆U字型をした「U字ハゲ」、さらに頭頂部やつむじ周辺から薄くなりカッパやザビエルとも呼ばれがちな「O字ハゲ」、これらはすべてAGA特有のハゲ方です。
    といっても「M字」や「U字」というタイプ分けはあくまで俗的な分類法であって、医学の分野では、「ハミルトン・ノーウッド分類」というAGAの進行度合いを診断する際に参照される共通の指標があります。
    なのでAGAにお悩みの方は、一度ヘアクリニックなどの専門医に診てもらいましょう。
    また、今回は詳しくご紹介しませんが、AGAと併発しやすい脱毛症というものがあります。
    たとえば「脂漏性脱毛症」という脱毛症は、過剰に分泌された皮脂によって毛穴がつまり、炎症を起こす病気です。
    炎症による脱毛と、AGAによる脱毛が合併すると、ハゲの拡大がスピードアップする可能性があります。
    脂漏性脱毛症が疑わしい場合は、ヘアクリニックを受診する前に皮膚科を受診したほうがいいでしょう。

    FAGA(女性男性型脱毛症)

    簡単にいえば、AGAの女性版です。
    実は女性にも少なからず男性ホルモンであるテストステロンが分泌されているのですが、何らかの原因で女性ホルモンのバランスが崩れてしまうとテストステロンの量が増えてしまいます。
    たとえば更年期や出産によるホルモンバランスの変化がそれに当たります。
    メカニズムは前述したAGAのシナリオと同じで、テストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)へと変換され、抜け毛の原因となるのです。
    つまり強調したいのは、「ハゲ」は男性にかぎった話ではなく、女性にも起こり得る話なのです。
    ただ女性の場合、男性とはハゲ方が異なります。
    その中でもメジャーなのが「クリスマスツリー型」です。
    上から眺めるとクリスマスツリーのようなハゲ方をするという半分ジョーダンのような話ですが、一般に広く浸透した呼称です。
    というのもFAGAの場合、おでこや頭頂部から集中的に髪の毛が抜け落ちていくということは少なく、髪の分け目から徐々に拡大していき頭頂部が薄くなっていく、という順番になります。
    FAGAでは、「ルードヴィヒ分類」という医学的な指標に進行パターンが分類されています。

    円形脱毛症

    俗にいう「10円ハゲ」というキャッチ―な呼称によって事の重大さが隠れがちですが、これまでご紹介した3種類のハゲのうち、軽々しく「ハゲ」と嘲笑することが一番ダメなのが「円形脱毛症」です。
    なぜなら円形脱毛症は、主にストレスに起因するといわれているからです。
    しかもAGAやFAGAのように徐々に進行するものとは異なり、突発的な症状であるというのが通説です。
    つまり基本に則って考えれば、円形脱毛症の人は、「まさに今弱っている状態」であるといっても過言ではありません。
    そのような人に対して、しかも何も悪いことをしていない人に対して、外野から一方的に「ハゲ」と小石を投げる権利があるのかどうか、今一度立ち止まって考える必要があります。
    ストレスや免疫疾患が円形脱毛症の原因と考えられていますが、真相はまだ解明されていません。
    症状が一時的なケースもあれば長期的なケースもあります。
    また、脱毛箇所が10円サイズの場合もあれば、頭部全体にまで及ぶ場合もあるようです。
    さらに髪以外の箇所で起こるという症例もあります。それはたとえば、まゆ毛やまつ毛です。
    一時期を過ぎれば、自然治癒によって元通りになることも多い円形脱毛症ですが、仮に発見した方はなるべく早く皮膚科を受診したほうがいいでしょう。

    すべてのハゲに共通の予防策

    ハゲといえどさまざまな種類があることはこれまで見てきましたが、いずれにしてもホルモンバランスの乱れやストレス、免疫疾患によって引き起こされることが多いということがわかります。
    しかしながら「AGA×脂漏性脱毛症」のような複合的なハゲもあるわけで、具体的な対策に対して足踏みをしてしまうというのが多くの人が抱える悩みではないでしょうか。
    それなら、すべてのハゲに共通してプラス効果があると期待されることをしておけば無難であり、間違いありません。(遺伝対策に対しては後述します)
    その予防策とは、きわめて紋切り型の表現とはなりますが、「生活習慣の改善」。
    これに尽きます。
    具体的には次の4つを改善していきましょう。

    食生活の改善

    髪の毛は「タンパク質」で構成されているため、タンパク質は欠かさないようにしましょう。
    また「ミネラル」は髪の成長を促すのに最適とされています。
    海藻類や牡蠣などが「髪に良い」とされるのはそのためです。なのでミネラルを豊富に含んだ食品を摂るように心がけましょう。
    さらに「ビタミン」も髪の老化を抑制したり血行を促進したりするのに効果的だといわれています。
    つまり、いわゆる「バランスのいい食生活」を怠らなければ、こられの栄養素は自ずと摂取できるはずです。

    ストレスをためない

    自分自身の心の声に耳をすませて、自分が喜ぶことを率先して選んでいきましょう。
    また寝不足はストレスのもとで、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成につながります。
    毎日7~8時間の睡眠時間を確保するようにしましょう。

    血行を良好に

    頭皮の血行が良くないと、髪の毛の成長に必要な栄養素や酸素を送ることができなくなります。
    血行を良くするためには、適度な運動や入浴が必須です。
    とりわけ運動は、DHT(ジヒドロテストステロン)を体外に排出する効果があるともいわれているので、生活習慣に組み込むようにしましょう。
    また、過度な飲酒や喫煙は血行に良くないので控えるようにしましょう。

    正しいヘアケアを

    誤ったヘアケアは頭皮環境を劣悪にしてしまいます。
    よって正しいヘアケアを持続させることが重要です。
    具体的には、シャンプーのし過ぎもしなさ過ぎも頭皮にとって良くありません。
    頭皮を刺激し過ぎると炎症を引き起こす恐れがあり、しなさ過ぎると不潔かつフケやかゆみの原因となるからです。
    また、髪の毛が濡れたまま就寝すると雑菌が繁殖したり摩擦で髪の毛が傷んだりすることがあるので、ドライヤーが必須だということも覚えておきましょう。

    ハゲを薬で治す

    AGA治療という言葉はここ数年で市民権を獲得し、様々な場所で耳にするようになってきました。
    AGA治療の薬はプロペシア、ミノキシジル、ザガーロ 、など日々、開発が続けられています。
    日本国内でも気軽に皮膚科などで処方してくれる病院もありますし、専門のクリニックも多数存在します。
    ただし、自費での負担になるため、継続する場合にはそれなりの費用負担を覚悟しておく必要があります。
    また、副作用のリスクがあることも理解しておくべきでしょう。
    原因がAGAである場合には、かなりの確率で改善の効果が見られます。
    当然、個人差がありますが、いわゆる民間療法では全く効果がないと諦めている人にはぜひ試して頂きたいです。
    その際には、必ず医師の指導のもとでの服用をおすすめします。
    クリニックなどであれば、採血を行い、経過観察もしてもらえるのでより安心感が得られます。

    それでもハゲたら二つの道がある

    しかしどれだけ予防をしても、治療をしてもハゲる時はハゲるというのもまた事実です。
    とりわけ遺伝というのは残酷です。
    そういう運命を背負ってしまった人にとって、努力だけでは今のところ太刀打ちできそうにないという厳然たる事実が大きな壁としてどうしようもなく立ちはだかっています。
    とはいえ、私たちの心持ち次第で、「ハゲ」になったあとにも二つの道から選ぶことができるということを覚えておきましょう。

    ハゲを隠す道

    その一つが、ハゲを隠すという道です。
    カツラ、植毛、増毛、ヘアアレンジ。
    今、ハゲを隠す方法はいくらでもあります。
    これは科学の進歩、企業の努力によるもので、私たちは大変ありがたい時代に生きています。
    もはや、かつての昭和を代表するような「バーコードおじさん」になる必要はないのです。
    だからこの恩恵を存分に利用するべきでしょう。
    なかでも目覚ましいのが、新しい増毛法。
    カツラの不自然さや植毛の忍耐力には向いていないという人に向いていて、頭部にふりかけるだけで、瞬時に増毛しているように「見せる」ことができるのです。
    まさにイリュージョンです。
    特殊加工された植物系抗菌繊維が静電気によって付着するため、カツラのようにズレ落ちるというリスクはありません。
    ぱっと見の仕上がりはいたって自然です。
    円形脱毛症の方にもきっと重宝するはずです。
    これは一例ですが、まさに科学力と企業努力のなせる業といえるでしょう。
    遺伝的なハゲを後悔する前に、完全に隠しきるという道を私たちは選ぶことができるのです。

    ハゲを開き直る道

    一方で、「ハゲたものは仕方がない」と開き直って、ハゲを前向きにとらえるという方法があります。
    極端な例かもしれませんが、あるお笑いコンビは「ハゲ」をネタにしなければあそこまでブレイクしなかったかもしれません。
    ハゲを開き直って笑いへと転化したからこそ、大衆の共感を買い、勇気を称賛され、人気を獲得したのではないでしょうか。
    あるいはあるハリウッドスターを思い浮かべてみてください。
    ハゲていても、かっこいいとされる役者はたくさんいます。
    たしかにそもそもの目鼻立ちは違うかもしれません。
    とはいえ目鼻立ちだけを取り上げてしまえば、代わりとなるかっこいい役者はいくらでもいるはずです。
    つまり、たとえハゲでもかっこいい人はかっこいいのです。
    これは遺伝的な運命論の話ではなく、生き様や心持ちの話だと私は思っています。

    まとめ

    誰かを「ハゲ」と切り捨てることは簡単ですが、直接的にも間接的にも「ハゲ」といわれた側は深い傷を負う恐れがあります。
    そのことを大人が理解し、子供に教える必要があるでしょう。
    しかも私たちは性別を問わず誰でも「ハゲる」可能性を秘めているわけですから、もはや自分事として考えなければなりません。
    一方で、誰しもハゲる時はハゲますが、まったく悲観する必要はありません。
    今の時代であれば、治療することも、隠し通すことも、開き直ることも可能だからです。
    いっそのこと、ハゲを楽しんでもいいかもしれません。
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